11月14日(土)。
晩秋とは思えないほどの陽気だったので、単衣の着物。
しょうざん生紬に博多織の帯。
博多座で海老蔵さんの特別公演です。
木乃花会の企画にお世話になりました。
昼の部の演目は2つ。
【流星】
きれいなタイトルなのでロマンチックな物語かと思いきや、「流星」というキャラクターなのですね。
織姫・彦星の年に一度の逢瀬の場にけたたましくやってきた流星くん。
見聞きした雷夫婦の喧嘩の模様を一人芝居で熱演します。
雷の夫、雷の妻、雷の子供、そして雷の老婆と一人何役もこなすのですが、その都度ツノを取り換える芸の細かさ。老婆のツノはちょっと曲がってたりするのです(笑)
コントを見ているかのようなテンポの良さ。
ひとしきりしゃべって去っていった流星くんですが、デートを邪魔された織姫・彦星からすれば「いいから早よ帰れ」ですよね。
【勧進帳】
市川家のお家芸ですが恥ずかしながら生で観るのは初めて。
海老蔵さんの気迫あふれる眼力と見得、オペラグラスでガン見しました。
修験者を装って安宅関を超えようとする義経主従。怪しむ富樫左衛門。
勧進帳をめぐり、前職の経験を生かしてそれっぽく言いのける弁慶と、専門知識でツッコミを入れて真偽を問う富樫。
二人の掛け合いがスリリングで、結末がわかっているのにハラハラドキドキ。
イヤホンガイドがこの会話を解説してくれるのかなーと思いきや、「ここは仏教用語満載の専門的な会話で両者が一歩も譲らぬ駆け引きをしているのだと思召して楽しんでいただければ幸いでございます」と(笑)
いやそれにしても。
ハッタリかましてなんとか乗り切るってこと、仕事の場でもありますよね。
いつだったか、担当が急病で急遽ピンチヒッターで役員プレゼンさせられたっけ。
質疑が怖くて「では説明は以上となります」でそそくさ閉じようとしたら
「ああちょっといいかな」と質問責め。
「私もここに書いてある以上のことは知らないんですう 涙」と心の中で絶叫しつつ
「あーそれはですねえーと」とゴニョゴニョごまかしたんでした。
あやふやな説明だったので結局その事案は指摘事項を改善する条件で見送り。
なのに復帰した担当者め。
「あーその質問ならこう答えてくれれば絶対にパスしたのにー」ですと。
お前がハラ壊すのが悪いんだろ!
弁慶は心で泣きながら義経を打擲(ちょうちゃく)しましたが、
あの恩知らず相手だったら心を込めて全身全霊でチョウチャクできる。
なんなら富樫の前で首をはねてやってもいい。
そんな思いが呼び起こされた「勧進帳」でした。