ただ生きてほしくて

女のぬくもりを背負って

男はただ歩いていた
 

今にも消えそうな女の命
今にも消えそうな男の声

死ぬつもりはなかった

死なせるつもりもなかった
だが遺品だけは遺していた

それはお互いの命

男は人に生まれた

女は人には生まれなかった
月だけが何かを語っていた
何かを語っていた

 

男は心を閉ざした
女は男に

ぬくもりを伝え続けた

男は女に

女は男に

愛されることがすべてだった
そして悲劇は起こった 

女は泣いていた
男は何も言わなかった
過去だけは幸せだった
思い出の宝箱だった

女は遂に息を引き取った

徐々にぬくもりを失う女の身体を

男は背負い続けた
いつかまた会えると信じて

 

 

 

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