★相談内容
翌日、会田さんが訪問して来た。確かに42歳に見えなくはない・・・
ただ相当痛い・・・ピンクのフリルのついたスカート・しかもチビTだ!
チビTで胸も強調しているので余計に痛い・・
「始めまして、会田 翔子と申します。本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます☆」
と可愛い声で言った。いわゆるアニメ声である。神様は良くキャラクターをご存知だと私は思った。
大屋敷のおっさんが42歳に見えるというのに嘘はない。
「始めまして、瀬奈 義明と申します。簡単な概要は大屋敷さんから伺っておりますが、改めてお聞きすることもあると思いますがご了承ください」
「それではこちらの椅子に座ってください」
「それでは失礼します☆」バックの派手さも尋常ではない。小学生の持つようなキラキラしたバックを持ってきている。何かの付録か?そのバックを彼女は4人がけのテーブルの隣の椅子の上に置いた。
瀬奈はこの依頼は断った方が無難かな?なんて考えていた。一応大屋敷の紹介の為、尋ねて見る。
「それではどの様な相談なのか教えてください。ちなみに本日の相談は1時間までは無料でその後は有料となります」「それで結構ですか?」瀬奈が確認する。
「ええ、構いませんわ、そんなに込み入った事ではないですし・・・」と翔子も応じる。
「それでは御相談に入る前に支払いの方法を説明させていただきます。まずは私のアドバイスによってあなたが手に入れた利益の10%が私の報酬となり、こちらをお支払いいただきます」
「ええ、それで構いませんわ」
「それから支払いはステーブルコインでお願いいたします、Jコインです」と瀬奈が言う。
翔子はキョトンとした顔で「じぇいこいん・ですか?」と答えた。
「そうですJコインです。ご存知ないですか?今はやりの暗号資産というやつですよ」と瀬奈
「あんごうしさん・・・・」翔子は言葉を繰り返すだけだ。
「そうです暗号資産です。ちょっと前までは仮想通貨なんて呼ばれてましたがね」
「かそうつうか・・・・」ここでもオウム返しだ。
瀬奈自身は無理なことを言っているつもりはなかった。もう普通に決済通貨として世界中では使用されているのだ、ただ62歳に暗号資産と言っても難しいだろう。
というわけで瀬奈は簡単に説明した。
「報酬はJコインでいただきます。ドルとかポンドとか他の国の通貨と思ってくれれば良いですよ」
「あのう?・・・現金という訳には行かないのでしょうか?」と彼女
「それは絶対だめです。ルール違反になります」と瀬奈も言い返す。
「でも・・なんだかそんなのわからないわ? どうすれば良いのかしら?」
「簡単ですよ。それは後から教えますので、早速、本題に入りましょうか?」
不安げながらも翔子は頷く。
「はい。それでは」
「実は私、今勤めている会社を辞めようと思っております。今の会社は勤めて2年になります。前の会社は定年で辞めてしまって・・・再雇用のお話はあったのですが、お給料が半分になると言われてしまってしょうがなく今の会社に勤めることになりました。
肩書は契約社員で1年契約です。社会保険にも加入してもらっております。仕事内容に不満はないのですが・・・職場の人間関係が嫌で・・もういいかな?なんて考えております」
「もうフルタイムで働くのも疲れてきたっちゃし、前の職場で結構退職金だって貰えたし、もういいかな?って感じなんです」と一息に話し始める翔子。
「なるほど、それで私に相談とはなんでしょうか?現在の職場を今、辞めて今後も暮らしていけるのか?の相談でしょうか?」なんとなくで瀬奈は聞いてみる。
「そうなんです。辞めてしまうと次が見つかる保証もないし、もうこの年齢ではパートだってなかなか見つからないと思います。それで悩んでしまって・・・」
「今、辞めても失業手当も自己都合退職で3ヶ月間は入らないし・・・」
「どうすれば一番得なのかを考えてしまいます」と翔子
「それは当然ですよ。人間生きなければならないですからね」と瀬奈
「ちなみに現在のご年齢は?」
瀬奈を上目遣いに見る翔子
「さあ?何歳でしょう?うふふ☆」さらに微笑む彼女。瀬奈はうんざりしてきた。さっき自分で定年してから2年勤めてきたって言ってたばかりじゃねーか、このおばさんは何歳って言われたいんだ?と瀬奈はげんなりしてきた。
めんどうくさくなってきた瀬奈は大屋敷が言っていた通りに
「42歳?」と聞いてみた。
すると彼女「残念!」
「あーショックだわー そんなに老けて見えるなんて・・初めてよ、40代で言われるのは!」
驚く瀬奈を尻目に
「39歳です、サンキュー☆」と言い切った。
かなりいかれてるな?これはと瀬奈が思ったとき・・・
「っていつも言えたらいいのにな・・・」なぜか、さみしそうにつぶやく翔子
「・・・」翔子の様子を見る瀬奈
突然きりっとして翔子の様子が変わった。
「本当のことを言います。私の年齢は62歳です。もうおばあさんです・・・」
「ずっと独身でやってきましたが、もう若作りしても結婚は無理だと諦めました。」
「いや。充分魅力的だと思いますよ」と瀬奈
「もういいんです。大丈夫ですから、本題に戻りましょう」と翔子
「わかりました62歳ということですね。それなら特別支給の老齢年金はもう支給されている年齢ですね。ただ今の段階では油断は禁物です。なにせ人生100歳時代に入ったと言われている昨今ですから」と瀬奈は真面目に答えた。
「それでは辞めないで我慢して勤めた方が良いのでしょうか?」と翔子
「そうですね、あせって結論は出さないほうが良いですよ。まずはどれ位、今後年金が貰えるか試算してみて、それから貯金の額、運用している資産があればその金額が知りたいですね」と瀬奈
突然、翔子はムッとした顔で答えた「あんたは何様のつもりなの?」
瀬奈は困惑しながらも反撃する「何様?と言われるような発言をした覚えはございませんが・・・」
翔子はまだふくれた顔のまま反論する。
「なんで、私の貯金額なんて教えなくちゃならないの?あなたが詐欺師だったらどうするのよ?あなたが詐欺をしない証拠なんてないんだからね!」
私も彼女の言うことももっともだと思う。いくら知り合いの紹介であっても、社会保険労務士の看板を掲げている先生であっても初対面の相手に言われて、のこのこと全てをさらけ出すわけにはいかない。
こうでなければ女性が一人で生きていくのは難しいだろう。彼女は様々な経験を積んで来たのだと推測出来る。
「詐欺をしない証拠ですか・・・」困った顔をして考え込む瀬奈
「証拠をお見せする事が出来ないのが残念です。この話はなかったことにしましょうか?」
「そうですね。その方がお互いの為になりそうですね。わかりました」
翔子は頭を下げて帰っていった。
LINEノベルで全文が読めます。
https://novel.line.me/r/general/novel/6639
人気ブログランキングに参加しています。