シャカシャカシャカと卵を混ぜて、熱したフライパンに流すとジュッといういい音がした。
ケチャップライスを半熟になっているフライパンの卵の中央に乗せ、トントンと柄を叩いて皿の上に滑らせるように乗せた。
「よく作るの?」
「いや・・・・料理は今日が初めてだ。」
「初めて・・・」
「何を見ているんだよ。他の準備をしたらいいだろう。」
「そうだね・・・サラダを盛るね。」

ふたりだけしかいない家の中。
ギドンの帰宅は遅い事はいつもの事で、この時間にスンジョとふたりだけになったのは初めてで、学校で鍵を渡され、帰宅して玄関を開けた時はふたりだけで過ごす時間の事を考えて、色々な想いが溢れていた。
何度も書き直した渡すつもりのない手紙を、眺めているうちにいつの間にか眠ってしまった。
それがハニの心に少しだけスンジョと一緒にいる事の緊張が解けたのかもしれない。

テーブルにランチョンマットを敷き、フォークとスプーンをセットし、盛り付けたサラダを置くとテーブルの上が華やいだ。
「あっ!スープがない!」
「オレはいらない。」
「じゃあ、私も・・オムライスにケチャップでデコしてもいい?」
「どうぞ・・オレはいいから。」
ハニは今の気分をケチャップで表したい気分だった。

なんだか大好きなスンジョ君とふたりっきりだと思うと・・・新婚さんみたい・・・・

妄想気分で思った事にハッと気が付くと、急に緊張してケチャップでデコする気持ちになれなくなってしまった。
「何だよ、デコするのをやめたのか?」
「・・・ぅん・・ケチャップライスの味だけで食べる・・」
少し前までは自然な感じでスンジョと話をしていたが、またいつもの俯き加減のハニに戻った。

「お前、オレとは普通に話せないのか?オレがいつもいじめているみたいで、あまりいい気分じゃない。」
「話せない事は・・・ないけど・・・」
話せない事はないが、大好きなスンジョとでは緊張してしまう。
「オレの事が好きだから、面と向かって話せないのか?」
ハニはスンジョの言葉に驚き、口に入れようと思っていたオムライスが、スプーンから皿に落ちた。