中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

冷たい雨

 火曜日、上海は雨、気温は丸一日 11〜12度。どんどん寒くなる。

 朝 7時、目覚ましの音で目覚める。最近どうも眠くて仕方ない。最近天気が悪いので気圧は低いし、何より朝『部屋の中が暗い』というのと、寒くなると布団の中が暖かいから、キモチ良くて起きられないのだ。
 そしてイツモのバタバタの朝のルーチンをこなして、自転車と地下鉄と路面電車で長距離通勤。

 最近通勤中に聴く曲が無くなってきたので、適当に Apple Musicの画面を弄ってたら、なんか自分のライブラリから AIが勝手に選んだリコメンド?画面に、昨年 SSA(埼玉スーパーアリーナ)で行われた Wake Up,Girls!の解散コンサートが出てきたので、DLして久々にジックリと聴いてみた。サブスクのストリーミングサービスはこういう事ができるから良いね。

 ちょっと縁あって数年前に彼女たちの上海公演をサポートしたので、声を聴いてるだけで誰がソロ取ってるかメンバーの顔が直ぐに出てくる。懐かしい!

 当時はステージ後方の大型 LEDスクリーンに表示するビデオ映像の『叩き』担当で、楽曲と映像とのシンクロを、曲中に『手動で』調整する…という大役を担っていたのだ。

 卓から送られてくるクリック信号(メンバーがイヤモニで聴いているのと同じ音)を聴きながらタイミング良く映像をスタートさせなければならない。ご周知の通り Macや PCは映像スタートのキーを叩いても、そこからファイルがロードされて映像スタートするので、高解像度の巨大ファイルだと必ず 数十ミリSec.のディレイが発生するから『肌感覚で』若干『早めに』叩かなければならないワケさ。
 故にタイミング良く映像を出すためには何度も練習しなければならないので、本番前の一週間くらい毎日死ぬほど練習したのだ(苦笑)
 もちろん、映像をスタートしてもフレーム単位で同期してるワケじゃ無いので、曲中での微調整は必要なワケで、密閉型のヘッドフォンを被り『左耳に卓からのクリック付き本番の音声』、『右耳にはビデオに入ってるオリジナル音声』を同時に聴きながらシンクポイントを探る…という地味に大変な作業を本番中にずっと行わなければならない。今思えば良い思い出だ。お陰様で当時演った曲はスッカリ思えてしまった。

 「こ〜んな面倒な事しないで SMPTEで同期すりゃ良いじゃん!」とか当初は思っていたが、『万一何がトラブってシンクが外れた時に、どうやってもリカバー出来ないなら、人が管理した方が良い』…という考えに基づいて、彼女らのツアーでは全て『手動で』行っているらしい。

 でもそれは当日のリハをやってみて激しく納得する事となる。

 まず、マニピュレーターさんのバックアップ機への切り替えのタイミングである。何か機材がトラブった際に、音響機器としては 2台の Macにそれぞれ繋がった Audio I/F(8chのステムデータ)を JamSyncをかけた LTCで同期していたので、メイン機がマスターとなりバックアップ機とのシンクロを担保していたので、演者もリスナーも切り替わりに全く気付かないほどシームレスにバックアップ機に切り替え可能だが、残念ながらメイン機が止まった時点でタイムコードは 100%止まるからだ。単純に止まるだけなら良いが、SMPTEタイムコードは要は音声情報なので『bit欠け』が発生すると『化ける』事があるため、全く関係ないタイミングの映像を流し始める可能性もあるワケさ。コレはシャレにならないから非常に怖い。

 それなら、タイムコードジェネレーターをマスターにして全てをスレーブで動かせば良い…という考え方も可能だが、そうなるとジェネレーターが死んだら映像どころか楽曲も何もかも全てが止まってしまうし2度と復帰できない…という恐ろしさが有る。いやはや難しい。

 それに彼女らの場合、タイムコードでは管理しきれない様な最終調整が当日のリハで行われたりするのだ。彼女らはリハでもフルコーラスをマルっと全楽曲通して確認して、その会場に合った演出を細かく時間をかけて組み立てていた(ホント脱帽である。日本のプロってほんと凄い。こういった目に見えない努力はショーの一体感として現れるんだよなぁ)
 そんなワケで、ステージを喋りながら歩いて移動する時間を鑑みて、それまで『ループ』のリズムを鳴らしていて、舞台上の立ち位置を確認してタイミング良く(小節の頭で)『本チャンのシーケンス』に瞬間的に手動で切り替える…という様な演出まであったのだ。トークの内容や客のウケによってこの部分の長さは変わるわけだ。SMPTEは同期に数秒かかるから、実際こういう演出には不向きである。
 マニピュレーターさんの負担は相当高いし、2台の音響機器の同期だけで手一杯なのに、一番キモとなるタイムコードの管理まで任せるのは無理がある(事故る可能性が高くなる)からね。そんなワケで映像は手動でやっているらしい。なるほど…全ての施策にはそれぞれ理由があるワケさ。さすがだ。ホント勉強になった。

 でも、苦労の甲斐あって、本番で映像と彼女らのショーが完全にシンクロした時の感動は今も忘れない。最高の達成感である。スタッフ全員でショーを作ってる『ドライブ感』は半端無かった。あんな高揚感は後にも先にもあの PJだけかもしれない。

 いやぁ…曲を聴きながら色々と走馬灯の様に思い出した。メンバーをはじめ、舞台、照明、音響、周りのスタッフ全員の苦労が手に取る様に判るから、なんだか涙が出てきそうになった。
 しかも相変わらずホント良い曲ばかりで感動。別に少しだけ関係者だから…というのでは無く、ホントにWUGは『ココロ』に響く良い曲が多いと思う。これらアニソンの枠で括られちゃうのは勿体ないよホント。解散しちゃったのが残念で仕方ない。まぁ裏事情を少し知ってるから解散理由的には『仕方ない』部分も何となく分かるけど、こういうキセキは中々起きないからね…実に残念。

 さて、関係ない話が長くなった。今日も今日とてデスクワークが中心。全く写真ネタを取らずにあっという間に一日経ってしまった。なので夕食に社食に行った際に地面に埋め込んである LEDライトから立っていた湯気をば(写真じゃ見えないケド / 笑)寒い寒い。

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 結局 21時過ぎに会社を出て、家に到着したのは23時前。雨は小降りでほぼ霧雨状態だったので傘も差さずにチャリンコ激走。
f:id:hayap24bit:20201125102842j:image 帰宅後は、今日は休肝日にして一滴も飲まずに早めの就寝。
 嗚呼…一日があっという間だ。

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