新☆ババコ戦記3 | BOOGIEなイーブニング!

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い犬になりさがったのか。


 キルティングのトイレットロールカバーを見ながら、俺は自問自答を繰り返していた。この近所のオバちゃんが自作したトイレットロールカバーを使うがあまり、俺は大事な何かを失ってはいないか。


牙だ。

あの時、確かに持っていた、

野生の牙を失っていた。



健康診断当日の朝、スヌーズ機能との30分に渡る死闘を終え、オレは朝6時に目が覚めた。


緊張の2回目の検便だ。

しかし、またナガセールをセットし、ウンコをしようとしてオシッコが先に出てしまった。


オー!ファッキンシット!


今度も慌ててゼロコンマでオシッコを止めて、ナガセールを取り出して、再びオシッコをしてから、またナガセールをセットし直した。なぜこうもウンコする直前、反射的にオシッコが出るのだ…。


俺は森村ハニーか!


結局慣れることなく2度目のケンベーンを終えた。こんなにマジマジとウンコを見つめ、棒でつつくなんて小学生ぶりかもしれない。当分カレーは食えないだろう。検便のケースに日付を入れたが、水性マジックで書いてしまって滲んでいる。まぁ、ギリ読める範疇だ。


検便調査員よ、

マジマジと見るがいい。


県道沿いにあるおっかさん弁当のようにほっかほかの検便容器をカバンに入れて、俺は家を出た。いつもより1時間も早いので電車は激混みだった。俺は満員電車に乗るとお腹を壊すのだが、そんなプレッシャーよりも健康診断というプレッシャーの方が打ち勝ち、ポンポンは痛くならなかった。

予約時間より20分ほど早く病院に着いた。

雑居ビルの2階ワンフロアを使った、ほぼ健康診断専用の病院だ。そこの薄暗い階段を上がり、古くさいアルミフレームのガラス扉を開けると、右手に受付がある。俺は青色の封筒をその受付の女性に手渡し、呼ばれるまで待つように指示を受けた。

診察時間より随分と前なのにすでに5、6人が待合室の椅子に座って待っていた。

その中に飛びきり美しい女性がいた。横顔の整い方が素晴らしく、長く美しい髪を後ろに束ね、背筋はピンと張って非常に姿勢が良かった。服装も黒いワンピースと実にシンプルで何より彼女に似合っていた。恐らく銀座の高級ブランドの店員だろう。お水の品のなさはカケラもない。どこか知的で美術館の学芸員ですと言われたら信じてしまうだろう。そんな彼女も俺と同じタイミングで検便をして、その容器をあの封筒に入れたのかと思うと興奮してくる。別にウンコ趣味はないが、あの横顔の美しい彼女が、自分のウンコをスティックでこねくり回したのかと想像しただけだ。


な、興奮するだろ?


10分ほど彼女の妄想に耽っていると、受付の女性に呼び出された。

恐らく受付の女性は、毎日何百件もの人数の利用者を捌いているに違いない。人生初の診断チェリボの俺に畳み掛けるように診断の手順を話し出した。恐らく毎年来ても3年目にやっと理解できるような話の難易度だった。

最後に彼女は検尿用の紙コップをパコンとカウンターに叩きつけ、トイレに行ってこいという素振りで話を終わらせた。

俺は愕然とした。まさか検尿から始まるとは健康診断チェリボな俺は知らなかったのである。さらにこの病院のトイレがどこにあるかなど全く分からない。ドトールのトイレを探してスタッフルームに入ろうとする男だが、不自然な動きもせずになんとか見つけられた。なんと病院の扉を出た共有スペースにあった。ワンフロア貸し切りとはいえ、一度病院を出て共有トイレ風の病院のトイレで検尿するとこに違和感を覚えたが、仕方がなく1個しかない(大)用の個室に入り、便座を上げ服をたくし上げて、紙コップ向かって小便小僧のように放尿した。

尿はすぐにコップ満タン付近まで到達し、急いでブレーキングした。そんなに器用にピタ止まり出来ないので、若干のタイムラグがある。溢れそうな尿を少し便器に戻しながら、放尿を再開した。

なみなみと注いだ紙コップを持って(大)用の便所から出ると、おっさんが普通に(小)用の便器でおしっこをちんこから紙コップに注いでた。今世紀最も寂しい後ろ姿であるが、よく(小)用の便器でこの作業ができるなといたく感動した次第である。トイレを出るとワゴンの上におしっこの紙コップを置くのだが、5つほど並んだおしっこの中で、どう贔屓目に見ても俺のおしっこの色だけ異様に濃い。


オリオンビールとブラウンマイスターぐらいの色の濃さの違いである。


恥ずかしい。


あまりの恥ずかしさに水で薄めて来ようかと思ったが、これによって変な診察結果になるほうが怖い。大人しく薄いおしっこ達の隣に置いて病院の待合室に戻った。


つづく