今日は治療における感覚的な部分を言葉にしてみました。
最近ですね、打鍼術(だしんじゅつ)に使う木槌を持ちかえてみました。
打鍼術というのは、主に腹部に行う鍼治療でして、刺さない鍼です。
先の丸い、そして太い、鉄やステンレスなどでできた棒を木槌でコンコンと叩いて行うんですね。
刺す鍼とはまた違った味わいのある鍼術でして、刺さないので小さなお子さんや刺激に敏感な方にも安心して受けて頂けます。
その打鍼術に使う木槌の素材を変えてみましたとさというお話しです。
時々変えてはいたのですが、ここ数年は「くるみの木」でできたものを使っていました。
かなり使い込みました。
くるみの木は軽くて軟らかいんですね。
なので、コンと打ちつけた時に木槌の側で衝撃を結構吸収することになります。
打鍼というのは衝撃波のようなイメージで行うことが多く、コンと打ちつけた所からその周囲に波が拡がっていくようにして、邪を散らし、気を動かすんです。
私はそんなイメージを持っています。
そして今回使い始めた木槌の素材が「オノオレカンバ」という木です。
私の兄弟子である、おおくにたま鍼灸院院長の三上 創先生のお父さんから、昔頂戴したものです。
おとっつぁんの心がこもった手作りです。
この木は標高500メートル以上の高いところにしか生えず、密度が高くて重く、硬いんです。
オノオレ(斧折れ)というくらいですからね。
つまりさっきのくるみとは対照的で、コンと打ちつけた時に、木槌の側で衝撃を吸収しないんですね。
どちらが良いとか悪いということではありません。
その特性を知った上で適切に使えていればいいんです。
とは言っても今まで使っていたのとは対照的ですから、その感覚の違いには驚きますよね。
オノオレカンバの木槌は過去にも一時期使っていたのですが、上手く扱えきれずに、いろんな素材を試しつつくるみにいきついていました。
木槌の側で衝撃を吸収しないとなると、同じ強さでコンと叩いた場合の衝撃波の起こり方、そのスピードがまるっきり違ってきます。
今回改めてオノオレカンバを使ってみた感想は、「打つ強さや回数、鍼の当て方さえ適切にできれば、こっちの方が邪の捌きが早くできる」っていう感じです。
体表に起こる変化が速いんです。
ということは、くるみのような軟らかい素材の物の方が、変化が緩やかなので時間をかけて打鍼術を行うことになりますから、患者さんサイドで言えば、より敏感な方であるとか、あまり速い変化を起こさない方が良い方に対してより適切な素材であると。
施術者サイドから見れば、軟らかい素材の方が患者さんの体表の変化が小さく緩やかですから、より初心者向きで、ここから丁寧に小さな変化を拾っていく感覚と根気を養うところから始めた方が良いというのが今の見解です。
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