Fish On The Boat

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『ぼくの好きなコロッケ。』

2019-03-31 21:35:12 | 読書。
読書。
『ぼくの好きなコロッケ。』 糸井重里
を読んだ。

ほぼ日でおなじみの糸井重里さんによる
「小さいことば」シリーズ2013年版です。
このシリーズは大好きで、
でもしばらく読んでいなかったですが、
ようやくAmazonダンボールから出てまいりましたので、
読んだのでした。

いつもどおり、小さいことばがよく響いてきます。
納得したり、それ自分も考えていた!というのがあったり
(そのタネは2013年のこれだったりする可能性はありますが)。
穏やかに、平静に頭を使えばの言葉たちです。

本書の真ん中くらいに、
コロッケへのこだわりと熱情とたぶん愛もたっぷりのエッセイがあるんですが、
いやあ好い文章でした。
ここのところだけ額にいれて飾っておきたいくらい。
そこまで手を伸ばすか、ってくらい伸びのびと、
隅っこや裏側や暗がりにまで言葉が届いていました。
中身の豊かなエッセイの見本ですね。
食べもののエッセイっていうと、
昔読んだ開高健さんのものがありましたが、
熱気的には近いものがあったかもしれません。

また、俺もちょっと不幸になってみたい、
っていう願望ってもってる、みたいなところがありました。
不幸の経験が自分を引きたてるんじゃないかと思うこと、ですよね。
他の人とは違った角度から照明をあびるみたいな。
自分をちょっとドラマチックにする期待が不幸を求める。
でもですね、
本当の不幸というか困難って、都合のいいものではないから実に厄介です。
そこはちょっと、うんうんと同意するには自分はズレてるなあ。

最後の方ではおまじないをみつけてしまいました。
これはとっても使えそうです。
「じぶんなりのせいいっぱい」を「やってみようか」と自分に言ってれたら、
少なくとも、自分は取り戻せると思う、と述べているところです。
これはなんとなく頭でイメージしてみたらしっくりきました。
僕は接客業ですけれど、一対一とか一対一家族くらいだとすんなり接客できるんです。
そのくらいの規模だったら、比較的うまく喋れます。
ただ、30名の高校生を相手にガイドを、だとかになると、
途端にわけがわからなくなり、うまくやれたとしても杓子定規になってしまう。
そこで、この、
「じぶんなりのせいいっぱい」をこころがけたら、
なんだかうまくいきそうな気がしました。
30人だとかのみんなの心象を気にしちゃうからなんだろうなあ。
100人だとかいたらも無理ですからね。
でも、「じぶんなりのせいいっぱい」でいいなら、
なんとかなりそうな気配がある。
このあたりの話は、大勢の客さんを前にしたときの「楽しめ」と
自分に言ってやるという矢沢永吉さんの話につながっていきますが、
僕の場合は、「楽しめ」よりも、
「じぶんなりのせいいっぱい」を考えた方がわかりやすいみたいです。

そんなこんなで、
今回も善き哉~。
小さいことばシリーズは、さらなる抜粋バージョンもありますので、
そちらからお試しになってもよいかもしれないです。
おもしろかった。


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