身体全体に錘が付いたように、体を起こしたいが瞼も重たくて、ここがどこなのか頭の中で考えてもすぐに思いつかなかった。
もう何日も私は自分の生活をした時間の記憶がないような気がする。
動かそうと思って少し手が動くと、意外と簡単に動かす事が出来た。
動かした手に触れた物が温かくて、人の素肌のような感触だった。
起きなきゃ・・・・
そう思った時に耳元に人の寝息のような音が入って来た。
そっと目を開けると、間近に見えたのはスンジョの奇麗な寝顔。
「スンジョ君・・・・」
それほど大きな声で言ってはいなかったが、ハニの囁くような声で目を開けた。

「眠れたか?」
「眠れたって言うか・・・・記憶がなくて・・ずっと記憶がなくて。」
枕元の携帯を見て、また枕元にそれを戻した。
「ハニが覚えているのはどこまでだ?」
ギュッとスンジョが抱き寄せると、お互い何も来ていない事にハニは気が付き身体を緊張させた。
その様子にスンジョは新婚旅行に行った時の翌朝のハニを思い出した。

「私・・・スンジョ君に全部話そうと思って、誰もいない寝室でどんなふうに話したらうまく話せるか、でもそれを話したら・・・もうスンジョ君と一緒にいられない、子供たちとも一緒に暮らせないと思って、頭の中が整理付かなくてちょっと眠ると考えがまとまると思っていたの。本当に死ぬるつもりはなかったの・・・・」
ハニの記憶がない時があった事が、自分を否定していたからだとか、そんな事を言わなくてもいい。
十分ハニは反省しているし、傷ついているのだから心が現実に戻って来てくれればそれでよかった。

「ギョルと一緒のベッドに入った時・・・・逃げ出そうと思っていたのは本当。スンジョ君の事や泣き虫なスンハとしっかり者のスンリの事を思ったら、今逃げた方がいいと思ったけど身体に力が出なくて・・・・」
「もういいよ・・ハニがした事は決していい事ではないけど、事実は消そうとしても消える物じゃない。オレがハニに相談もなく危険な地域に言った事が一番の原因だ。だから、オレは・・・・」
瞬きをしないでハニはスンジョの話を聞いていた。
スンジョが隠している事は、他人には言えない事でも妻のハニには言わなければいけない事。

「もう起きようか?新婚旅行の思い出を再現しないか?」
「再現って、あの二人もいるの?」
「いないよ。あの時はお袋たちが返送して付いて来ていたけど、スンハとスンリの背をが楽しいらしいから付いてこないだろう。あの頃に戻ってもう一度やり直さないか?ここにはオレのリハビリかねての静養に来たのだから、ストレスのない生活が一番なんだ。」
ベッドから出るスンジョの背中を見ると、まだ傷跡が痛々しい。
外来で処置した所は、傷跡もくっきりとあるが、それも時間が解決してくれるだろう。
周囲を見回すと、バスルームからそのまま来たのか大判のバスタオルが椅子の背に掛けられていた。
やっと昨夜の事を思い出した。
スンジョに首筋や体にキスをされていた時に、忘れたいと思っていたギョルと過ごした時の事を思い出しパニック状態になっていたハニを、スンジョが抱き上げてベッドまで連れて来たのだった。




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