1971年に、とある学校の校長先生が
卒業式の式辞で憲法批判を行ない、
免職になったという事件がありました。
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国旗国歌は無視していいが、憲法批判は許さない
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(個人ブログ)

<前略>
1971年3月6日の朝日新聞夕刊9面に以下の記事が載った。 
「現憲法は心を冒す公害」と式辞  宮城県 県立米山農業高校の校長
記事によると、校長は卒業式のときに式辞で、現憲法を「現憲法は心を冒す公害」「無制限の自由をうたう」「仮の憲法下にある我々」などと現憲法を批判した。

<中略>
この校長先生は免職となった。
憲法を批判しただけで免職となるとは、まさに「思想・良心の自由」に対する侵害である。恐ろしい事件である。

<後略>
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これについて、私は
政治教育と全く関係ない式典で手前の憲法論を述べる行為は、手前勝手が過ぎる(TPOの問題)
・何より、この校長の行為は教育法14条に違反していると言える(法律の問題)

という認識をもっており、ゆえに
「免職になっても文句は言えない。少なくとも、
自分から『免職に都合の良い口実』を与えてしまった」
と考えています。

それに対し、以下のような反論を受けました。

1.教育基本法は「特定の政治団体の支持を禁止」しているだけである。
 憲法批判は「政策」だが「政党」ではないので教育基本法違反にならない。

2.大体、「特定の政治的な方向に偏らせる教育」がダメなら、政治教育自体ができない。

3.教育基本法に違反するのなら、1年後に復職できたはずがない。

→ゆえに、これは「野党による」言論弾圧である。



しかし、この反論のポイントはどれも賛同しかねるものです。


まず1.の、
「政策」と「政党」はイコールではない、という指摘。
これは、無論一般論としては正しいのですが
今回のようなケースにその一般論を持ちだすのは無理があるんじゃないかと。

特定の政策を掲げる党と、それに反対する党があれば、
教師が「政策」の支持/不支持を述べる事は
生徒の「政党」の支持/不支持につながる
のは自明の理ですから。

そして少なくとも、上述した「自明の理」は、
(実態はどうあれ)クビの口実」としては十分です。


次に2.の
「政治教育自体ができなくなる」
という反論については、
無理がある」どころか乱暴過ぎると思います。

政治教育というのは、特定の政策についての
支持/不支持を教えるモノ
ではありません。


例えば改憲を考えても
・憲法には、改正の手続きが定められている
・最後は国民投票(=自分達の意思)で決める事になっている

という事実を伝えるだけなら、
特定の条文や憲法改正自体の支持・不支持
にはなりません

さらに言うなら、
特定の条文について、
改正をしようという人と改正すべきでないという人達、
どちらもいるよ。

と伝えれば、
どちらに与する意図も無いと言える言い方になるでしょう。(※)

政治教育って、そういう事ですよ。

※この場合、結果として
改憲は絶対許さない!
みたいな、アホな主張をする連中
支持を失っていく可能性が出てきますが…
上述した内容・言い方なら
極めて中立的、完全な「事実」のみの伝達
なので、日教組も「クビの理由」にはできません。
こういう形で「事実」を若者たちが知っていくとどうなるか?
適当な印象操作がききづらくなる。
各政党は、主張をもう少し具体化せざるを得なくなってくる。
政治がレベルアップするんです。
それこそが、政治教育の意義であり重要性だと私は思います。


最後。3.の
法律違反なら1年後に復職できるハズがない
の件。

実際には、そんな事ありません。

まぁそもそも制度的には、
何か思い切り犯罪に手を染めて
懲戒免職、教員免許失効したとしても
3年経てば再交付を受けて復職可能ですし
そういう事例もありますが、それは横においても…

クビにもそれなりに正当な理由があるが、
処分が重すぎるという批判や
その後の免職取消にもある程度の納得性がある

という状況は、普通にあり得ると思います。

分かりやすい例としては
立ち小便で捕まって罰金刑となった場合
が挙げられるでしょう。

法律違反としては些細なものです。
それでクビにする程のこっちゃないだろう、とは思います。
しかし。
それをあまりにも堂々と目立つ形でやれば、
黙認できなくなってしまう事もあって当然
なんです。
(「
卒業式における式辞で手前の憲法論を押し付ける
のが、まさにその「あまりにも堂々と目立つ形」です。)

だからこの問題は、法律違反の問題だけでなく
TPOの問題も重要
なんです。


以上で、全ての反論ポイントに対する「再反論」は
基本的に完了です。

やや繰り返しになりますが、
客観的に見れば、校長の行為

生徒全員を集めた学校行事
教職員が
国民が自分達で考えるべき憲法について
「公害だ」という手前の政治的思想を
一方的に押し付けた


という、法的にもTPO的にも問題があると思われる行為です。
(法的な面では議論の余地があっても、
少なくともTPOの面ではほぼ議論の余地は無いと思います。)

それを考えれば、
「野党の言論弾圧に違いない」と断じて批判する事は
非常に難しいと思います。

(その側面が絶対に無い、とは言いません。
むしろ多分にあるんじゃないかとも思いますが、
この件については校長のやり方マズかった
少なくとも、正当なクビの理由にできるネタを自ら与えてしまった
という話。)


なお念のために再掲しておきますが、
私はいわゆる「改憲派」です。
→ 【憲法とは。】
(まぁそもそも「改憲派」 「護憲派」という言葉自体が
おかしいと思ってますが。
何せ憲法というものは
護るのが当たり前であると同時に、
自分達で考え必要に応じて変えていくのが当たり前

ですから。)

その改憲派の私がなぜ、
同じく改憲派と思われる校長を
批判しているかと言えば・・・

どこかの学校の卒業式で
校長が
憲法9条、日本の平和憲法こそは
『世界の宝』です。
我々日本人は、
これを絶対変える事なく
守り抜かねばならないので
す」
みたいな演説をした
といった事態が起きた時にも、
この件と同様に
「生徒の気持を無視している上、
教育法違反の可能性すらある、
とんでもない行為だ」
と、強く批判したいし、
それを理由にクビになったら
「そりゃ仕方ないよね」と言いたいからです。

卒業式で校長が憲法を『公害』呼ばわり
を思想の自由だ、免職は言論弾圧だ、と仰る
反論者のかたは、
卒業式で校長が『9条絶対守れ』演説
をしても、それは思想の自由だから
当然守られるべきであり、
処分などしてはならない、
と仰るのでしょうか。

それならば言動は首尾一貫しておられますが、
その点においては私とは相容れない感じだなぁ・・・。


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