美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

MMTの変わり種・モスラーの『経済政策をめぐる7つの嘘っぱち』を訳してみました(その17)

2019年08月20日 01時15分03秒 | 経済

緊縮財政生一本で、日本は世界で唯一20年間もデフレを続けている「ユニーク」な国家になってしまいました。

*今回で、嘘っぱち#1、終了です。

政府自身に余剰が見出しうるから、という理由だけで、政府のサイズを拡大するのはもっと良くありません。もう一度申し上げます。政府の財政は、政府がどれだけの大きさであるべきなのかについて私たちになにも教えてくれません。政府の大きさをどうやって決定するのかは、政府の財政とは完全に独立しています。政府支出の正しい額は、税収や借入能力とは何の関係もありません。税収や借入能力はともに公益のために実施する政策のための単なる道具であり、支出するかしないかの判断基準ではないし、実際の政府支出に必要な収入の源泉、すなわち財源ではないのですから。

私は、本書において後ほど、政府の役割とは何であるかについてはっきりと述べるつもりです。しかし、安心してください。私のビジョンは、はるかに合理化された効果的な政府、基本的な公共的目標にきっちりと焦点を当てた政府に向けられています。幸運にも、これをなすためのかなり有用で明瞭に分別のある方法がいくつかあります。私たちは、チャンネル市場が、はるかに少ない規制で公共的な目標をより促進するためのガイドを伴って強制する場所に正しい誘因を置くことができます(*)。

*当訳文に該当する英文は、「We can put the right incentives in place which channel market forces to better promote the public purpose with far less reguration.」です。あまり自信が持てません。特に「channel market」がピンときません。どなたかご教示願います。

これは、世界の羨望の的であり続ける政府と文化をもたらします。それは、私たちが本当の誇りを持って敬意を表しうるところの、熱心な労働への報酬、イノベーション、機会の平等の促進、公平な結果、実施しうる法律と規制という、私たちアメリカ人の価値を表現する政府です。

いささか脇道に逸れてしまいました。税金はどれくらいの高さであるべきかという問題に立ち返りましょう。そうして、もしも政府が買いたいと思うものだけを単に買おうとし、私たち国民の消費力をまったく取り除かないならば、無税国家が誕生することになるでしょう。それは、“多すぎるお金が、少なすぎる商品を追いかける”という事態を招き、とどのつまりインフレをもたらします。事実、税金がないならば、ちょっと前に論じたように、政府が発行したお金と交換される売り物が最初からまったく提供されないことでしょう。

*税金の支払いのために、「市場に商品を提供してお金を稼ごう」というモチベーションがまったくなくなるからです。

政府支出がそういうインフレをもたらさないようにするために、政府は、私たち国民の消費力のいく分かを取り除かなければならないのです。繰り返しになりますが、なにか支払いをするために徴税するのではなくて、政府支出がインフレをもたらさないようにするためにするのです。経済学者は次のように言うかもしれません。すなわち、税金の役割は総需要を規制することであって、税収を増やすことそれ自体ではない、と。別言するなら、政府が私たち国民に課税し、私たちのお金のいく分かを取り除くのは、インフレを防ぐためであって支出するために私たちのお金を分捕るためではない。

もう一度言います。税金の役割は、経済を規制し調整することであって、議会が支出する分のお金を国民から分捕ることではない。

さらにもう一度言います。政府は、ドルを持っているわけではないし持っていないわけでもない。政府は支出するとき単に銀行口座の数字を増やし、課税するときその数字を減らしているだけのことです。そうするのは、たぶん、経済の規制や調整という公共的な目的を達成するためです。

しかし政府が、「新たに財政支出をするためには、課税するかもしくは国債を発行して財源をその分増やさなければならない。別言すれば、政府の支出額は、課税したり国民から借り受けたりする能力によって限定される」という、7つの欺瞞の第一項を信じ続ける限り、生産活動や雇用の邪魔をする政策を支持し続け、私たちが相当に有用な経済的な結果を達成するのを邪魔だてすることでしょう。

*この20年来の日本政府による経済政策の愚かしさの本質が、「嘘っぱち#1」だけによっても見事にあぶりだされている、と感じるのは私だけでしょうか。

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