Fish On The Boat

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『ドラッカーに学ぶ自分の可能性を最大限に引き出す方法』

2020-06-22 18:30:27 | 読書。
読書。
『ドラッカーに学ぶ自分の可能性を最大限に引き出す方法』 ブルース・ローゼンステイン 上田惇生 監訳 井坂康志 訳
を読んだ。

経営学の父、P・F・ドラッカーの著作や言葉から、
著者ローゼンステインが、「この時代の人生の送り方」についての指針となる、
的を射ていてわかりやすいものを抜粋し、
体系的に編んだ本です。

ドラッカーは経営学の神様みたいに言われる人ですが、
経営学という言葉から連想されるような上手なお金の儲け方、
つまりお金やモノの動きなどよりも、
社会や人間の在り様に好奇心と探求心を持った人です。
仕事を通して自己実現できたらいいじゃないか、という理想の下、
それを実現すべく、方法や理論を考え、
そしてそれらを現実に落としこんでいくことに頭をしぼった。
本書は、こういったドラッカーの軌跡から多数生まれ出た言葉のなかから、
エッセンスを「よりよい生き方」のためにクリティカルにまとめてあります。
幸せになろうよ、という思想が背景にちゃんとあってのドラッカー経営学なのです。

そのためには、
パラレルキャリア(副業)やセカンドキャリアが大切なのだよ、とドラッカーはおっしゃっている。
なかでも、パラレルキャリアでは、ボランティアやNPOを推奨しています。
社会をよりよくするために力を注ぐことで、自分のこころが生きいきしてくる。
個人が幸せになるためには、そういった利他的活動が必要だという考えを基軸になっている。
また、複数の世界で活躍することで、
得られる学びや経験がそれぞれ別の世界にフィードバックして、良い効果があるとも述べています。
「私の知る限り、充実した人生を送る人は二つ以上の世界を持っている。
一つだけというのは寂しい。政治の世界にその手合いは多い。」(2005年4月 インタビューより・本書8ページ)

そして、知識社会となった現代では、
生涯学習あってこそだ、と時代の本筋を看破したうえで処方箋を述べています。
そこでは、人に教えることも学ぶことになるのだ、と教えてくれる。
非常勤講師でもいいし、職場での指導役でもいいのでしょう。
もっとかんたんな行為だと、たとえばこのブログで僕がやっているように、
読んだ本の内容をいくらか教示するために記事として書きしるすことだって、
教えて学ぶ、という種類の行為かもしれない。

これは! と思い、胸に残ったのは、サーバント・リーダーについてのいくつかの文章でした。
サーバント・リーダーとはなんぞや? と言葉の意味を知りたくなるところですが、
フォロワーに対して「自分の指示通りに従ってください」と他律性でしばって動かすのではなく、
フォロワー自らが考えて、自律的に価値ある貢献をするようになるために促すリーダーのタイプのことだそうです。
まとめると、サーバント・リーダーもフォロワーもそれぞれ自律的に、
職場や組織のコンセプトの中でプラスの価値を生みだす、そういった状況をよしとする考えです。

こういうのは、リーダーの資質のみならず、フォロワーの人間性や価値観と、
彼ら同士の相性も深く関係するものだと思うのですが、
僕はどっちかというと得意な方です(手前みそですが)。
子ども時代、わりかしリーダー的な立場でしたが、
あまり目立たないタイプの友だちのおもしろいところを無理なく引き出すことは何度とあったと思う。
そうして、友だちたちが存在感を増していって、仲間全体が粒ぞろいになることをよしとしました。
サーバント・リーダーはそういう感覚のあり方でしょう。

というところですが、
自己啓発本ですから、のめり込み過ぎないで、
自分をちょっと振り返って確かめてみる感じで読むといいと思います。
人にあれこれ「こうするといい」「これじゃだめよ」みたいに直されるのがイヤな人は、
自己啓発本を読むとちょっと疲れるでしょう。
けれども、本書はあまり文章量が多くなく、読者が自分で考える時間を考慮してある作り方なので、
距離を取りつつも検算するように客観的に自分をみてみるのに適しているのではないでしょうか。

ドラッカーはあたたかな経営を目指した人という感じのする人です。
本書ではなくとも、彼のその知性を一度だけだとしても通過しておいてみる、のは、
決して徒労ではないはずだと思います。


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