マカロニえんぴつ『hope』感想&レビュー(【キャッチーの極致】2ndアルバム) | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。



●驚くほどキャッチー!

メンバー全員が音大出身の4人組バンドによる2ndアルバム。

一曲目の「レモンパイ」からエンジンはフルボリューム。鍵盤の音がレモンパイのように甘く、正統派ロックの美味しいところを全て掻っ攫ったような音で、君に触れるか触れないかギリギリのところを突いてくる。

続く「遠心」もすこぶるキャッチーで、以降に期待を持たせてくれる。一曲目にもこの曲にも感じることだが、マカロニえんぴつは男女の微妙な距離感を描くのが上手い。

#3「ボーイズ・ミーツ・ワールド」も脂の乗ったギターロックで、前二曲の勢いを削ぐことが全くない。「死ぬ前にもっとちゃんと生きたいんだ」という歌詞の言葉通りの全力の生のロックンロールを鳴らす。

#4「ブルーベリー・ナイツ」に至っては、脂が乗りすぎて嬉しくなる出来栄え。夜の神秘性とキャッチーとポップを混ぜたらこうなるだろうなという塩梅で、最高にクール!

#5「hope」では、鍵盤の美味しいところを弾き連ねた後、その横でギターが華々しく鳴る。こういうミッドチューンでは、マカロニえんぴつの得意とする音楽性が活き切っていて頼もしい。

#6「この度の恥は掻き捨て」では変化球を投げてくる。こんなにトリッキーな歌を歌えるのは、マカロニえんぴつの音楽的語彙が豊富だからだろう。

その後も#7「Supernova」でポップでキャッチーのお手本のようなギターロックを披露する。足掻きながら正しさを求める姿が僕には誠実に映る。

#8「愛のレンタル」は、R&B風味のエネルギッシュな気迫のこもった曲だ。私立恵比寿中学に提供したナンバーのセルフカバーであり、本家に負けない勢いを聴かせてくれる。

#9「嘘なき」は弾き語りに近い形でしっとりと聴かせてくれる。アコースティックだからこそ、ボーカルの男らしい優しさぶりを堪能できる。

#10「Mr.ウォーター」はセクションごとに楽器の展開が異なり、面白い。「私は優しいので思いやりも相当強いので席譲ります」なんて登場人物を登場させるのは、マカロニえんぴつの人物描写がユーモラスで巧みだからこそ、なせるワザだろう。

#11「たしかなことは」は、優しい落ち着いた響きのギターが真心を伝えてくれる。

#12「恋人ごっこ」にはビートルズ的ポップアティチュードを感じた。大サビでこのアルバム一番の盛り上がりを見せる。

#13「ヤングアダルト」は僕が去年最もハマった曲。「ハロー、絶望」という歌詞には、最初は絶望という言葉をこんな簡単に歌詞にしちゃって何だかなぁという違和感も最初は覚えていた。だが、「誰も知らない優しい言葉で/あの子の孤独を殺せてたらな」という歌詞も相まって、この分かりやすさが分かりやすく自分の"絶望"にクリーンヒットした。

メロディが流れるような完璧な流れでポップでキャッチー。そのメロディに流されるまま、もうヤングアダルトという歳でもない自分にも、絶望を相殺するような明るいフィーリングがこの曲を聴いて産まれたのでした。

#14「青春と一瞬」はストリングスと共に壮麗に聴かせてくれる。アルバムの締めくくりにふさわしい爽やかで切ない終末感の漂う曲だ。

もしあなたが活きの良い邦楽ロックを求めるならば、マカロニえんぴつをオススメする。邦楽ロックの良心とは、マカロニえんぴつのことだ。豊富な音楽的語彙、キャッチーなメロディ、タフなリズム、どれを取っても申し分ない。

‪音楽的だし、楽しいし、"音楽"って音を楽しむと書くのだと再確認。そして、楽しいだけではなく、ほろ苦さもあるのが、一筋縄でいかない複雑な世界の中にいる僕らの気持ちを描写しているようで勇気付けられる。これは、生きるための音楽だと、そう思う。

Score 8.5/10.0