今回は、根管治療(こんかんちりょう)の失敗の一つ、ファイルの破折について書きます。

根管治療は、虫歯などで歯の神経を取る治療のことです。

歯の中には、歯髄(しずい)と呼ばれる歯の神経があります。

この歯髄は、元を辿れば、歯槽骨(しそうこつ)の中を通り、歯根(歯の根っこ)の先端から歯の中に入ってきます。

根管治療では、この歯根の先端までの神経を取り、根管(神経が入っていた管)の中を完全にきれいにしてから、根管充填(こんかんじゅうてん;薬を詰めること)を緊密に行います。

この根管治療で使用するのが、ファイルあるいはリーマーと呼ばれる非常に細い器具です。

根管は、レントゲン上で真っ直ぐに見えても、実際には湾曲(曲がっている)していることが多く、特に歯根の先端付近では、ほぼ直角に近く湾曲しているものも珍しくはありません。



 
根管治療で根管の中を清掃するときに使う、ファイルと呼ばれる非常に細い器具。
根管の湾曲が極めて強い根管治療では、1回の治療でこんなにもダメになってしまうこともある。健康保険では、全く採算が合わない


 
ダメになったファイルの先端。らせん構造が無くなり、金属が永久変形を起こしている。
このまま使い続けると、この部分が折れる。折れたファイルを取り除くことは極めて困難で、多くの場合、取り除くことが出来ない。したがって、変形したファイルは迷うことなく処分することが、ファイル破折を防ぐためには何より大切
 
 
湾曲した根管の治療は、非常に難しく、完全に根管治療をするには、高度な技術が必要になります。

そして、このファイルは非常に細いために、湾曲した根管の無理なファイリング(ファイルをねじったり上下運動させること)は、ファイルの破折を起こす可能性が高まります。

また、金属疲労により変形したファイルは、破折を起こしやすいので、思い切って処分する覚悟が必要です。ここでファイルをケチると、後々問題を起こすこととなってしまいます。


健康保険では、歯を残すために大切なこの根管治療の評価が極めて低いために、不完全な治療が非常に多くみられるのが現状です。

根管治療の評価を上げるためには、治療の質を正当に評価をすることが必要だと思います。

しかし、健康保険では、治療の質は問われず、経済評価が全く同一です。


普通に考えれば、きちんとした仕事に対してはその対価を支払い、そうでないものは評価されないというのが市場の原理原則です。

目に見えない、痛みが出なければ患者さんには分からないからといって、不完全な根管治療のまま補綴(ほてつ;被せること)することは、同じ医療従事者として到底納得のいくものではありません。

したがって、正しいものが正しく評価されるために、厚労省は治療の質を評価するシステムを考えるべきだと思います。(歯科は、やり直しの治療が多いために、医療費が無駄になっているし、患者さんの肉体的負担も大きいと考えます)


良い治療を行うためには、時間と材料のコストがどうしても必要です。

患者さんにおかれましても、どうかご理解をいただけたらと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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