大田区議会議員 奈須りえ  フェアな民主主義を大田区から!

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ソウル社会的経済支援センター を見学して 日本の共通課題に取り組む韓国の施策に学ぶ

2018年08月15日 | ●活動報告

7月末から8月初旬にかけての、3度目のソウル市調査に行きました。ソウル市は記録的な猛暑で、気温が過去最高の39度になった日もあり、内容の熱さと共に、忘れられない調査になりました。


現在、調査メンバーで調査報告書を作成中ですが、その中で担当した「ソウル社会的経済支援センター」の調査レポートと感想を一足先に公表します。

調査報告に際し、条例などについて、ご一緒した丸山茂樹先生のご著書、「共生と共歓の世界を創る ─グローバルな社会的連帯経済をめざして」を参考にさせていただきました。

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感想
ソウル社会的経済支援センター

韓米FTAの締結など、韓国は、日本同様、グローバル投資家利益を最優先する新自由主義に悩まされています。
雇用なき成長、格差、貧困、高齢化、などに悩む韓国が、社会的価値と経済政策を結び付けた「認証社会的企業」を法制化し、雇用の創出と社会課題解決に取り組んでいることを非常に興味深く学びました。

日本では、2000年を過ぎたころから、行政と市民が地域課題の解決に取り組む協働という考え方が広がり、市民が地域の課題である介護はじめ福祉や公共サービスなどの担い手になりました。

その後、担い手が営利企業に代わる、必要な事業でありながら予算化されない、など様々な課題を抱えていて、市民事業の継続性は今も課題になっています。

ソウル市に学ぶべきは、地域の課題を社会的企業に担わせるに際して、4つの基準①社会的価値の実現
②民主的かつ参加型意思決定
③構成員が業務やサービスを遂行し人と労働に優先して配分
④透明性と倫理性の順守、
を示し、これらを条例化したところにあります。

調査先の社会的経済支援センターの方が指摘していたとおり、行っている事業が市民の生活課題解決につながっているかどうかが課題だと思いました。特に、自発的に取り組む市民が、優先順位の高い困難事例を解決するには、財源の担保や専門性などが欠かせません。
そうした意味では、官と民の責任の所在を明らかにした官民のすみ分けや課題解決の優先順位、専門性を持った人を育てることのできる財源の担保など多くの課題があり、今回、調査しきれなかった事業の効果や評価含め、引き続き注目していきたいと思います。


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報告


1.ソウル社会的経済支援センターとは
社会的経済組織を支援することを目的に2013年からソウル市の委託で事業を開始している。
社会的経済組織とは、ソウル特別市社会的基本基本条例第4条に記されている基本原則を遵守する「社会的企業育成法」「ソウル特別市社会的企業育成に関する条例」「協同組合基本法」「都市再生、活性化及び支援に関する特別法」「国民基礎生活保障法」「重傷障害者生産品優先購買特別法」などを根拠に定められ設立された組織、公有経済、公正貿易など市長が定める基準によって社会的な価値の実現を主たる目的とする経済的な活動をする企業及び非営利法人又は非営利民間団体などをさす。。

基本原則は、
① 組織の主な目的が社会的価値の実現
② 民主的であり参加型である意思決定構造及び管理形態を通じて個人と共同体の力量強化
③ 主に構成員が遂行する業務やサービス、活動を土台にして行う経済活動によって獲得される結果を、構成員や社会的価値実現に使用するとか、その収益を資本よりも人と労働に優先して配分
④ 経済の透明性と倫理性の順守

ソウル社会的経済支援センターは、ソウルの中にある社会的協議会協同組合、社会的経済組織協議会、それぞれの社会的企業を支援する支援センターが集まってできている社会的経済ネットワーク。
25の自治区の22区の社会的経済支援センターをまとめる役割をこの場所が担っている。そこがソウル社会的経済 支援センターを受託している。
ソウル社会的経済支援センターの中の成長支援室は、起業支援(インキュベーティング)すると言うより、成長した企業をどう支援するかという視点で運営している。
センターの本部はここにあるが、ほか、以下の拠点で運営している。
・ 技術が集まっている町工場のある場所で技術を分かち合ったりするラボを運営
・ ワールドカップ競技場のとなり、石油備蓄基地の跡地で文化備蓄基地を運営

2.ソウル社会的経済支援センターの運営方針
1800の社会経済的組織が、市民の暮らしの課題を解決することに結びついているか。市民に評価されているか。という意識で運営している。

3.ソウル社会的経済支援センターの目標
① 生活問題を解決することで市民生活を高める
② 解決したあと続けられる。持続可能性
③ 経済民主主義の拡大に寄与する
そのために、センターは、財政、補助金を出して引っ張るのではなく、団体が持っている能力や財源を補うという方向性でやっている。
それぞれの組織が成長していくことを考ている。

4.具体的におこなっていること
①人材育成           
スタッフの育成。小中高の教育課程に社会的経済を入れる
②地域再生
      拠点づくり。市民への広報。企画研究。
③市民生活福祉サービスの改善
      公共サービスに社会的企業が参加できるよう
④販路支援
       社会的経済企業の商品を優先的に使用することを支援する社会的経済基本法を根拠
に、民間・公共市場の開拓含めた販路の支援。
現在1300億ウオン=130億円。目標2000億ウオン=200億円(2022年まで)

5.韓国の社会経済的背景
こうした事業が必要な背景に、
韓国の自殺率は、OECDの中で1位。人口が日本の約半分だが、数は3万人とほぼ同数。
低い出産率と今後急激に進む高齢化。相対的貧困率が高い。高齢者の貧困。若者の失業率も高い。住宅供給数は不足していて、住宅供給戸数は不足していて、人口(世帯数?)の8割~9割。雇用なき経済成長。
韓国国民の貯蓄は低く、社会保障制度も整っておらず、年金制度も始まったばかりで、不十分で、儒教の思想から、子どもが親の面倒を見てきた。しかし、低賃金、不安定雇用で、家庭内福祉も成立しなくなっている。そのため、こうした状況がこれ以上続くと、生活を支えられない人が激増する、といった危機意識高まっている。
そのため、ムンジェイン政府は、社会的価値を中心に、仕事づくりに重きをおいた経済政策をとっている。なかでも暮らしの課題を解決する社会的経済を大切にしている。
2010年から16年までにソウル市が社会的経済関連で執行した金額は、1990億ウオン=199億円。認証社会的経済協同組合に認証されると2年間支援してくれるが、2012~2016は財政支援が半分くらいに減り、 経営販路など基盤を作るところに金を使うようになっている。


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