パウエル議長議会証言、米国経済に強気、量的緩和は予定通り終了

米国時間2月11日、アメリカの中央銀行Fed(連邦準備制度)のパウエル議長がアメリカ経済と金融政策に関する議会証言を行った。パウエル氏によれば「議会は中銀に重要な独立性を与えてくれており、(中略)それには責務の進捗について報告する義務を伴う」そうである。Fedに頻繁に注文を付けているトランプ大統領へのあてつけだろうか。

投資家にとって議会証言は金融政策を決定するFOMC会合と同様に重要なイベントなので、その内容を見てゆきたい。

アメリカ経済

先ず、アメリカ経済に関する発言では経済成長に自信のある表現が多かった。例えば次のようなものである。

昨年の後半では経済活動は穏やかに拡大し、労働市場は更に強まった。夏に始まった世界的な逆風に対して米国経済は耐性を示したように見える。

アメリカ経済は成長がやや鈍化してはいるものの、他の先進国と比べるとかなり良好な状態であり、トランプ大統領などはFedの金融引き締めがなければもっと良かったはずだと主張している。Fedの金融引き締めが引き起こした2018年の世界同時株安によって2019年の世界経済の鈍化が起こっているのは少なくとも経済学的事実である。

一方で金融政策に支えられなければバブル崩壊するしかない先進国経済の姿も経済学的に事実であり、世界同時株安で崩壊しない方が良かったのかどうかは微妙なところだろう。ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを率いたドラッケンミラー氏などは、量的緩和こそが成長停滞の原因だと言っている。

金融政策

さて、次は金融政策についてである。まずパウエル氏は現状確認を行っている。

2019年の後半には弱まった世界経済と貿易の事情に対処し2%の上下対象な物価目標を早期に実現するため、7月、9月、10月の会合でフェデラルファンド金利を下げた結果、現在の金利水準は1.5-1.75%となっている。

あたかも遠回しにトランプ政権の米中貿易戦争がその原因だと言いたいような表現だが、2019年に弱まった世界経済は貿易戦争が原因ではなくFedの金融引き締めによって起こった2018年後半の世界同時株安が世界経済にネガティブな影響を及ぼしたからである。以下の記事で説明したように、2019年の経済減速はその直前の世界同時株安と同期している。

また、パウエル氏はこれを緩和と呼びたくないようだが、Fedは2019年に利下げに加えて実質的な量的緩和を実施しており、こちらは今年の前半で予定通り終了することを今回の議会証言でも再確認した。前回のFOMC会合でも報じた内容である。

繰り返しになるが、投資家にとっての問題はこれが市場にどう影響を及ぼすかである。直近の株高が去年からの量的緩和に依存したものだとすれば、それが終了することはプラスにはならないだろう。期限は6月頃であり、それよりも前にFedは量的緩和のペースを落とし始めることになる。

市場の反応

議会証言を受けて市場の反応がどうかと言えば、米国株は上げ幅を縮小、長期金利は上昇したため、米国経済について強気な発言をした部分がタカ派と受け取られたのだろう。

また、これを受けてトランプ大統領がTwitterで「いつも通り彼が話し始めると株が下がった」と嫌味を言っている。これをBusiness Insiderなどの大手メディアは、トランプ大統領が「根拠なしに」株の下落の原因はパウエル氏の発言だとしたと報じているが、メディアは株価下落の理由が分からない時に「利益確定の売りが出た」と書くのを止めてからトランプ氏をあてこするべきだろう。