信号が赤に変わる直前に、
小さなトラックが、
荷台に小さな家(プレハブ?)を
載っけて右折していった。
レトロな雰囲気の漂う
ミニチュアのお家のようで
不思議な魅力のある「家」だった。
トラックの後ろ姿を見送りながら、
「かわいいなぁ」と思った。
なにに使うための家なんだろう。
そんなことを考えながら、
信号が青に変わるのを待っていた。
するとななめ後ろから、
小さな子どもの声がした。
「ねーねー、いま
トラックのうえに
小さいおうちがのってたー！」
自転車の後ろの席に座ってるようだ。
そのくらいの高さから声が聞こえたから。
前で自転車を運転しているお母さんに
知らせているようだった。
ぼくは、思わず嬉しくなった。
奇跡的に通り過ぎた「素敵なトラック」を
見たのがぼくだけじゃないとわかったから。
一緒に見てくれた人がいたことが
わかって嬉しかった。
(でしょ！！でしょ！！
みた？ みた？
かわいかったよねー!!)
勝手に心の中で、子どもに
話しかけていた。
トラックに反応する子どもの
可愛らしい感性と、
それをお母さんに報告しようとする
ことが素敵だなぁと思った。
お母さんは、
とくに反応せず。
すると
一瞬の間の後に、
「マジ、
草生える〜〜〜ww」
え？！！
予想もしなかった子どもの
言葉に、ぼくは耳を疑った。
お母さんは、
冷静な声で言う。
「そういう言い方は
よくないと思う」
「だって、◯◯も
いつも言ってるもん」
と、子ども。
(○○というのは、よく
聞き取れなかったけど。
人気のYouTuberとかなんだろうか)
信号が青になった。
ぼくは、歩いた。
横を自転車が通り過ぎる。
「そういうのは、
ネットの中で使うならいいけど、
外で使ったらおかしいと思う」
と、お母さんが言ってるのが
聞こえた。