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今回は、前歯の審美治療について書きます。
前歯はとても人目に触れるところで、自分自身でも治療の善し悪しが、比較的判断しやすいところではないかと思います。
歯並びや色、形、詰め物や差し歯・被せ物の変色など、見た目が気になり、治療を希望される方はたくさんいます。
前歯を削ってセラミック・クラウンなどを入れるのは、それほど難しい治療ではありません。
それだけの治療なら、時間も回数もさほどかかりません。
でも、本当に大切なのは、被せる歯の中の状態なのです。
歯を削って被せる場合には、元々の虫歯が大きく、根管治療（歯の神経の治療）が必要な場合が少なくありません。
この根管治療をきちんとしてあるケースが、意外と少ないのです。
根管治療は、建築で考えるなら、基礎工事にあたる部分といえます。
いくらセラミック・クラウンなどの高価できれいな被せ物・差し歯を入れたとしても、基礎になる部分がしっかり治療していなければ、それは「砂の城」と一緒なのです。
基礎をしっかりやらないマンションや家を、値段が安いという理由だけで購入しようとしますか？
歯科の治療においても、それと同じことが言えます。
歯の治療は、やり直しの効かない場合が結構多いのです。
根管治療中。ファイルを根管の中に挿入し、歯根の方向と長さを確認している
根管充填後。白く映っているのが薬。隙間なく緊密に薬を詰めないと、歯根の中から腐敗してダメになる
インプラントや歯列矯正、審美歯科などが健康保険治療の対象外であることは、多くの方がご存じだと思います。
経営的なことを考えれば、この分野に力を入れざるを得ない現在の歯科の事情を、歯科医師である私も当然よく理解はしています。
しかし、目先の利益のために「信用」を失うという代償は、あまりに大き過ぎます。
失った信用を回復するためには、信用をゼロから築くことよりも、遥かに時間と労力を要します。
歯科界が発展していくためには、良質な医療と正しい情報を提供し、それが正しく評価され、患者さんからの信頼を築いていくことが不可欠ではないかと考えています。
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