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定年退職してしまいましたが、再任用でまだまだ老後の蓄えをしなくてはなりません。それでも悔いのない人生にしたいと思います。

高所枝打ちナタづくり(No3:焼き入れ編)

2019年02月14日 21時38分26秒 | Weblog

2019年2月10日

さて、いよいよチャンス到来
休日というのに朝早くから駐車場でコソコソと動き出し、必要な機材・材料を出しました。
いつもと違うのは、焼き入れの水桶。
55cmもの刀身を沈めるため、園芸用土を混ぜる容器に水を溜めました。
今回は長モノ全刀身を焼かねばならないので、耐火煉瓦も並びを変えて、60cmの竈床にしました。



炭は、消し炭と火力も長持ちする竹炭も使うことにしました。



おや~
何にでも興味津々のトラ君が、焼き入れの水桶に沈めた刃物に興味を持っています。
『ニャンだこりゃ長いウナギでも入れたのか美味いのかな冷たい水だニャン
と指を目いっぱい広げて水面を触っています
波紋が(((())))) カワ(・∀・)イイ!!



さて、竈に火を入れました。
着火しやすい消し炭を熾したら、硬い竹炭を熾しさらに温度を上げます。
普通のバーべキーで熾した木炭は800℃ほどですが、鞴:フイゴ(ブロワーを使用)で酸素を加給すると1,200℃まで上げることが出来ます。
また、炭の種類により温度の上りにも差があり、松炭の消し炭は短時間に燃焼する代わりに、温度は松炭が一番高く、1200℃を得ることが出来ると勉強してました。
でも、焼き入れには適温というのもあって、焼き入れ温度は低すぎれば十分な強度が得られず、高過ぎれば結晶粒が粗大化して靭性を低下させると言われていますので、難しいです。



理想の松炭ではありませんが、消し炭と竹炭でやっています。
ブロワーを吹かしてどんなに真っ赤に焼いても、
鉄の融点は1,535℃なので、溶け出すことはありません。
ヤットコで掴んで、オキに埋めたり出したり、裏表返したりしてまんべんなく焼きます。

炎の中では、炭の炭素が鉄に入ったり出たりの世界が繰り返されているはずです。
観ているのは、刀身の色ですが、昼間は分かりにくいものです。
この鋼材の質がわかりませんが、焼き入れ適温の標準温度900~1,000℃を目標に、白っぽく燃焼している部分を1,200℃と見越して、刀身の色がそれより低く赤い(赤オレンジ色)ならば、焼き入れ時と判断しています




炭は燃焼してエネルギーを出すたびに灰になり、熾きが減っていきますので、何度も炭を追加しています。
また、焼き入れの水についてもウンチクがあり、鉄を収縮させるための水が冷たすぎる水につけると、刃自体にヒビが入ってしまうし、温度が高いと、硬度が得られない性質があります。
適切な温度は7~13℃とされていますので、冬の水道水でOKとしました。
いよいよです。
もう焼けた!』と思う自己判断でヤットコで掴んで水桶に投入
『ジュワーッ、シュー、ジュブジュブジュブシュー!』長モノなので、湯気も大量に巻き上がり、カメラが曇りました。





ところで、そもそも『焼き入れ』の科学的解説ですが。
鉄(鋼)を焼いて高温にしていくと、金属構造は鍛造時の状態 オーステナイト に組成が変化します。
結合が緩むおかげで、叩けば変形できる訳です。
これを水や油で急激に冷やすと、鉄は炭素強制固溶した組織となり、(マルテンサイト変態)と呼ばれる、非常に硬い性質に変化します。
焼き入れがうまく出来ていないのは、不完全焼入れ、甘焼き と言われます。
さあ
、今回はうまく マルテンサイト変態 になっているでしょうか

おや
水から取り上げると、せっかく焼き入れしたのに、また熾き(灰)に差し込みました。
これは『焼き戻し』です。
焼き戻しとは、金属に粘り(靭性:ジンセイ)を与える処理で、150~250℃で行う 低温焼戻し と、400~680 ℃で行う 高温焼戻し がありますが、温度計も持ちませんので、低温はかえって難しく、弱火の熾き500℃位での高温焼戻しをしました。




前回のブログで紹介した、柄を取り付けて、見上げたり、振ったりして、一人ニタリ顔です。
だんだん完成に近づいています。



でも、焼き入れ後の問題の、歪ヒズミがやはり発生しています。

水に入れる時もウンチクがあり、焼入冷却速度は、速いほうが変形が大きくなる欠点があります。
対策としては、階段焼入れ、中断焼入れなどがあるそうで、段階的にやったつもりですが曲がりました。

