国鉄時代を知らない人へ知って欲しい、国鉄時代のお話し 第1話 第一次5か年計画 | 鉄道ジャーナリスト加藤好啓(blackcat)blog

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福祉と公共交通の視点から、鉄道のあり方を熱く語る?
blackcat こと加藤好啓です。
現在の公共交通の問題点などを過去の歴史などと比較しながら提言していきます。
随時更新予定です。

大いなる妄想シリーズは一先ずお休みして、今回から何回かに分けて、国鉄時代のお話しを何回かに分けてお話をしたいと思います。

国鉄時代のお話しは、色々な本などで語り尽くされていますし、一部の熱烈な国鉄時代の車両が良いという若いファンの方もいます。

 

しかし、国鉄時代を実際にリアルに見てきたものとすれば、どうなんだろうと思ってしまうわけです。

 

また、国鉄時代の車両は丈夫で長持ちと言ったイメージを持たれている方もいますが、実際には国鉄時代の車両は短いものでは16年ほどで置き換えられていたわけです。

JRの車両が極端に短い訳ではないのですが、JR東日本が209系を寿命半分というコンセプトを打ち出したことで、国鉄形が頑丈だというイメージが先行したのかと思います。

 

そこで、国鉄時代のお話しを時系列的に、概ね昭和30年台からスタートして、昭和62年頃まで、一つのテーマを決めてお話ししていこうと思います。

 

第一回目は、第一次5か年計画のお話です。

 

第一次5か年計画とは

第一次5か年計画は、昭和32年度を初年度として計画されたもので、昭和32年3月、国鉄が抜本的に輸送力の改善を行うことを条件に,運賃改定が認められたということからスタートします。

 

今年の3月、国鉄5箇年計画を実施することを条件として、国鉄の運賃改正が国会で承認された。この5箇年計画は減価償却費を確保して老朽資産などを一掃し、輸送の安全を計るとともに、急激に伸張しつつあるわが国経済の輸送需要に応ずるための輸送力を近代化しつつ、増強しようとするものである。思えば終戦以来、戦時中の酷使と激増する客貨の要要請と更に事故の続発に力尽き果てんとして来た国鉄の10年来の念願が漸く聴き容れられたわけである。この懸案の5箇年計画は、今年度を初年度としてスタートを切ったのであるが、これが実施に当つては、更にその精度を昂め、実施計画にまで進めるためには考えなければならない問題が少くはない

交通技術 昭和32年10月「 国鉄5か年計画を巡る諸問題」から引用

 

改良計画は自前で、更にローカル線建設や諸費用の負担も国鉄

これによりますと、国鉄は第一次5か年計画で抜本的に輸送力増強を含む改良工事を行うこと、ただし、改良工事に財源は、独立採算制の観点から、自主財源とすることとされました。

再び、「 国鉄5か年計画を巡る諸問題」から再び引用させていただきます。

戦後国鉄に対する部外の風当りが著しく強く、運賃改正は頗る不評で、これの実現は、難行を続けた。然し結局、このまま国鉄を放置することが許されないことが認識されて、運賃改正は5箇年計画を実施することを条件として認められた代りに、投資総額5,970億円の10%は節約しそのほかに新線建設350億円を追加されたのである。一方値上率は国鉄の要求する18%を13%に圧縮し、資金の不足分は増収によって補うこととし、必要な経費については、人件費は自然昇給は認めるが増員は認めず、動力費は所期の近代化を行うことにより26%の削減、修繕費は資産の更新と検修の合理化により10%の削減を期待し他の所要経費は合理化によって生み出すという頗る厳しいものである。しかも部内の合理化には協力を必要とする労働組合が、労働強化反対を叫んで非協力の立場を採るに至り、前途に幾多の困難が予想されるのである。

ここに書かれていますが、国鉄の施設の老朽化は著しい事は広く国民も認めるところであり、実際経済発展により旅客輸送量は、右肩上がりに増えつつあるのに、肝心の輸送力が追いつかない状況に置かれていました。

ということで、国の投資ではなくあくまでも国鉄の自前の予算で行いなさいと言われています。
さらに、ローカル線の建設にもそれとは別に費用を割けと言われているとして、その額は350億円、現在の貨幣価値の1/10としすれば、3500億円もの高額な経費をローカル線建設輸送に充当せよと政府から言われています。
さらに、後ほど出てきますが、地方財政救済のため、昭和31年4月には 「国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律 法律第八十二号(昭三一・四・二四) 」という法律が制定され、国鉄は新たに、納付金という税金を払わなくてはならなくなりました。

 

地方納付金とローカル線

 

地方納付金と言う名の新たな税金

前述しましたように、大蔵省【当時の名称】では、地方への納付金の財源に頭を痛めていました。
そこで、公社と呼ばれる事業体に新たな税金を賦課することにしました。

これが、地方納付金と呼ばれるもので、固定資産税の半分程度の金額でした。

対象は、専売公社【現在のJT】、電電公社【現在のNTT】、国鉄【現在のJR】であり、現業機関と呼ばれた、郵政・造幣・印刷局・林野・アルコール専売は国の機関であるとして、納付金の支払いは免除されました。
注:現在は郵便局も民営化されたため、郵便局局舎も固定資産税の対象となり、財源確保等の意味合いから不採算の郵便局は代替設置を認めず、そのまま廃止と言うことも起こっています。

国鉄にしてみれば、施設の改良なども自前で、さらに、国鉄の資産に課税されてそれでなくとも必要な経費を確保しなくてはならないときに、税金で持って行かれるという手法はあまりにも好ましいものではありませんでした。

詳細は、

地方納付金とローカル線 

に記載されていますので、併せてご覧いただければと思います。

 

続く

 

NEVERまとめサイトでも解説しています。

 

日本国有鉄道史 高度経済成長と輸送力増強 第1話 輸送力増強

日本国有鉄道史 高度経済成長と輸送力増強 第2話 地方納付金と言う名の税金

日本国有鉄道史 高度経済成長と輸送力増強 第3話 第2次5か年計画と国鉄

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