希少なルネサンスアート ボッティチェリ作の肖像画 ニューヨーク Sotheby’s でオークションに!なんと見積もり額84億円

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希少なルネサンスの巨匠、ボッティチェリの作品が、ニューヨークのサザビーズ (Sotheby’s) で、来年2021年1月に開催される、古典西洋美術、Old Master のオークションのハイライトとして登場することが発表されました。今回売りに出されることになった作品は、コインを持った若い男性を描いた肖像画、”Young Man Holding a Roundel” で、メトロポリタン美術館に貸し出され、展示されていたこともあり、見たことがあるという人もいると思いますが、なんとその見積もり額は、8000万ドル(約84億円)とされています。今年になって急遽世界を席巻したコロナは、あらゆる分野に影響を及ぼしていますが、アートマーケットへの影響を見る上でも注目のオークションになりそうです。

中世後期の15-16世紀頃、イタリアのフィレンツェで起こったルネサンスは、その後の西洋美術に大きな影響を与えました。そんなルネサンス期の代表的アーティストの一人が、サンドロ・ボッティチェリ (Sandro Botticelli) です。ボッティチェリの代表作といえば、世界中の多くの人が本や教科書などで見たことがあるだろう、フィレンツェにある大人気ルネサンスアートミュージアム、ウフィツィ美術館所蔵の「プリマヴェーラ」や「ヴィーナスの誕生」です。

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ボッティチェリの作品は、ウフィツィ美術館をはじめ、世界の主要美術館のコレクションとなっていることが多く、なかなか市場に登場することがない、大変希少な存在となっていますが、来年2021年1月、ニューヨークの Sotheby’s で開催される古典西洋美術 (Old Masters) のオークションに出品されることが発表されました。売りに出されるのは、ボッティチェリのパトロンでもあったメディチ家の人物とも言われる、コインを持った若い男性を描いた1480年頃の肖像画、”Young Man Holding a Roundel” です。売り手は公表されていませんが、1982年に、£810,000 で購入したものだそうで、見積額は、八千万ドル前後とされ、一億ドルを超える可能性もあるとされる大型案件です。500年以上前の作品ですが、メトロポリタン美術館で見た時の印象では、とても状態が良く、長年、しっかりと管理されて来た感じを受けました。

前回、ボッティチェリの作品が、マーケットに登場したのは2013年、ロックフェラーマドンナとして知られる、聖母子を描いた “Madonna and Child with Young Saint John the Baptist” で、ニューヨークのクリスティーズ (Christie’s) で、1040万ドル(約11億円)で落札されました。

ルネサンス期の作品では、ダヴィンチ作とされる、サルバトールムンディは、2017年、なんと 4.5億ドル(510億円)で落札されています。

ダヴィンチの作品が史上最高値で落札!クリスティーズ・ニューヨーク

パンデミック以降のアート市場で大きな取引と言えば、BLM 運動が盛り上がった6月に、シタデルの創業者でCEOの Ken Griffin さんが、バスキアの作品を一億ドル超で購入し、話題になりました。全般的に、超富裕層は、各国政府や中央銀行のおかげもあり、パンデミックにも関わらず資産が激増しているようですが、アートマーケットにどんな影響があるのかが明らかになる注目のオークションです。

サンドロ・ボッティチェリ (Sandro Botticelli) は、15世紀後半に、フィレンツェで活躍した、ルネサンス初期の代表的なアーティストです。ルネサンスといえば、ダヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロの三大巨匠がよく知られていますが、ボッティチェリは、その少し前に活躍したアーティストで、3人の中で最年長のダヴィンチよりも7歳年上です。西洋美術といえば、宗教画として、キリスト教の歴史と共に発展して来ましたが、大きな変わり目となったのが、ギリシア神話をはじめ宗教画以外も手掛けるようになっていった人文主義のルネサンス期でした。
ボッティチェリは、ヴィーナスの誕生 (The Birth of Venus, c. 1485) や、プリマヴェーラ (Primavera, c. 1482) などルネサンスといったら思い浮かぶ作品を描いた著名なアーティストです。ウフィツィ美術館を訪れた際、ボッティチェリの作品は、それはそれは大変な人気でした。

