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月と水星の浅いクレーターの地下には厚い氷の堆積物が埋まっている?

2019年08月22日 | 月の探査
月と水星のクレーターの観測データを新たに解析してみると、この2つの天体の極域に大量の氷が存在する可能性が示されました。
極域にあるクレーターの内部には太陽光が全く当たらない影の部分があり、氷はそこに隠されているそうです。


クレーター内部にある太陽光が全く当たらない場所

意外な気がしますが、月と水星の極域は太陽系の中で最も温度が低い場所の一つなんですねー

地球の自転の傾き23.4度に対して、月は5.1度、水星が7度と小さいので、月や水星の極域では太陽は高く昇ることがなく、クレーターの内部には太陽光が全く当たらない“永久影”もあります。

“永久影”は極めて低温なので、何らかの原因でここに溜まった水の氷は数十億年にわたって残ると考えられています。
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月の南極域のイメージ図。太陽光が当たらないクレーターの永久影に水の氷(青色)が大量に堆積しているのかも。
水星の場合、地球からのレーダー観測により、厚くてほぼ純粋な水の氷の特徴を示す信号がとらえられています。
こうした氷の堆積物の証拠は、NASAの水星探査機“メッセンジャー”でも得られていました。

一方、月の極地方も熱環境は水星の極域とよく似ているのですが、まばらで薄い氷堆積物しか見つかっていません。

“メッセンジャー”の観測で明らかになったのは、水星の両極域には水の氷を主成分とする堆積物が広い範囲に分布していること。
さらに、月の氷のようにまばらな分布ではなく、年代も月より新しくて、過去数千万年以内にとどまったもののようです。
  水星に大量の“水の氷”
    

浅いクレーターの地下にあるもの

こうした月と水星の氷の違いについて、今回の研究では両方の天体にある衝突クレーターに着目。
分析を進めたのはカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究チームでした。

大気をほぼ持たない月と水星の表面にはたくさんの衝突クレーターが残されています。
その中でも、直径が小さい“単純クレーター”と呼ばれるタイプのクレーターが分析されました。

“単純クレーター”はエネルギーの小さな衝突でできたもの。
天体の表面に積もっているチリ(レゴリス)の層の強度によって形が保たれています。
大きなクレーターのような中央丘や台地を持たず、円に近い対象な形をしていて、断面も単純なお椀型なのが特徴です。

分析に用いたのは、NASAの月探査機“ルナー・リコナサンス・オービター”と“メッセンジャー”で得ていた高度データ。
水星のクレーター約2,000個と月のクレーター12,000個から、深さと直系の比率が調べられました。
  調べたクレーターの直径は、2.5キロから15キロまでの範囲にわたっていた。

その結果分かったのは、水星の北極域や月の南極域の単純クレーターは、他の領域に比べて深さが最大で10%ほど浅いこと。
ただ、月の北極域ではこうした傾向はみられませんでした。

なぜ、過去に水の氷が検出されている月の南極域に、浅いクレーターが多く存在しているのでしょうか?
これらのクレーターの地下に、未発見の厚い氷の堆積物が埋まっている可能性が高いことを示唆しているのかもしれません。

また、クレーターの斜面の角度を比べて分かったのが、極側に面している斜面の方が赤道側に面している斜面よりもわずかに傾きが小さいこと。
極に対面する斜面の方がより太陽光が当たりにくいので、氷堆積物が残って傾きが緩くなっていると考えることができます。

ほぼ純粋な氷が見つかっている水星と違い、月で検出されている氷はレゴリスと混ざった地層を作っていると考えられています。

今回研究チームが調べた“単純クレーター”の年代から考えられるのは、クレーターの内部に水の氷が溜まった後、氷の上に降り積もったレゴリスが長い時間をかけて氷と混ざったということ。

また、浅いクレーターの分布が、過去に月や水星の表面で氷が見つかっている場所と相関があることも分かりました。

ひょっとすると、これまでの探査で検出された月と水星表面の氷は、地下の氷が掘り出されたか、あるいは地下深くから水分子が拡散して表面に出てきたものかもしれませんね。


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