4人組UKロックバンド"ザ・リバティーンズ "(The Libertines)の4枚目のアルバム『All Quiet On The Eastern Esplanade』をレビューします。
【収録曲】 1 Run Run Run 2 Mustang 3 I Have a Friend 4 Merry Old England 5 Man with the Melody 6 Oh SHT 7 Night of the Hunter 8 Baron's Claw 9 Shiver 10 Be Young 11 Songs They Never Play on the Radio
アルバムタイトルは、ベストセラーを映画化し、1930年に公開された(最近もリメイクされた)『西部戦線異状なし(ALL QUIET ON THE WESTERN FRONT)』をもじったと思われる。「Esplanade」は遊歩道という意味であり、オフィシャルな邦題は『東部遊歩道異常なし』だ。参照元の『西部戦線異状なし』とあわせて考えると、人をくったようなタイトルにすでに彼らの個性がある。
まずは、リバティーンズの総論を。リバティーンズで僕が最推しするのが、彼らのデビューアルバム『リバティーンズ宣言 (Up The Bracket)』だ。
「Death on the Stairs」
とにもかくにも、この 『Up The Bracket』の「Death on the Stairs」を聴いてほしい。二人のギターボーカル、ピート・ドハーティとカール・バラーの親密と反発が一体となったような関係性と、競い合うような場の掌握力が本当にスリリング! ロシアの女性二人組のユニット「タトゥー」の二人のような親密ぶりがリバティーンズの音の魅力に表れていて、自分はゲイではないけどすごく萌える(燃える)。
だが、リバティーンズの音はエレガンスよりもバンド演奏をそのまま真空パックしたような空気感を重視したように聴こえる。だから、彼らの音源は一枚目のアルバムの『リバティーンズ宣言 (Up The Bracket)』が一番良い。無軌道な青春と乱暴な初期衝動が余すところなく真空パックされているのだ。二枚目と三枚目も悪くはないのだが、一枚目の衝撃からはほど遠い。
さて、本作をみていこう。
本作は収録曲#7「Night Of The Hunter」に顕著なようにイマドキのバンド(The 1975)のようなエレガンスも感じる。クラシック(たとえばラヴェル「ボレロ」やドヴォルザーク「新世界より」)のようなフレーバーさえ感じる。アルバム全体がパブロックからAORになったような感触なのだ。まあ、AORと呼ぶには少し荒っぽいサウンドだけど。