歯列矯正においては、歯が並ぶゆとりがないために便宜的に抜歯することはよくあります。

通常、抜歯ケースにおいて抜歯を行う場合、上下の同名歯(同じ歯)を抜きます。

これは、上下の歯幅と歯数を合わせること、そして上下の奥歯の山と谷をしっかりと噛み合わせるためです。


奥歯の噛み合わせは、上下の6歳臼歯(6番)が正しい位置関係で噛むⅠ級咬合といい、これを正常な噛み合わせ(正常咬合)としています。

そして、出っ歯傾向(下顎後退を含む)をⅡ級咬合、受け口傾向(上顎劣成長を含む)をⅢ級咬合と定義しています。



抜歯ケースでは、通常、上下の4番(第一小臼歯)の抜歯をする頻度が多いと思われます。

これは、前歯のクラウディング(叢生、乱杭歯、凸凹)をひも解くのに最も有利なためです。

ただし、上下の顎や歯列に前後的なずれがある場合には、上顎4番と下顎5番の抜歯、あるいは上顎5と下顎4番の抜歯などを行います。

そして、虫歯の歯や根管治療がしてある歯、歯周病が進行している歯がある場合には、治療計画に無理が無い範囲で状態の悪い歯を抜いたりします。



上顎前突の場合、変則的に上顎の小臼歯を2本だけ抜歯して治療を行うことがあります。

この方法は、抜歯する歯の本数を少なくすることが出来ますが、上下の歯数が合わず、奥歯の咬み合わせの関係がⅠ級咬合とはならずに、Ⅱ級咬合の仕上がりとなります。

これでも、前歯はきれいに並び、問題なく噛めるようにはなりますが、本来の理想的な噛み合わせではありませんので、次善の策ということになろうかと思います。
(下顎の歯列弓が小さい場合、あるいは舌が大きい場合は、下顎の小臼歯を抜かない方法もありかと思われます)

上顎第一大臼歯の咬合面(噛み合う面)には、斜走隆線という隆起があり、Ⅰ級咬合で噛むことにより、この斜走隆線が下顎の後退を抑え、顎関節症を予防しています。

したがって、下顎が後退したⅡ級咬合は、顎関節症の発症率が高いのです。

基本的には、歯列矯正では上下の歯数を合わせ、Ⅰ級咬合を確立することが望ましいといえるでしょう。


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