山之介です。
今回物語はここから始まる。
いよいよここを登るのか。
9月20日(日)、「番場島」そばのゲートを明るくなった5:15出発。
前回の時みたいに真っ暗な中を恐い思いをして歩きたくないのです。
それに今日は「猫又山」に12時頃まで着ければいいので。
今日から新しいスパイク長靴となります。
「戸倉谷」出合の沢、これもしかしたら「ハワサビ」なんじゃないの?
朝7時での気温は13℃弱。1週間前とは全然違う涼しさです。
スタートからもうすぐ2時間だと言うのに今日は何故か調子が良い。
さらに30分ほど登ってまだ行ける。時計を見たら「あれ?さっきと同じ?」
失敗しました。時計が30分前で止まってしまいました。
「くっそー、何故?10日程前に新しい電池に交換したばかりなのに。」
今年の春に改良したウエストベルトはきっちり締まるようになりました。
女性のウエストくらいにまで締める事が出来ます。しかしこれは締め過ぎ、キツ過ぎるわ。
ゴーロ帯の急な登り。
そして9:10 「ブナクラ峠」です。
ここまで4時間。
朝4時30分に菓子パン1個を食べ、時計が止まった時にソーセージを1本食べただけなので、そろそろお腹も減って来ました。
お地蔵さまにお供えして
お下がりをすぐに頂きます。(なんせスタートから時計が止まったりで不運だからね、安全祈願。)
今日1本目のドーピングをして
そろそろ登りますか。今日のザックは16.5kg。(実測値)
お尻の辺りに縛り付けてあるのはサブザック代わりのペラペラのデイバッグ。
いつものアタックザックだと「釜谷山」への藪漕ぎで破けてしまうかも知れないので、少し生地が厚めのデイバッグ(1,980円)を持って来ました。
昨晩、家で量った時は16.5kg。登山装備12.5kg+水4リットル(4kg)で16.5kg。
それに今朝おにぎり2個、菓子パン、ソーセージ3本、鎌、ノコギリを追加して約17.5kg。
「アルプス縦走でもないのにさすがに17kgオーバーはないやろ。」と出発直前に水を1リットル外しました。
これで飲料水1.5リットルと調理用に1.5リットルとギリギリの量。
これ以上は減らせない、これ以上は増やしたくない分水嶺がこの重量。
ここから「猫又山」まではコースタイムで2時間40分。
ここをこの装備で登れると思えたのは18kg弱でも「聖登山口」から「聖平」までの急登を7時間登った事、同じように「椹島」から「千枚小屋」までの急登を7時間登れた事など、過去の実績があるから。
あの実績が無ければ登れるとは思わない。
まずはあの大岩までの急登をこなします。
あまりにも急でザイルも設置してありました。下りの時はきっと助かる。
途中で超ズームでゴーロ帯を見ると赤いデカザックで登って来る人がいました。あの人も「猫又山」を目指すのかなぁ?
今日は7台位車がゲート前に止まっていました。
こっちに来るのは今のところ自分だけで、ほとんどの人は「赤谷山」へ向かったもよう。
そう言えば自分と同じ時間に出発した人はヘルメットをかぶっていたから「白萩川」を遡上して行ったのだろうか?
そして振り向いたら「ブナクラ峠」からそびえ立つ「赤谷山」。山頂は雲の中に隠れていますな。
ようやく大岩まで登って来たら
1輪の「ノコンギク」が。
次はあのピークか。全然休ませてもらえない、休めるような場所がない。
ありがたい事に草刈はしっかりしてありました。
もう1度振り返ると、今度は「赤谷山」もさらに「剱岳」まで見えていましたよ。
なだらかに見えるけどかなり急斜でしかも枯れた笹が滑りやすい。ザイルがあって助かる。
次は手前のピークを乗り越えて、目指すは遥か左奥のあの稜線。
その手前のピークを乗り越えたらまたピークが現れました。しかも一旦下って登り返す、まさに試練のような登山道。
このあたりの草陰に咲いていた「シラタマちゃん」。
ホント、ずっとしっかり下草刈りがされています。これ刈ってなかったらどうなっていたんだろう?
