梅田ベイブルース#4 | BOOGIEなイーブニング!

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んとか耐えた。


新幹線で隣のイケメンビジネスマンがこちらを向いて寝てしまい、仕方がなく同じ姿勢、同じ方向を向きながら、名古屋を過ぎ、京都を越えて新大阪駅に着いた。イケビジは京都ですっくと起きて、そそくさと下車準備をして新大阪で降りるようだった。


散々睡眠を邪魔されたので、よっぽどブカブカの彼氏の白いワイシャツを羽織って「おはよう♡」とかやってやろうかと思ったわ。

東京は小雨がパラついていたが、大阪はスカッと晴れていた。ここで俺の本日のミッションは一つ。晴れているうちに撮影対象であるショッピングセンターの全景を撮ること。


この任務は非公式である。


本番の撮影は、明朝730分に先方の担当者と会ってからスタートなのだが、梅雨の真っ最中なために明日の天気も定かではないから、前日のプライベートタイムから、こちらで勝手に撮影を始めるのだ。とにかく梅田だ。俺には時間がない。


と、その前に新大阪駅の改札を出てすぐに“みどりの窓口”に向かう。そう、会社の用意した翌日の帰りの切符は新大阪12:06東京14:33着だ。これだと、撮影終わってバタバタしてたら全然大阪観光など出来ないではないか!なので17時ごろ東京に着くような切符にチェンジマンしてもらおうという魂胆である。


窓口に着いて並んでいると、俺の担当は愛嬌のいいお姉さんだった。俺はチケットを見せて、指定席料金は別途払うから時間をズラせないかお願いした。


結果は、けんもほろろに“ノー”だった。俺の前に外人客が続いたため、彼女はちょっとオーバージェスチャーぎみに申し訳なさそうな顔をした。格安チケットなので、そんな融通は利かないらしいのだ。


がっくりとズゴックのようななで肩を落として、御堂筋線に向かった。こうなったらとっとと撮影を終わらして、今日は呑みまくってやる。だが、新大阪駅で御堂筋線を探して歩いている間に考えが変わった。


重い。

陸戦ガンダム的なリュックが

耐えられないほど重い。


シローアマダじゃあるまいし、灼熱の中目的地の梅田までこいつを担いで歩きたくない。例え無事に撮影が終わっても、梅田や難波とは逆方向のホテルに荷物を置きに戻らないといけないからだ。なので、道すがらの御堂筋線の手前にあるホテルに一旦荷物を置いて、なんならチェックインしてから、仕事の撮影地に向かうことにした。


ホテルは新大阪の次の西中島南方駅にある。


ホームに来た電車の行き先は「なかもず」と書いてあった。この終着地「なかもず」が、大阪のどこにあるのか、船橋ボーイの俺は皆目分からないが、語呂感がとても大阪っぽくて良き。



ホテルの場所は、西中島南方駅から徒歩5分なのだが、グーグルマップが真逆に真逆に案内するので、めちゃめちゃ歩いた。



知らない土地でのグーグルマップは危険だ。ころころとケムマキの忍術のように現在地が変わるから、自分の位置を完全に見失う。俺は忍者ゴッコしに大阪まできてるんじゃねぇ。


その日大阪は真夏日だった。


背中はリュックの熱でびっしょり、しかし、ほんの3時間前の東京は肌寒かった。ニッポンの東と西ではこんなにも気温が違うのかと痛感した。若干フラつきながら今宵お世話になるホテルのフロントに行き、オールバックのヤサグレ中年ホテルマンからキーを受け取り、15時ちょい過ぎにチェックインした。何となくボロいホテルだが、どーせ正味5時間くらいしか滞在しないだろう。荷物を整理して、小さいDOMKEのカメラバッグにSONYα735mm単焦点、24-70mmのズームレンズとバッテリーだけ持って出かけた。部屋の鍵をかけた後、くそポエムの詩集を入れるのを忘れ、また部屋に入って詩集をカメラバッグに入れてから出かけた。


