美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

MMTの変わり種・モスラーの『経済政策をめぐる7つの嘘っぱち』を訳してみました(その4)

2019年06月21日 18時33分36秒 | 経済

ジョン・K・ガルブレイス

*ガルブレイス教授の〔序文〕の次は、モスラ―の〔プロローグ〕をご紹介します。
〔プロローグ〕
「悪意なき欺瞞」という言葉は、ジョン・ケネス・ガルブレイスが、最晩年に書いた『経済学の悪意なき欺瞞』から引用したものです。ガルブレイスは、2004年94歳で本書を書きました。彼が亡くなる2年前のことです。ガルブレイス教授は、正統派経済学者やメインストリームメディアやほとんどすべての政治家が正しいものと信じ込んでいる、誤謬にみちた仮定・学説を描き出すために、その言葉を使ったのです。

エレガントで痛烈なウイットに満ちた「悪意なき欺瞞」という言葉には、その欺瞞は単に悪いものであるということのみならず、彼らエリート連中は自分たちが本当のところ何をなそうとしているのかをきちんと理解しうるほどには賢くないことも含意されています。そうして、彼らの優越感に満ちた妄信に基づく主張のかずかずは、意図的な欺瞞と考えられないほどの自己差別の承認をもたらします。
*上記の「自己差別」は、self-incriminationの訳です。「自己を有罪に至らしめる証言」という意味の法律用語です。

ガルブレイス経済学の諸見解は、1950年代から60年代にかけて広く支持を得ました。当時発行された『豊かな社会』と『新しい産業国家』は、ベストセラー作品となりました。彼は、ケネディ政権やジョンソン政権とつながりを持ち、1961年から63年までアメリカ大使としてインドに赴任しました。帰国後は、ハーバード大学の最も著名な経済学の教授になりました。

ガルブレイスはケインジアンであり、財政政策のみが消費力の回復をもたらしうると信じていました。財政政策とは、経済学者が減税もしくは支出の拡大と呼ぶものです。支出の拡大は一般的に、経済学者が総需要と呼ぶものです。

ガルブレイスの学問上の天敵であるミルトン・フリードマンは、いわゆる「マネタリスト」として知られているところの、ガルブレイスとは異質の学説を唱えました。

マネタリストは、以下のように信じています。すなわち、連邦政府はいつでも収支が一致する均衡予算をキープし、彼らが金融政策と呼ぶものを実施し、経済を規制すべきである、と。もともと彼らのいわゆる金融政策とは、お金の供給量をゆっくりと着実に増やしてインフレを抑制すること、および、そうすることで経済を自由市場に任せることを意味しました。

しかしながらマネタリストは、結局のところ、お金の供給量の尺度を思いつくことができませんでした。また、連邦準備制度は、実験を重ねてみたけれど、お金の尺度を実際的にコントロールする方法を見つけることができませんでした。

ポール・ボルガ―は、お金の供給量を直にコントロールしようとした最後のFRB議長でした。
試行錯誤の長年月の後、彼の試みは、ほとんどのFRB関係者が長い間信じ続けてきたことを単に実演してみせだだけのものだったこと、および、お金の供給量をコントロールする手段など実はなかったことを明らかにしただけでした。万事休す、だったのです。

*次回は、「プロローグ」の後半です。

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