今回は、長文の割に話題は小ネタになります。
ふと思ったことを綴ってみたいだけですので。

 

エコの観点からか、世間でペーバーレスが叫ばれるようになって久しいですよね。
最近じゃあ、ペーパーレスどころかキャッシュレスですけど。
業務で必要な資料をデジタル化することで、余計な紙の印刷を減らして森林伐採を減らす。とても良いことですよね。

 

そして、我々司法書士の業務の中でペーパーレスと言ったらまず思い浮かぶのが登記のオンライン申請です。
10数年前ですが、制度が始まった当初は、登記申請書だけでなく、委任状や契約書(登記原因証明情報)などすべての添付情報を電子化して作成権者が公的な電子署名をして送信しないといけないというすさまじい制度でした。
例えば、売買契約書であれば、PDFファイルにして売主買主が電子署名をしないといけないわけですが、制度ができて10数年たった今でさえ、PDFファイルに複数人が電子署名できるシステムをPCにインストールして活用している司法書士に私は会ったことがありません。
私文書でさえそうですから、相続登記での戸籍謄本とか公文書だったらどうするんだって話です。
なので、当時誰も使わないので、設備投資に掛かった国の予算をオンライン申請の登記件数で割ると1件当たり数千万円になるなんて噂も聞きました。
まあ、それでさすがに国も危機感を持ったんでしょう。数年後に「最大5千円登録免許税減額(現在は終了)」と抱き合わせに「特例方式」と呼ばれる登記申請書だけは申請人(又は申請代理人)が電子署名をして法務省のシステムに送信しないといけないけど、添付書類は3営業日以内に申請先の法務局に提出すれば良いという制度が作られ、現在でも不動産登記のオンライン申請はこの特例方式が主流と思われます。

 

使ってみればそれなりに便利な面もありまして、進捗状況の確認は「受付」「審査中」「手続終了」しかないので、審査中が長く続くと心配になりますけど、手続終了と同時にメールが来るので、遠方の場合などいちいち法務局に確認の電話をする必要はないですし、オンライン申請をさせるためにわざわざ不動産登記法を全面改正して、それまではどんな申請でも申請書提出するのに必ず法務局に出向かないといけないという「当事者出頭主義」という制度が採用されていたのですがこれがが廃止され、オンライン申請を使わない場合でも法務局に出向かず郵便で申請書を提出できるようになりました。
それに法務省に限らずオンラインでの官庁の手続は国が推進しているからでしょうね。今でも書面でしか申請しない司法書士には法務局の職員が個別に、オンライン申請を活用するように働きかけを行っているそうです。

 

では、ペーパーレスという点ではどうかというと、我々司法書士サイドの感覚ではあまりペーパーレスになっていないのではという気がします。
先ほども書いたとおり、添付書類はあくまで紙ベースですから全然変わりませんし、唯一申請書は電子データだけ作れば送信できますが、登記申請は1文字間違っていれば補正になったり、間違った状態で登記官のチェックをすり抜けて登記されてしまったりすると更正登記を申請しなければいけなくなりますから、私の場合は画面上の確認だけじゃなく下書きとしてプリントアウトして他の書類と照らし合わせながらチェックをします。
つまり、全部プリントアウトしているわけです。
あとはまあ、下書きレベルの書類は裏紙に印刷するくらいが関の山です。

 

でも、添付書類は仕方ないとしても申請書はオンラインで送っているわけだから、お役所(法務局)の書類は少しは減ってるのではと思えば、実は法務局は我々がオンラインで送った申請データを全部プリントアウトして保管してます。しかも、その申請データに施した電子署名に使った電子証明書のデータまで全部プリントアウトしています。
つまり、紙で申請するするより、オンラインで申請する方が法務局の保管する紙は多くなるはずなので、多分オンラインが進むことで法務局が保管する紙は増えるんじゃないかなと思います。

別に森林伐採を減らすだけがペーパーレスの目的じゃないでしょうから、「だからオンラインはだめだ」という話ではないんですが、少なくても「保管する書類が逆に増える」という点だけ見ても、もしお上の方で「オンラインで合理化できているから人員削減」なんて方向に話が進んでしまうと、お役所の職員の皆さんは気の毒だなと思ってしまいました。

 

 

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