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今回は、骨粗しょう症の薬と歯科治療について書きます。

骨粗鬆しょう症は、骨の密度が低くなってスカスカになる病態を指します。専門的には、骨密度の低下と骨質の劣化による骨強度の低下を指しています。

骨は、古い骨を破骨細胞が壊し、新しい骨を骨芽細胞が作るということを絶えず繰り返し、適正にリモデリング(新陳代謝)をおこなっています。

このバランスが崩れて骨強度が低下すると、骨粗しょう症になります。


骨粗しょう症が進行すると、わずかな外力で骨折を起こし、特に大腿骨近位部(股関節付近)や椎体(脊椎の骨)の骨折は、高齢者の寝たきりにつながり、著しいQOLの低下を招く可能性があります。

我が国の大腿部近位部骨折者の10%が、骨折後1年で死亡するという報告があります。

このため、骨密度の低下や骨質の劣化は、医師として決して看過できない問題なのです。


一方、歯科領域では、抜歯や歯周病治療、インプラント治療など、観血処置(いわゆる手術)が必要な場面がたくさんあります。

この場合、骨粗しょう症の薬の中で、唯一ビスフォスフォネート製剤の服用や点滴、注射が問題になっています。

いわゆる顎骨の難治性壊死(BRONJ)が起こることが知られています。

骨を露出させるような手術を行うと、骨が壊死(えし:腐って死んでしまうこと)が起こることがあります。

特に、インプラントは歯肉(歯茎)との結合が弱く、インプラント周囲の炎症(インプラント周囲炎;ペリインプランタイティス)を起こすと、インプラント周囲の顎骨壊死を惹起する可能性があるので注意が必要です。

超高齢化を迎え、残存歯数が減ってインプラントをする人が増え、骨粗しょう症に罹患する患者さんが増えれば、インプラント周囲の顎骨壊死(BRONJ)の起こるケースも増えると考えられます。

もし、現在、インプラントが入っている患者さんで骨粗しょう症を患っている方、もしくはこれから治療をする予定のある方は、医科と歯科が連携できるような体制で診療していただけるように、是非申し出ていただきたいと思います。

骨粗しょう症の治療であれば、ビスフォスフォネート製剤以外にも、エビスタ、ビビアントなどのSERM(selectiv estrogen receptor modulator)も高い効果があるといわれています。

ただし、骨粗しょう症以外の治療や予防、例えば乳癌の骨転移を抑える目的でのビスフォスフォネート使用などもありますので、薬剤の選択に関しましては、担当の先生とよくご相談の上で決定することが必要です。

医療は、診療科別の縦割り構造では解決しにくい問題がたくさんあります。

お困りのことがあれば、医科でも、歯科でも構いません。遠慮なく申し出るようにしましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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