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2019年8月12日月曜日

映画『アナイアレイション ー全滅領域ー』の感想



※ネタバレありなのでご注意ください!


Netflix独占で2018年に配信された映画『アナイアレイション ー全滅領域ー』


現在はDVDやBlu-rayでも発売され、他の動画配信サービスでも視聴することが可能です。


『アナイアレイション』は「全滅」とか「消滅」という意味なので、いわゆる人類終焉の物語であることがタイトルから予測できます。


ホラー寄りのSFなので鑑賞する人を選びますが、独特な色彩感覚で異世界の恐怖を表現しているため必見の作品ですね。


閉ざされた空間の中、意思を持ったAIの恐怖を描いた映画『エクス・マキナ』を世に送り出したアレックス・ガーランド氏がこの映画の監督ですが、同じSF映画でも一味違う雰囲気を味わうことができます。


残念ながら劇場公開ではないため、ほとんどの人は家庭用のテレビ画面やスマホで見ることになりそうですが、大画面で見たいと思った人も多かったはず。






…とはいえ、終わり方が難解だったため鑑賞後に首を傾げる人も多そうですし、これは『エクス・マキナ』と通じるものがあるかも。


最後は「…は?」となる人もいたのでは?


そのため、批評レビューでは平均的に評価が低めになっており、原作を大幅に改変していることから、力技で映画を完成させたといった感じですね。


※原作はジェフ・ヴァンダミアの小説『全滅領域』ですが、ガーランド氏が脚本を書き始めた当時は1部しか完結していなかったとのこと。つまり、映画はガーランド氏のオリジナル作品と言っても過言ではないでしょう。


物語の概要ですが、



生物学者で元兵士のレナ(ナタリー・ポートマン)は、エリアX内で、自身の夫の身に起きた真相を解明するため調査隊に入隊する。エリアXは、突然変異を遂げて生まれた景色と生物が存在し、生命と精神を脅かしていく。


…つまり、『エリアX(シマー)』内では動物が突然変異しているため、化け物がウヨウヨ状態


しかも、どの生命体もDNAレベルで突然変異していることから、主人公たちもいつ体に変化が起こるか恐怖に怯えます。


銃を撃つシーンはいくつかありますが、全体的に静かな作品なので、その静寂が余計に恐怖を煽っているといった印象ですね。


また、突然変異した人や動物は異様なビジュアルなので、ホラーが苦手な方は吐きそうになるかもしれません😅





上の画像のシーンは『エイリアン』のオマージュなのかも…もはや鉄板といった感じですね。


この映画の考察はいくつかのサイトで語られていますが、「旧約聖書に則ったもの」という仮説が概ね正しいと思います。






既に多くの方が指摘されている通りで、本作のラストシーンにおいてレナとケインが旧約聖書のアダムとイブであるかのように描かれています。これは先ほども指摘した通りでキリスト教的な世界の再創造の到来は、アダムとイブが原罪を引き起こす以前の「パラダイス」の状態に回帰させる形でもたらされるという言説に基づいていると考えられます。


ラストシーンは“新人類”としての二人が残り、新たな世界を再構築していく(かもしれない)という印象を残して終わります。


この辺りは「鑑賞する人の想像に任せるね」という丸投げの状態なので、見る人によっては意味が分からないと眉間に皺が寄るかもしれません。



灯台というモチーフは人間の生命のちっぽけな様を表現しているように思えますし、それと共にその力強さをも伝えてくれます。本作の主人公レナの名前には、「光」という意味合いがあるという点を指摘しました。そう考えると、「シマー」の中にあった灯台が崩壊し、新しい世界にレナという「灯台」が打ち立てられた本作のラストは、『アナイアレイション』という作品を人類賛歌たらしめているようにも感じられました。


先程紹介した考察記事は「人間賛歌」の物語だと結論しています。


もしこのテーマであればかなり壮大になるため、短い時間の中で表現するのは難しく、見る者に伝わらなかったことが低評価に繋がってしまったのかもしれません。


…とはいえ、Netflixを契約している方であれば一度は見て欲しい作品の一つ。


「独占配信でここまで予算をかけて作るのか」と感動したくらいなので、映画づくりの未来を感じる一品でした。
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