この詩集がこの後大事なんよ。


ヤサグレフロントにキーを預け、俺は颯爽と西中島南方駅に戻った。悔しいことにあれだけ迷ったホテルは、 駅からめっちゃ近かった。ここからまた御堂筋線に乗って梅田駅まで2駅。淀川を渡ればすぐに着く。


しかし、早くしないと日が暮れてしまう。せっかく前日から現地入りしているので、なるべく明るいうちにショッピングセンターの全景を撮っておきたい。


御堂筋線は西中から少しの区間を自動車道と平行に走る。ちょいちょい車に抜かされている。車内で足踏みしている間に梅田駅に到着した。しかし、地下からの出方が分からない。どこの出口を出ていいやら検討もつかない。


なんや梅田はいつのまにか

ドルアーガの塔みたいに

なっとるやないけ。


13年ぶり3度目の梅田、ちょっと大阪の土地勘には自信があったのだが、その自信は音を立てて崩れていた。


とりあえず目についたエスカレーターに乗った。梅田駅のエスカレーターは立ち止まって乗る時は、東京とは反対側、見事に右が歩かない人用のレーンだった。さっきの新大阪駅では関東人も混ざっているので、これが徹底されておらず、無法地帯だったが、梅田まで来るとちゃんと浪花のルールが行き渡っていた。俺も右側に立ち生粋の関西人を装ったでほんまに。


実は俺の関西人のイメージは、コミックボンボンのプラモ狂四郎に出てくる浪花の天才モデラー、天満三兄弟からバージョンアップしていない。


そのぐらい強烈なキャラクターだったのだ。確か天満兄弟の実家は、大阪城近くのお好み焼き屋だったはず。


まぁいいか。


とりあえず、そのショッピングセンターを探している。13年前にもあった駅前にある観覧車を目印に歩いているのだが、目的地が掴めない。




グルグルと歩いてやっと目的地のショッピングセンターを見つけた。後から確認すると御堂筋線の梅田駅は目的地の逆サイドにあった。


陽も傾きかけていたが、青空だったのでとりあえずシャッターを切る。しかし、思った以上に建物の周りを電線が張り巡らされている。それでも正面や横を念入りに撮っていると、元阪神の阪神 小林繁投手に似た警備員さんに笑顔でチェックを受けた。


許可なく撮影できませんのよ。


関西弁のイントネーションでフレンドリーに注意を受けた。打ち合わせは明日の早朝だし、今日は日曜日なので混雑している。迷惑をかけてしまうので担当者の名前は出せない。もじもじしていると、いつのまにか警備員さんが集まってきて、囲まれてしまった。つっても3人な。


俺は最初に話しかけてきた警備員さんに自分の名前と担当者の名前キダさんを告げた。しかし、今日の俺は仕事ではなくオフで来ているので、呼ぶのは堪忍してくれとも。


しかし、警備員さんは人懐っこい笑顔で「ええですやん、ええですやん。キダさんに会うたらええですやん」と無線で繋いでしまった。


それから5分ほどして

小走りにキダさんが来た。


前情報によりキダさんの年齢は、30代前後というのは聞いていたが、顔は大泉洋、喋り方は小藪にそっくりだった。


どうも、どうも。

お早いお着きで。


僕らが同伴しないと外観の撮影もオフィシャルにはダメなんですわ。


俺は申し訳なくて、ぺこぺこと頭を下げた。しかし、キダさんは初対面なのに、まったくそんなのを感じさせない人懐っこいキャラだった。


軽く世間話をしてから、明日の打ち合わせをした。


ほな、明日の730分によろしくお願いします。僕は720分に来てると思いますけど、寝坊しちゃうかもしれません。


そう小藪風に言うとキダさんは、また小走りに帰っていった。正面エントランスには、おそらくキダさんの先輩やら上司やら警備員さんやらと10人ぐらいスクランブルしていた。よほど刺激が欲しいのか、それとも来客が珍しいのか、遠くからこちらを見て談笑していた。


でも、会って良かった。

一気に明日の緊張が薄らいだ。


さて、イッツショータイム!

いよいよ自由時間だ!


つづく