さっき見えた新たなピークにここまで近づいて来ました。それにしてもつらい。(´;ω;`)ウッ…
辛いけれど秋のスッキリした空は応援してくれている。
この先で後ろから来た20代のカップルに追い越されました。
かなり水が少なくなった感じの池。
先週こっちに草刈り機を持って登った方が刈って下さったのでしょうね。
右手は「南又谷」。
後ろには「赤谷山」、「剱岳」の奥に「大日岳」の稜線まで見えるようになりました。天気は良い方に向かっているね。
11:10 ここで上から下りて来る方が1人。どうみても65歳くらいのお方。
「お早いですねー。もう行って来られたんですか?」
『大猫山から登って猫又山へ行って周回して来ました。』
「え?大猫は藪々じゃないですか?」
『すっごい藪漕ぎして登りました。足が遅いので深夜1時に出発しました。』
「えー!?そんな時間にクマとか恐くないですか?」
『毎年大猫山から登って周回しているんです。しかしこっちはしっかり草刈してありますね。』
「地元のボランティアの方が1人で先週まで刈って下さったんですよ。」
と、10分ほどいろいろ情報交換と言う名のお喋り。
ずいぶんと近くなったように見えるけれど、それでも隠れているピークがあるし、左上の稜線まではまだまだある。
ピークを乗り越える度に新たなピークが出現してすでに心が3回ほど折れました。
11:20 2人組の50代後半くらいの方が下りて来られました。
「お早いですねー、何時出発です?」
『4時出発で10時頃山頂に着きました。どちらまで行かれるんです?』
「一応、釜谷山狙いで。テント装備で17kgは堪えます。」
『しっかり草刈してありますよねー。』
「これ先週1人で刈られたみたいですよ。ありがたいですよね。」
『もうすぐ樹林帯を抜けると別天地になりますよ、がんばって下さい。』
別天地か、それは分かっているんだけど・・・次の樹林帯を登り越えないと着かないよね。
あー、この池の水が飲めるようならここまで重くしなくても良かったのにな。
と、言いつつ生物が生きている水なら飲めるように出来る浄水器も持って来ています。
しかし、浄水器を使うのは出来れば下りの「戸倉谷出合」の川まで下った時にしたい。
ここから先がどうも先週刈ったばかりのようでまだ青々としていました。
残っている笹や草もこのくらいの丈。
今日はここまで6人に逢いました。さすが4連休ともなるとこんなマイナーな山にも人が入りますね。
そして、11:45 辛くて長かった樹林帯を抜けると・・・美しいカールの別天地。
右手は「後ろ立山連峰」の「唐松岳」「五竜岳」「鹿島槍ヶ岳」。
何この景色、見とれてしまう。
カールの中はいまだお花畑で黄色くなり始めた「イワイチョウ」の葉や
「チングルマ」ふわふわ
真っ盛りの「ミヤマリンドウ」
「イワイチョウ」の花も。お花を踏まないように歩くのが大変。
そして後ろはこれよ。
右手の「後ろ立山連峰」も絶景で昨年縦走した「鹿島槍ヶ岳」から「五竜岳」までくっきり。
登ってしまうには惜しい美しいカール。
先週登った「赤谷山」に「池の平山」「剱岳」の北斜面。
その右肩に「立山」と「奥大日岳」「浄土山」まで見えています。
はぁ、もう感激すぎます。
「クロマメ」ちゃんも実っていました。
ほぼカールを登り終えてしまいました。
この先直進で「猫又山」へ、左折すれば「大猫山」へ行けます。
今は直進してあの稜線を目指します。
稜線で振り返って。赤線が登って来た方向で、黄色の踏み跡を辿れば「大猫山」の「東芦見尾根」へ向かえます。
ここが分岐点。
少し進んでこのあたりで幕営するのもいいかな?
取りあえず山頂を目指します。
すぐ右手に「白馬岳」「白馬鑓」などもまるで手が届きそうな位置。
山頂まではゆるい傾斜なんだけど、もう足がふらふら。
山頂直下の絶景のテン場。向うに見えるは左に「釜谷山」、その右は「毛勝山」です。
そして後ろを見れば「剱岳」。
もう、ここにテントを張ろうかな。
テントを出してポールを通していたら気付く、「ここは風が強い、もし陽が落ちてこれ以上風が強くなるとまずいかも?」
テント一式だけサブザックに詰め込んでさっきの所まで下りました。
ここもカールから吹き上げて来る風が強いので少しハイマツの陰ににテントを張りました。
空身でまた池塘まで戻って来ました。行ったり来たり30分ほど浪費しました。
でも見晴らしの良さではこっちの方が1番だ。尖った「釜谷山」がはっきり見渡せますから。
山頂から下りて来たあの追い越されたカップルが草むらに寝そべってお昼ねしていました。あー、のどか。
さぁ、それでは山頂に行きますか。
山頂まではわずか1分で、13:18 「猫又山(2,378m)山頂に到着。お地蔵さまは「立山」の方を向いていらっしゃいます。
「猫又山」までのログ。
それでは山頂からの眺望です。
次に目指す「釜谷山」。
「後ろ立山連峰」の「旭岳」「白馬岳」「白馬鑓」。
そして真後ろに「剱岳」。
その右に「立山」「奥大日岳」。ちょっと奥に「浄土山」。
手前のハイマツが陰になって、眺望は1段下の広場の方が良いみたいね。
「猫岩」越しに「大猫山」のある「東芦見尾根」。
三角点もありました。
ここで三脚を立てて自撮りをしようとしたらアクシデント発生!!
