第7話 わすらるる企業年金連合会
★瀬奈との話
陽菜は早速、この事を報告しに事務所に行った。
絶対にパパに私が必要だってわからせてやるんだと気持ちをこめて事務所のドアを開けた。
そこには事務所を掃除している翔子がいた。
「あれ?父はいませんか?」と翔子に尋ねる。
「今、先生は大屋敷さんの所に行っています。仲良いですよね?あの2人」と笑顔で教えてくれた。
陽菜は素直になれずに「ふーん」とだけ言って
「いつ帰るか言ってましたか?」と聞いた。
「すぐ帰るような事は言ってましたが、そうだ陽菜ちゃん、コーヒーでも入れるね。
ちょうど良い豆が入った所だから・・・」陽菜は驚いていた。
なんとこのオンボロ事務所に高級そうなコーヒーメーカーが置いてあるじゃないか・・・私の知らぬ間に・・・とこみ上げてくる怒りを抑えて陽菜は
「どうしたんですか?これは?」とコーヒーメーカーを指して聞いた。
「私の家で使っていないのがあったのよ、それを先生に話したら、たまにはインスタントじゃないのもいいなあと言ってくれて、ここに置かせてもらうようになったのよ、味も素晴らしいって喜んでもらってるわ、お客様にも好評だしね。陽菜ちゃんのもすぐ入れるわ」
パパもパパだわ、コーヒーの味なんかわかるはずないのに、こんな女にたぶらかされてと陽菜はますます不機嫌になってきた。
そこに瀬奈が帰ってきた。
「なんだ、来てたのか?」と瀬奈は言った。
「来てちゃ、悪いの?邪魔なの?」と陽菜
「なんだ?機嫌悪いなあ〜 なんかあったのか?」
「何にもないよ!ただ仕事の話があるから寄っただけ、話したらすぐ帰るよ!」
「ほう。どんな仕事だ?」と瀬奈が聞いたので陽菜は松田のおじいちゃんの事を話し始めた。
「この仕事って年金の裁定請求を代行すればお金になるんでしょう?」と聞いた。
「そりゃあ、そうだが、そのおじいさんには報酬は貰うことは伝えてあるんだろうな?うちは慈善事業じゃないんだぞ」
「もちろん伝えてあるわよ、私だって報酬欲しいからね」と言って陽菜は後悔し始めた。
ヤバイ!松田さんにも玲奈にも報酬をもらうなんて一言も言ってない。
一応玲奈には仕事を探しているとは伝えているけど・・・どうしよう・・・
「それとJコインの話はしているのか?」と畳み掛けて聞いてくる瀬奈
「も・もちろんよ、報酬は玲奈からもらうから」
「それでお前の取り分はいくらにするんだ?」
「え!どういう事?」
「当然、書類の作成や提出は社労士の俺がやる。手伝ってはもらうけどな、だけど仕事をとってきたのはお前だろう。お前には取り分を貰う権利がある。仕事っていうのはそういうものだ」
「ああ、そうね、じゃあいくらにしようかしら・・・」全然そんな事考えたことがなかった陽菜はプチパニックになった。
「俺はいつも10%を標準にしてるのは知ってるよな?あとは依頼人によって少し調整したりする。この辺も知っていると思うが・・・ さあ、どうする?」と瀬奈がヒントを出した。
陽菜は少し考えて
「じゃあ、私の取り分は5%でいいわ、あとはパパの取り分でどう?」
「いいだろう、それで決定だ。今回は俺は依頼人とは合わない。書類の受け渡しなどは陽菜がやるっていう条件でいいか?」
「いいわよ、それで私のお客様なんだから当然でしょ!」と言いながらも私でわかるかしら?知らないことを聞かれたらどうしよう?と不安でいっぱいの陽菜であった。
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