久々にマンガについて書いてみたい。最近読んでいるマンガで特に面白いもの、次の展開が待ち遠しいものをいくつか挙げてみる。

 

 

 

 

新川直司「さよなら私のクラマー」既刊12巻、月刊少年マガジン連載。「四月は君の嘘」の新川直司の最新作も、もう連載丸4年を超えた。高校女子サッカーが舞台だが、才能のある3人の女子を中心に、無名校が強豪校に立ち向かっていく。ついにテストマッチとはいえインターハイ優勝校に肉薄するところまで行き、選手たちの情熱が一度は消えたかに見えたグータラ監督のサッカーへの情熱に再び火をつけ、新たな戦術で再チャレンジする。

 

クラマーとは日本サッカーの父と言われたサッカー指導者で、ドイツ人のデットマール・クラマーのことを指しているのだろう。だから作中ではグータラ監督である深津吾郎のことを指しているのだと思うが、今書いてみて日本のサッカーを冬の時代からJリーグに代表される花形スポーツに押し上げた夢よもう一度、みたいなことも示唆しているのかなと思う。作中、「女子サッカーの未来」という言葉が何度も出てきて、必然的にそのことについて考えさせられる。

 

主人公と言えるのは「さよならフットボール」でも主役だった恩田希だと思うが、彼女は中学では女子サッカー部でなく男子サッカー部で男子と対等に渡り合うもフィジカルで及ばない、という悔しさを味わっている。そして才能はあるが突出しすぎて周りに理解されなかった周防すみれ、掛け値なしの中学時代から全国3位をとった実力のあるボランチだった曽志崎緑を加え、様々な少女たちがいろいろな思いの中、サッカーに打ち込んでいく。

 

恩田は世界のトッププレイヤーしかできないようなすごい足元の技術を持っていて、ただ周りが見えてないのでそこにつけ込まれやすい。ガサツと言われている。周防は無口で理解されにくい少女で、インシツとかブアイソとか呼ばれている。曽志崎は重度のオタクで麻呂眉なので、マロ眉とかオタク眉毛とか言われている。それぞれのキャラ付けもはっきりしていてその辺もある意味お約束の面白さもある。

 

また、ギャグの入れ方が独特だしその際のデフォルメも癖があり、ツッコミも直ちには意味がわからないことも往々にしてあって、この辺は「四月は君の嘘」の頃からそうだったのだが、その辺も慣れてくると病みつきになる味わいがある。

 

今の漫画にしては珍しく、大勢の少女たちが出てくるのにほとんど胸は強調されてない、というかほとんど真っ平に描かれているのは一つの特徴だと思う。萌えをそこに求めていないといえばいいのか。妄言ばかり吐き確かにガサツなのに十分彼女たちは可愛く描かれていて、ある意味流行へのアンチテーゼを感じさせられる。

 

好きなキャラは何人もいるが、特に好きなのは越前佐和だろうか。もともとマネージャーみたいに恩田にひっついていたという感じだったのが、彼女らの情熱に当てられて自分もフィールドに立ちたいと思うようになり、下手は下手なりに運動能力を生かしてエースに対するディフェンスに起用される。自分を落ち着かせるのに「南浦和 蕨 西川口 川口」と京浜東北線の駅名を頭の中で唱えたり、「武蔵浦和 北戸田 戸田」と埼京線の駅名を唱えたりするのもいい。遠慮して人が言えないことをドーンと言ってしまう天然なところも可笑しい。

 

いくつか、と書いてみたがこの一本の感想で十分時間がかかってしまったのでとりあえず他の作品は次回に。「さよなら私のクラマー」、テレビと映画でWアニメ化とのこと。めでたい。