第6話 未払賃金立替制度
★事実上の倒産の場合
二人があっけに取られているのを尻目に瀬奈はたんたんと話を続ける。
「事実上の倒産の場合には労働基準監督署に倒産の事実を確認してもらう為に認定申請書を提出。一人でも申請すれば他の人は出さなくても大丈夫。認定申請書が通れば、認定通知書が来るので次は確認申請書を提出。これに未払賃金の金額を記載。通れば確認通知書が来る。この通知書に必要事項を記入して、労働者健康安全機構に提出。ざっと簡単に説明するとこんな感じになります。ただ時間との戦いになりますよ」と嬉しそうに話す瀬奈
「・・・」あっけに取られて声にならないふたり。
「この制度の対象となるのは倒産の日から半年以内の未払いの賃金と退職金です。ボーナスは入りません。立替られる金額は総額の8割になります」
「・・・はい」とやっと吉田が反応した。大屋敷は沈黙している。
瀬奈が話を続ける。
「退職時の年令によって上限があります。30歳未満 88万円。45歳未満 176万円。45歳以上 296万円。いずれも8割のときの上限額となっています」
「はい、今お話を聞いてとりあえず、わかった事は急がないと行けないってことですよね?」と吉田が質問する。
それを受けて瀬奈
「そのとおりです。倒産の日から半年以内の未払い賃金までしか該当しませんから、まだ倒産していない会社を急いで倒産させなくては行けないのです」
「私達が会社を倒産させるのですか?」と吉田
「はい、そのとおりです」と事も無げに言う瀬奈
「私達は何をすれば良いですか?」と吉田
「今から言う必要書類を1週間以内に該当者全員分集めて欲しいです。まず、給与明細。タイムカード。労働契約書、就業規則が必要です」
「あのう、うちの会社の就業規則は見たことがないんですが・・・あっ!あとアルバイトさんは本部が用意した契約書を使用して契約をしていますが、社員の私は契約書は交わしていません。口約束だけです」
「ではあるだけで結構です。それと失踪したオーナーさんは税理士さんに依頼していましたか?」
「はい、私も何度かお会いしたことがあります」
「その方の連絡先はわかりますか?」
「はい、確かオーナーの机の中に名刺が入っていたと思います」
「それではお店に帰ったら、教えて下さい。私の方から事情等を聞いて見ますので」
「はい、わかりました。私の方で揃えられる書類はみんなに声をかけて集めます。今後とも宜しくお願いいたします」
「あまり、無理はしないでくださいね。オーナーがいないと店長の負担が大きいでしょうから」瀬奈が励ますように言った。
「そうですね、でもこんな状態ですから、本部から応援も来てくださってくれて助かっています。じゃなければ、ここに来るのも難しいと思います」と吉田
「なんなら、大屋敷さんの所も応援を出せば良いじゃないですか?」と瀬奈
「違うオーナー同士は応援とかが難しいんじゃよ・・・本当は手伝って上げたいんじゃが・・・」と大屋敷がつぶやく。
ふーん、色々とややこしいものなんだなと思いながら瀬奈は
「なんとかいい形で大屋敷オーナーにバトンを渡したいですね」と笑顔でふたりに言った。
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