物価とは~物価を見つめる二つの視点とインフレの意義

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物価とは、モノやサービスの価格のことを言いますが、この物価というもの、あるいは概念を見るには、大きく分けて二つの視点が必要です。

一つは消費者側の視点。
モノやサービスを買う側の視点です。
買う側にとっては、物価は安い方がいいですよね。

もう一つは生産者(販売者)側の視点。
モノやサービスを売る側の視点です。
売る側にとって、物価は高い方がいいわけです。

これら二つの視点は、全く逆の立場から物価を見ている訳ですが、実はこの二つの視点を、同時に持たなければいけない人々がいます。

それは、私たち大多数の庶民です。

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生産者・消費者、正反対の二つの視点で物価を見なければならない庶民

労働者として生活している大多数の庶民にとって、物価はこの両側面から見なければなりません。
なぜなら、庶民は消費者としてモノやサービスを購入して生活する反面、 生産者・販売者側の労働者として、賃金を得て生活しているからです。

つまり、庶民は生産者(労働者)であり、同時に消費者なのです。

生産者(労働者)としての庶民にとって、物価とは生活を支える賃金の原資であり、賃金が安ければ生活は苦しくなります。
今1,000円で買えるものが1/10の100円で買えるようになったとしても、自分の賃金も1/10になってしまえば生活は何も変わりません。

何も変わらないならまだいいですが、物価の下落は賃金の下落を必ず招き、賃金の下落は物価の下落よりも早く進行します
なぜなら、物価を構成するコストのうち、最も削りやすいのが人件費だからです。

モノが売れなくなったからと、その生産に必要な人件費(賃金)以外のコスト、原料費や燃料費まで同時に安くなることは、まずありません。
日本は原料や燃料を輸入に頼っていますから、日本の経済事情に合わせて、これらのコストも下がるなんてことはありません。

「おや、日本はデフレなんやな。可哀そうやから安くしといたろ」

なんて、お人好しの国などないのです。

ゆえに、モノが売れなくなれば物価は下がりますが、真っ先に下がるのは賃金です。
賃金が下がれば、モノは余計に売れなくなります。
モノが余計に売れなくなれば、生産者・販売者は余計に価格を下げざるを得ず、物価はさらに下がり、賃金もさらに下がっていく。
これがいわゆるデフレスパイラルです。

こうしたデフレの悪影響を受けない、あるいは受けづらい人も、中にはいます。少数派ではありますが・・・。

消費者の視点でのみ物価を見ている人々

主に金融資産や不動産などを運用して収入を得ている投資家、そして海外でモノやサービスを売って収入を得ている多国籍(グローバル)企業です。

資産を運用して生活している投資家は、保有資産によって生じる金利や資産売買の差益等が収入の原資になりますので、我々庶民のようにモノやサービスの生産に従事して賃金を得る必要はありません。

グローバル企業にとっては、国内でモノやサービスが売れなかろうと、国外で売れれば良いわけですから、国内の物価が如何に下がろうと、重要視することはありません。

むしろ彼らにとっては、国内の物価が下がることは利益しかありません
資産家にとっては生活にかかるお金が純粋に少なくて済みますし、グローバル企業にとっては人件費(賃金)というコストの価格が下がるわけですから、国内の物価下落は彼らにとっては大変喜ばしいことなのです。

つまり、投資家やグローバル企業から見た物価と、我々一般庶民から見た物価は、大きく意味が異なります。
すなわち、我々一般庶民にとって生産者・販売者側と消費者側の両側面の意味があるのに対し、投資家やグローバル企業にとっては消費者側の意味しかないのです“。

“物価が安い”ことは、本当に良いことなのか

巷の広告には“安さ”をアピールする広告が溢れ、“モノやサービスは安い方が良い”という価値観のみが正しいと思わされがちです。

しかし、立ち止まって一瞬だけ冷静に考えてみましょう。

“モノやサービスが安い”ということは、我々一般庶民の賃金が低いということに他ならないのです。


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