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ボッティチェリは、ウフィツィ美術館で最も大きくフィーチャーされているアーティストの一人で、有名な2作品以外にも色々な作品が展示されています。
ボッティチェリが、最も活躍したのが、独立後の1470年代から1490年代にかけてで、当時のフィレンツェを支配していたメディチ家が有力なパトロンでした。
こちらは、若い男性が、メディチ家当主だった、コジモ・デ・メディチ (Cosimo de’ Medici) が描かれたコインを持った姿が描かれた1474年の作品、”Portrait of a Man with a Medal of Cosimo the Elder” です。”Young Man Holding a Roundel” 同様のモチーフで、当時の人気のポーズだったのかもしれません。

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ボッティチェリは、肖像画の他、当時主流だった宗教画、得意としたギリシア神話風の作品など当時としては、とても幅広いジャンルの作品を残しています。
最もボッティチェリらしい作品と言えば、ギリシア神話を基にしたファンタジー風の幻想的な作品です。
こちらは、1482年頃の作品、「パラスとケンタウロス」(Pallas and the Centaur)。

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こちらもギリシアの偉大なアーティストの話を元に描かれた作品、「アペレスの誹謗」(Calumny of Apelles) で、1494-95年頃に描かれました。

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ルネサンスの中心だったフィレンツェにある、ウフィツィ美術館は、ルネサンスの三大巨匠とされる、ボッティチェリ、ダヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロをはじめ素晴らしいルネサンスアートのコレクションを誇っている、イタリア、フィレンツェの美術館の中でも一二を争う人気スポットになっています。

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ボッティチェリの師匠だったのが、当時フィレンツェでトップレベルのアーティストだった、フラ・フィリッポ・リッピ (Fra Filippo Lippi) です。こちらは、リッピの作品ですが、共通点が感じられます。ボッティチェリは、リッピの死後、リッピの息子である、フィリピーノ・リッピ (Filippino Lippi) を弟子に迎えています。

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ボッティチェリは、リッピの下を離れた後、ダヴィンチの師匠としても知られる、ヴェロッキオの工房で修業していた時期もあり、ヴェロッキオはもちろん、その他、同時代の多くのアーティイストに影響を与え、受けていたと思われます。昨年から今年の年初にかけて、ワシントンDCのナショナルギャラリーでは、ヴェロッキオの特別展が開催されていましたが、ボッティチェリの作品も一緒に展示されていました。

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ボッティチェリは、当時、イタリアではとても有名なアーティストでしたが、その後、ダヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロらの名声が高まる一方、世界的には、あまり知られていないアーティイストでした。そんなボッティチェリの功績が、世界的に再評価されたのは、ラファエロやミケランジェロらルネサンス期の巨匠の人気が高まり、そんなラファエロらルネサンス期盛期に活躍した巨匠へ影響を与えたアーティストとし知られるようになった19世紀後半のイギリスにおいてでした。オークションに登場する “Young Man Holding a Roundel” も、ロンドンのナショナルギャラリーでも展示されていたことがありますが、現在も「ヴィーナスとマルス」 (Venus and Mars) をはじめボッティチェリの素晴らしい作品が展示されています。

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アメリカでも、ワシントンDCのナショナルギャラリー、ニューヨークの メトロポリタン美術館 などの主要美術館で、ボッティチェリの作品が展示されています。”Young Man Holding a Roundel” は、これまで、ロンドンのナショナルギャラリー、ワシントンDCのナショナルギャラリー、メトロポリタン美術館に貸し出され展示されていたことがあり、見たことがあるという人もいると思いますが、どんなプライスとなるのか、注目のオークションです。

希少なルネサンスアート ボッティチェリ作の肖像画 ニューヨーク Sotheby’s でオークションに!なんと見積もり額84億円 was last modified: 9月 27th, 2020 by mikissh