◆ ターミネーター３おける神話
監督をジョナサン・モストウ氏にバトンタッチした3作目。
『Ｔ２』のラストで観客へのメッセージを無視する形で『ターミネーター３』（以降Ｔ３）制作されたわけですが続編を作ることで『Ｔ２』のラストシーンは台無しに。
キャメロン監督が「スープに小便をされたような気分だ」と語り、監督を引き受けなかったのも当然でしょう。
そんな『Ｔ３』ですがシリーズ最大の反逆児でありながらも意外とシリーズの持ち味には忠実。『Ｔ２』では『Ｔ１』に存在したシーンのセルフパロディ的なシーンがいくつかありました。
前述のカイルと『Ｔ２』のT-800のプロメテウス的役割、かつてカイルが頭のおかしい人物として世間に疑われている描写をサラが引き継ぐ、ターミネーターがチンピラから服を盗むなどなど。
『Ｔ３』でもそんなセルフパロディをいくつかやっているわけですがもちろん神話的要素も兼ね備えています。
パンドラの神話にはちゃんと続きがあり、パンドラはその後プロメテウスの弟エピメテウスと結婚。娘としてピュラーを設け、ピュラーはプロメテウスの息子デュカリオンと結婚。彼らは箱舟を作りゼウスの起こした大洪水を生き残るという流れになっています。（聖書におけるノアの方舟の物語そっくり）
ヨハン・ハインリッヒ・シェーンフェルトによる『大洪水』『Ｔ３』ではジョンがデュカリオン、その妻となるケイトがピュラーであり、審判の日が大洪水、二人が最後に逃げ込んたシェルターが箱舟ということになるのでしょう。
こうしてみると駄作とは言われつつもシリーズにその後の神話をうまく組み込むとと共に前作までの神話を損なっておらず、なかなか考えたなと見直してしまいます。
特にティタノマキアとゼウスの大洪水を同一のものと捉えた点は素晴らしい。
とはいえやはりシリーズの根底に流れる「神々の権力争い」～「パンドラの箱の解放」までの壮大さとは比べるまでもなく…キャメロン監督が何故『Ｔ３』を作りたがらなかったのか理解できるような気がします。
恐らくキャメロン監督も『Ｔ２』制作の時点で次回作たる『Ｔ３』のことは頭にあったはずであり、彼が監督したとしてもデュカリオンとピュラーの物語としたでしょう。
しかしながらデュカリオンとピュラーの物語は大洪水という避けがたい災害への逃げであり、運命の享受の話でもあります。全2作が運命への抗いを描いている点に対し、『Ｔ３』で成す術なく運命を受け入れたのではシリーズを貫く「未来は変えられる」という主旨に反します。
それ故に『Ｔ２』でプロメテウス自らにパンドラの箱を処分させることで完結させたのではないでしょうか。パンチも弱く、シリーズの趣旨と反するのではいくら綺麗に神話性を持たせたとしても駄作となってしまいます。
『Ｔ３』は映画の内容ではなく存在そのものが運命への抗いだったのかもしれませんが…
キャメロン監督のプロメテウス的な先見性を感じさせられます。
色々駄文を書き連ねて最終的な結論が「キャメロンはすごい！」これに尽きます＾＾；
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