本日より芒種、歳時記によると二十四節気で、新暦の6月5日前後になる。イネ科の穀物を播くころということである。最初の十日間を七十二候では「蟷螂生まれる」という。
俳句では「蟷螂生まる」ば夏、それもこの頃の季語に蟷螂(かまきり)が孵化することから。
★蟷螂生る鉱泉宿が茶殻干す 皆川盤水
★ささやくは芒種の庭の番鳩 石原八束
蟷螂というと「蟷螂の斧」という言葉を思い出す。カマキリの前足のことであるが、「淮南子」に「弱い者が自分の力をわきまえず、強い相手に立ち向かうこと。身の程をわきまえない行動をすること。かまきりが前脚をあげて、斉せいの荘公が乗る大きな車に立ち向かった」という故事がある。「荘公」は「此れ人たらば必ず天下の勇武と為らん、といってカマキリを避けて車を動かさせた」という。
この蟷螂の姿を「淮南子」の中では、荘公の臣下は「身の程知らず」とし、荘公は「勇武」と評価した。
さて、どちらも処世訓としては成り立つだろう。どちらの立場に立つか、という一般論にはしたくない。
私ならばたとえ相手が強大で力の差が歴然としていても、尻尾を振ってなびくことはしない。どこか相手の弱点を探しながら、自分の位置をさぐる。強大であることを理由に擦り寄ったりはしない。逆に相手が弱小であっても、敬意を持って相対する。