静かな朝食のダイニングは、まるでドラマで観る裕福な家庭のように静かだった。
若くて美しい母親とダンディと言う言葉とかけ離れた見た目の父親、まるで俳優のように整った顔立ちの高校生の長男と、兄の小さな仕草も真似ようとしている小学生の次男。
朝の時間にピッタリな音楽でも流れていたら、現実にこの生活が夢の中のような風景だった。

「パパ、コーヒーにミルクとお砂糖を入れ過ぎたらだめよ。」
「今日だけ・・・・」
シュガーポットを夫の前からサッと引くと、夫は苦笑いをするが妻に『それでも・・・』と言う事はしなかった。
「ウンジョ、ちゃんと牛乳も飲まないと背が伸びないわよ。」
「飲むから背が伸びるわけじゃないよぉ~牛乳は好きじゃない。」
「お兄ちゃんは、ちゃんと牛乳を飲んだから背が高いでしょ?」
チラッと兄の様子を見る弟は、母親の攻撃から助けて欲しいと目で訴えていた。

「ウンジョ・・・・」
兄に名前を呼ばれた弟は、嬉しそうに目がキラキラと輝いた。
「なに?」
「牛乳を飲むから背が伸びるというより、牛乳は骨を強くするからこれから成長するウンジョは飲んだ方がいい。」
兄の一言で弟は牛乳を我慢して飲んでいた。
この家庭に何が問題あるのか、誰が見てもそう疑問を持つだろう。

「スンジョ、朝からそんなに不愛想な顔をしないでよ。せっかくのいい天気が台無しよ。」
「面白くもないのにバカみたいに笑っていられない。もう学校に行くからいいだろ。」
グラスに残っていたジュースを飲み干すと、高校生の長男は立ち上がった。
「僕も学校に行く!」
「だめよ。ウンジョはちゃんと全部食べてから行きなさい。」
妻と息子たちの様子を夫は何も言わず、ただニコニコと笑って見ていた。

この家に何が問題あるのか分かっているのは、本当は家族全員なのかもしれない。

「スンジョはいつから笑わなくなったのかしら・・・・」
「お兄ちゃん、笑うよ。」
「ウンジョの言うのとは違うの。」
「男の子の難しい時期だからな・・・パパもスンジョの頃はあまり今みたいに笑わなかったよ。」
父も本当は分かっていた。
長男が何かに苦しんでいるのだという事を。
母親は思うような笑顔を見せない長男を、母としてただ心配していた。




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