強風で三脚が前のめりに倒されてレンズあたりを地面に強打。
三脚を立て直して電源を入れ直すも動かず。
バッテリーを取り外して入れ直してみたりするけど「ウーン、ウーン」唸るだけで全く動かない。
どうも今日は付いてないようで、時計は止まるしカメラは壊れる。
仕方ないのでスマホで自撮りしようにもセルフタイマーの仕方が分からず、こんな写真に。
寒しいもういいや。
「猫又山」登頂で「富山100山」のうち57座目まで登頂完了。
テントまで戻って来るともう13:40だよ。すっかり時間をロスしました。
お昼にしよ。
はい、「焼きビーフン」の出来上がり。
食べ終えた頃にはもう14時。
しかし、上の広場で寝転がっているカップルは帰らなくてもいいのか?
下りはここから4時間くらいかかるのよ。見た感じ特別足が速いようでも無かったし。
と、心配してたらようやく下山し始めました。早く下りないと真っ暗になるよ。
そう言う自分は計画では13時から「釜谷山」にアタックしようと思っていたのですが。
「釜谷山」まではコースタイムで往復3時間。
途中の藪漕ぎやルートファインディングを考えるともう少しかかるかも。
なにしろネットで公開されている直近の記録は8月10日の山行のみ。
皆さん「猫又山」までは日帰りで来ても、その先は藪だと知ってアタックしないみたい。
もう疲れたしテントの中でゴロン。
「やっぱり行けば良かったな。だけど足はもうふらふらだしなぁ。」
「猫又山頂」までは空身(カメラと三脚、スマホのみ)で2回行ったけれど、全然足が上がらなかった。
ああ、そうだ、翌日の為にドーピングしておこう。
テントのすぐ前の「チングルマ」は風に揺られてふわふわ。
15:30 やっぱり行けば良かったなと思いつつテントから出るとすっごい良い雰囲気。
15:40 「あ、そうだコーヒーでも飲もう。」
するとカールからガスって来てすぐに真っ白。
「やっぱり行かなくて良かったのかも?」ただでさえ踏み跡を探して辿るコースなのにガスに巻かれると見失ってしまう。
それにどんどんガスは濃くなるばかり。
こういう時はシュラフにくるまってラジオでも聞こう。あいにくFMは入らなかったのでAMで「KNB」や「大相撲」を聞いたり。
小屋泊まりでもテント泊でも縦走の時は必ずラジオを持って行きます。
電波の届かない場所では翌日の天気はラジオで聞くしかないからね。
暇なので夕食の準備をしたり
翌日の朝食をセットしたり。
この後、17:30過ぎには辺りは完全にガスに包まれ小雨まで落ちて来ました。
ラジオの天気予報では「富山県の明日は一部で明け方まで雨、午前中は曇りで午後から時々晴れ」。
って、明け方っていつよ?一部ってどこよ?ここか?
お昼を遅い時間に摂ったのでまだお腹は減らないし、なんだか天気がヤバいような気がして水と食料は温存していく事に。
もし、明日雨は降らなくてもガスが残ってヤバいようなら停滞する事も考えました。
夕飯は乾燥野菜を追加したカップ飯だけを食べました。
気温は14℃から10分毎に0.2℃ずつ下がり、も8.7℃。
今朝の車の中の気温は12℃だったので山頂では5℃まで下がるかも?と思っていました。
ここで本日の失敗点を列挙。
1.止まってしまうような時計を持って来た事。時間はスマホで確認するしかない。
2.カメラを壊してしまった事。もう気力は半減。
3.モバイルバッテリーを充電せずに持って来た事。5段階の内残り1段階しか残っていない。
4.軽量化の為シュラフをモンベルの”3”にした事。今の時期なら”2”にするべきだった。
5.雨まで降るなら無理しても今日の内に「釜谷山」にアタックしておくべきだった。さすれば明日は多少天気が悪くても下山だけで気持ち的には楽。
6.無理してテントで泊まらないであのカップルと同様に遅い時間でも下山すれば良かったのか。
7.今日の辛さからテント泊装備でここにはもう登れる気がしない。今回で登頂を果たしたい気もある。
ラジオで何度も翌日の天気を確認。
「北陸は西部ほど晴れで富山県は午前中まで雨が残り、昼から時々晴れ。」
西部って「福井県」や「石川県」の事らしく「富山県」は曇りみたい。
出発前日では連休の後半は「晴れ」と言っていたのと全然違って来たぞ。
標高2,300mでのたった1人でのテン泊。
せめてもう1組いれば相談も出来るのだが。
最悪の事も考えてすべての決断は自分でするしかない。
さあ、どうする自分?
山之介
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