江戸川教育文化センター

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小学校高学年への「教科担任制導入」に反対する(1)

2020-09-16 | 随想
コロナウイルス感染拡大の中で学校はその対応に追われているが、ちょっと気になる報道があった。
小学校高学年(5・6年生)への教科担任制導入である。
これまでも取り沙汰されてきたことだが、ここへ来て具体的な検討がなされているらしい。

文科省のホームページの資料には次のように書かれている。
「義務教育9年間を見通した指導体制の整備に向けて、小学校高学年の児童の発達の段階、外国 語教育をはじめとした教育内容の専門性の向上などを踏まえ、
令和4年度を目途に小学校高学年からの 科担任制を本格的に導入すべきである」(20206月4日付)
 

しかし令和4年といえば、あと2年半しかない。
今年の前半に浮上し結局導入見送りとなった「9月入学制」と同じく拙速な導入は、現場を混乱させるだけであろう。


 私は次の4つの点で、「高学年の教科担任制導入」には、反対である。

①養成・採用・異動を含めた制度設計ができるのか

文科省の資料を見ても、養成・採用・異動を含めてきちんとした制度設計をしようという検討がなされているとは、とても思えない。
本来なら、教育大学もしくは文学部の教員養成課程に置いて、小学校理科とか算数・英語の必修授業(何単位になるかという検討も必要だ)が行われ、
それを受けて免許の取得に必要な単位数や教育実習も必要だろう。 

さらに、その免許取得者を「小学校理科専科」なり「算数専科」等の枠で採用し、人事異動の際は、同じ教科を担当する教員同士で異動が行われなければならない。

ところが、文科省の資料を見てもそうした基本的な検討ではなく、養成段階(大学のことだ)で「他交種の免許を取得できるよう、授業科目を共通化する」とか、
現職教員では「経験年数を踏まえて免許状の取得に必要な単位の弾力化を行う仕組みの見直し」を検討課題としてあげている。

さらに、「社会人の学び直しによる普通免許状の取得」をしやすくするための「教職特別課程の修業年限の弾力化」や「専門性を有する外部人材の活用」などが掲げられているが、
データとしてあげられている「特別免許状」の授与件数は述べ1207件となっており、そのうち何人が教員としてい採用されているのかは不明である。

また、論点のまとめの(3)に「人事配置のあり方」が記されているが具体的な記述は、どこにもない。

つまり、かたや「教科担任を本格的に導入すべき」と看板を掲げて言いながら、いわば「小手先」の対応で済ませようとしているのではなかろうか。
その証拠に、「教科担任制導入」での「教員定数」増がどのくらい必要なのかということが、どこにも書いていなことだ。
文科省の「本気度」が疑われるといえよう。

(つづく)

-K.H-


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