峰から目通しすると、左に曲がっています。



反省点として、水に入れる時に、刃先から先に入れたものの、左に傾いて横っ腹の鎬(シノギ)が先に急冷したからそちらが多く縮み左に曲がった・・・と結論付けました。
右利きでヤットコを持ち水に入れると、自然と内側(反時計回り)に腕が回転しやすい癖がこんなところに出ました。




鍛造段階でも、まっすぐにする矯正をしましたが、焼き入れをした刀身の歪取りは全然違う反応があります。
硬いバネを叩いている感じで、『ビーンビーン』と跳ね返りが強く、なかなかまっすぐに出来ません。



何度も目通ししながら、しつこく叩いているとだんだんとまっすぐになってきました。
『もう、これで良いかな でも、もう一打ち』と叩いた時です。
『キャーン』という甲高い音とともに、眼下でポッキリと折れているではありませんか
しばらくは呆然と、2つに分かれた刃を眺めていました。
『あ~あ~クッソー』です。
(覆水盆に返らず、折れ刃元に戻らず)です。




断面の構造をを眺めてみましたが、中央の打点部分が違っていますが、金属組成の良し悪しは分かりません。
きっと、焼き戻し不足による靭性の無さと結論付けました。




落胆から這い上がれず、気休め的に柄に取り付けてみました。
『本当は、1本の長モノだったのに・・・クソーッ




さて、ブルーな気が晴れることもなく、次回があるかどうかも分からないけど、いつものように消し炭づくりです。
まだ熱い炭を掬って~



バケツの水に投入し、一気に消します。



昔使っていたバーベキューのコンロが水切り兼、乾燥容器です。



折れた中子の付いた刀身部分ですが、普通のナタのサイズがあり、これを生かすことで気を取り直すことにしました。
刀身に柄を取り付ける作業です。
市販のカマやナタでは一般的に、止めピンが使われますが、真鍮棒貫通で固定します。

中子を柄に突っ込み、口金をはめ、6mmのドリルで穿孔しますが、いきなり6mmではなく、最初は3mmで誘導の穴を開けて、6mmを通すのが無難です。




焼き入れ後の金属は本当に硬くなっていて、なかなか貫通できません。



熱を持った金属の削り屑と、木の芳香と共にやっと貫通しました。



6mmの真鍮棒を叩き込み、金切りノコで(柄幅+8mm)位の長さで切断します。



両サイド、3~4mm出るように調整します。



金槌で、リベット的に、両方の頭を叩いて丸めます。



まあまあ上手に丸まりました。
びくともしませんし、絶対に抜けません。




まだ、後悔の念が吹っ切れていませんが、中研ぎにかかりました。
鍛造後と違い、硬い刃に変わったのが分かります。
峰側の黒いところは《黒さび》なので研がず、刃先だけを研ぎました。


鉄につく錆には、大きく分けて黒錆(くろさび)と赤錆(あかさび)があります。
赤錆は化学式Fe2O3で酸化第二鉄、錆が赤く、鉄そのものをボロボロに腐食させます。
一方、黒錆は化学式Fe3O4で焼くことにより酸素が1つ多く付いた四酸化三鉄で、自然に発生することはなく、鉄の表面にできる黒い酸化膜です。黒錆ができると、赤錆の発生を抑えることができるため良性の錆といわれます。



切れる刃が付いたところで、仕上げ研ぎです。



仕上げ研ぎを終え、鏡面的になりました。
[まだ、刃が光ってないじゃないか]と言われそうですが、灰が沸騰して冷え固まった跡が波紋の様に残りました。
僕にとっては、(景色)に見えますので、残しました。
窯業の世界では、灰が解ける温度は、1,300度と言われていますが、1,250度でも時間次第では溶け出すということなので、ブロワーでもそのくらいの高温を得た証拠にもなります。



下のアゴ部分の黒っぽい影には、顔が映っています。



なかなか晴れ晴れとしない気分での、1本目の完成です。
長モノを想定して作った柄も、高所使用を想定して短く切ることなくそのまま使いました。




今回の失敗の反省点
①灰が熔けている現象から、1,300度近くの高温のため結晶粒が粗大化して靭性を低下させた。
②焼き入れの時、刃先から峰にかけて垂直に沈ませなければならないところを、腕が内側に回転し、横っ腹の鎬(シノギ)が先に急冷し曲がってしまった。
③焼き戻しでは500℃位での高温焼戻しをしたつもりだが、十分出来ておらず脆い刀身となった
次は上記の点に気を付けで、もっと上手になりたいと思います。


次回ブログは、気を取り直して作った2作品の紹介予定です。


No1:鍛造編

No2:柄づくり編

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