Fish On The Boat

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『小説王』

2019-03-29 00:00:19 | 読書。
読書。
『小説王』 早見和真
を読んだ。

つい最近、文庫化され、四月からはドラマ化される作品。
僕は単行本で読みました。
友人にすすめられて買ってから、3年くらい積読だったようです。

売れない小説家・吉田豊隆と、
編集者・小柳俊太郎の二人を中心にした、
アツい文芸活劇です。
僕自身がアマチュアであったとしても小説を書くためなのか、
いや、本好きならば誰でもそうなのかもしれないですが、
時間を忘れて食い入るように読んでしまった作品でした。
文芸に対して直球勝負してます。

小説読んだときに感じる、ヒリつき。
そういったものが大事なところなのだと、
本作品では随所で言われている。
たしかに、読んでみても作品が遠い感じのものもあるし、
一向に仲良くなれないように感じるものもあります。
でもそれは読み手の読み方が浅すぎるためなんじゃないかと
僕なんかは考えていた節はあるんです、
近年になって読解力が鍛えられてきたためか、
どんなものでも売りものならいちおう楽しく読めるので。

かたや、自分の書いたものにヒリつく感じはあるだろうか。
これは僕の作風というか、性格というか、
怒りで書かないせいか、柔らかいものを好んでしまう。
でも、それが面白くて、読み手をひきつけるものならば問題ない。
それが、読み難く、得るものもなく、
すべて文章としてさらされているから質が悪いと評価されるのかもしれない。
評価されるように書くならば、迎合っていったらおかしいけれど、
過去の受賞作を調べたり、自分から寄せていく行為って必要なのかなあと思案しました。

閑話休題。
序盤から憎たらしかったり、食えないなと感じたりする、
付き合いたくないようなキャラたちが、
だんだん面白みのあるキャラに感じられていく。
そういった濃厚なキャラ作りは僕も見習いたいですね。
みんな、ひと癖ありながら、それがスパイスになっているのか、
人間らしいんですよ。
そして、そんな人間くさいキャラクターたちが本当にアツくて、
ここに著者がどのくらいの距離感で本作に向き合っていたのか、
とても興味が湧いてきました。

きっとね、この物語を真に受けて――いい意味でですが――奮起したり、
自分の夢を決めたりする人もいそうです。
そうやってみて、ストレートにうまくいかなくても
ドタバタした人生を送るのって、案外おもしろいというか、
その苦さが人生の醍醐味のひとつでもあります。
いろいろな作家たちが、
いろいろな渾身のパンチみたいな作品を世の中に投げ込みますが、
本作品もそのなかのひとつ。
よい読書時間を過ごせるでしょうし、
その余韻が、読者の背中を押すこともあるだろうと思いました。

著者 : 早見和真
小学館
発売日 : 2016-05-10

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