今日は、発達凸凹の診断を持つ親族の中でも、その親族の生まれ持った「感覚」、とくに「聴覚」が原因で、生まれ持った感覚のままで生活してしまうと「この一般社会の中では生きにくい」原因となっている、という参考例を一つ書きたいと思います。

 

私の場合はこうした鋭敏な五感というのは、さほどないように思います。嗅覚が鋭い親族、味に鋭敏な親族、肌に触れるものに敏感な親族、あらゆる目の前の物を詳細に覚えてしまう親族などがいますが、私は幼少期は時折、一時期、精神状態が不安定な時には感覚が鋭敏になることはあったようですが、大人になって社会生活する中では特に自分が困るような持てあます感覚はありません。

 

特に、音楽に関しては「癒し」として聞くことができます。音楽の聴き方が変わっていて、気に入った1曲をエンドレスで何度も何日も聞き入るような変な習慣はありますが、それが自分に悪い影響を与えるなどはありません。

 

しかし、今私が担当している、不登校をしている親族の子達メインの、親族達で持ち回りでやっている学習会には、一人、音楽を聴きすぎると具合が悪くなる親族がいます。その子の場合は、音楽が好きなのですが、音楽に浸りすぎると精神的に落ち込みます。具体的には生きる生命力というか、エネルギーを失ってぐったりと何もできなくなるような感じです。

 

そんなことがあるのか?と思われるかもしれませんが、この子はもともと音楽は好きな方なのですが、音楽を1、2時間聞くとぐったりする、というような経験を何度もしており、原因と結果の関係がどう見ても明らかなので、今は趣味としての音楽の鑑賞は短時間にするなど、かなり「音楽鑑賞をすること」に関して用心しています。

 

なぜ、音楽を聴くと、そんなにげっそりと疲れ果てたようになるのか、はっきりとした原因はわかっていません。が、親族間で予測はある程度しています。この子の場合は精神的な音楽に対しての同調性が高いようで、「自分の気持ちに寄り添うような音楽」を聴くと、その音楽にどっぷりと心から同調してしまい、その「音楽を聴いている間」はとても気持ちが良く、入り込みます。

 

選曲はごく平凡です。普通のポップソングだったり、親の持っているクラシックシリーズのオペラだったり、イージーリスニングだったりしますが、その時のその子が「聞きたい気分」な曲を選びます。聞き方もごく普通です。リビングのソファでゴロゴロしながらCDプレーヤーで聞いたり、イヤホンでゆっくり聞いたりしています。

 

時間的には、15分程度なら大丈夫です。ですが1時間以上になると、心身に影響が出ます。まるで「音楽を聴くこと」でエネルギーを吸い取られるような状態になります。ある時、子どもはゆっくりと音楽を聴いていたはずが、その後、

 

・なんだか元気がない

・いつもは夕方に1時間、習慣的に勉強するのに、できない(気力が出ない)

・食事をしたくなくなる(食欲がなくなる、食べたい気持ちがわかない)

・何もする気が起きない(ゲームなどの楽しいこと、お風呂や歯磨きなどのルーティーンも含め)

 

という、ぐったりと横になるだけの状態で不思議に思ったそうです。何度かこの状態を経験した後わかったのは、

 

・音楽を聴いている時には音楽の流れに任せて普通に気持ちよく聞いている

・音楽を聴いている時は、普通にリラックスしている

・特に他に何かしているということはない

・ただ、気分よくリラックスして音楽を聴いている

・気持ちは音楽にシンクロしている

 

の、最後の「シンクロしている」という部分がどうやら疲れを誘発しているようで、気持ちよく音楽を聴けば聞くほど、現実に戻ってきた時に「体中から気力がぬけたようになる」という現象が起こるようでした。ひどい時には、2、3日はやる気が起きず、寝起きも定時にできなくなり、うつ病になったのような無気力状態になります。

 

感覚が鋭い、ということが何か影響しているのかもしれませんが、この子の場合は音楽へののめりこみよう、感応性がもしかすると見た目で思うより、ずっと鋭くずっと深いのかもしれません。

 

感覚が鋭いことが凸面として扱える場合もあれば、凹み面として要注意なこともあります。例えば、目で見てたくさんの情報を一気に取り入れてしまうような視覚過敏な親族の場合は、視覚の整理が自分流にできるようになると問題ないですが、子供時代に情報を多量に視覚から入れてしまうままの素の状態だと、望まないのに流入し続ける情報量に対応できず・圧倒されている様子が「いつもぼーっとしている子」に見られたり、常に流入し続ける・情報の取り入れ方をコントロールできず多すぎる情報に直面し続けて気持ち悪い・イライラして情緒不安定になるなどし、その様子が「いつもイライラして不機嫌な面倒な子」に見られることがあります。

 

聴覚も同じで、鋭くあらゆる音を聞き分けるような子が、ピアノやバイオリンなどの演奏に夢中になる子もいれば、音が自分の神経を逆なでするので保育園や幼稚園の大勢の子供の不規則な声、大声、遊びの声や合唱などが地獄のように感じる子もいます。前者なら音楽スクールなどに入れてやれば機嫌よく過ごすでしょうが、後者であれば、園に通いだすと泣き喚いて登園を嫌がる状態になり親が困り果てることと思います。

 

そのためにノイズキャンセラーなどを用意して現実社会での生活をしのいでいく、などの対策を取っていますが、特性はそれぞれの子供で違い、その影響も上記に書いたようにそれぞれの子供によって異なるので、違う対処法が必要となります。まずは、子どもの不安定な状態や不適切言動(泣き叫ぶ、イライラする、ネガティブに振り切る)などのサインがあれば、その前後のに何をしていたか、どんなことが要因として考えられるか、その影響は結果としてどうか、という「事実を」記録したり第三者に見てもらって「事実という大きなヒント」を根気よく回収していき、子どもが心身ともに安定するような方向性、というかコツを探していくような感じです。

 

この記事の子の場合は、音楽は好きなので、さらっと1回につき10分か15分聞くという「音楽を聴く時間」を制限することで、影響を受けないようにしています。好きな趣味は除くことなく、「うまく付き合う」方法を考えた、ということです。

 

音楽が癒しになりにくい、どちらかというと「聞いた後」に心を疲れさせた状態にしてしまう、エネルギーを奪われる珍しいケースとして参考に書いてみました。

 

 

<参考:過去記事>

 

聴覚過敏:イヤーマフとノイズキャンセラーの違いや好み。(小学~大学生の親族の意見を参考にしました

同学年・同年齢でも発達状態は違う。「社会的」学びと「習慣的」学びについて、運動会を例に。

感覚過敏で「歯を磨けない」子に。ジェル、予防液、電動歯ブラシ。

2歳の宇宙語を話す、自閉の子。一人で食べられる食事の仕方、トイレトレ他。

不器用、多動、読み書きの困難や感覚過敏の状態をマイルドにする本、先生の理解を得やすい本をご紹介。

感覚過敏でギャン泣き、寝てくれない赤ちゃんにはこれ。おくるみ。

 

 

 

 


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