２年間、肉や魚を極力抑え、チーズ、バター、揚げ物のない食生活に挑戦したクローン病の患者さんたちがいます。寛解維持が目的でした。
治験の主催は、秋田市の仲通総合病院の消化器管科で、２００４年から２００８年にかけて行われました。

 

２００８年　治験終了時の結果
・１０人は、この厳しい食事療法を終了させたとき寛解。
・ひとりは、食事療法を完遂しましたが、あと２か月というところで再燃。
・４人は、まだ追跡観察の２年間がたっていませんでした。３人は、目標の２年間まで数か月から１１か月を残していて、食事療法を続行中。ひとりは、１年半後に食事を中止。全員寛解中。
・２人は、リウマチ治療と引っ越しのため、１年過ぎにリストから外れました。そのとき、寛解を維持。
・４人は、食事療法を止めた後、再燃。
・ひとりは、退院直後から食事療法を中止しましたが、２年間寛解。

 

２２人の患者さんは、治験開始前、全員、入院していました。病院食は、超低たんぱく質食事療法に基づいたメニューでした。退院する前に、全員と家族が、病院内の料理教室に参加し、玄米の炊き方からおかずの作り方までを習いました。

 

◎　２年間の食事療法を完了し、寛解を維持した１０人

☆　５２歳の女性。初めてクローン病と診断され１か月未満でした。１年たった時、ソルファサラジン（サラゾピリン®）を止め、最後の１年間は薬なしで通しました。

☆　２２歳の男性。入院したのは再燃のため。クローン病歴は５年。治験開始前の炎症指数は、２２人の中で最も高値でした。

☆　１９歳の男性。初発症で病歴は４か月。食事療法の前までは、ずっと洋食が多い食事でした。

☆　２１歳の女性。初発症で病歴は３か月。退院時、寛解まであともう少しでした。２年後の炎症指数は、炎症なしを示す０。

☆　５０歳の女性。初発症で病歴は１か月。２年後の炎症指数は０。全員の中で、検査値は、最も平均的で模範的でした。

☆　２８歳の男性。初発症で病歴は３か月。軽症でしたが、インフレキシマブを使って一気に寛解へもっていきました。２年後の炎症指数は０。

☆　４５歳の女性。クローン病１３年目。以前、手術を受けたことがあり、入院中に再手術を受けていました。

☆　２１歳の男性。２年前に発症してから、炎症がずっと続いていました。手術入院がきっかけで治験に参加。入院した時、２２人の中で最もがりがりに痩せていました。２年たった時、体重がかなり戻っていました。

☆　３４歳の男性。１７歳の時にクローン病と診断されました。
入院中は、物が食べられず、栄養が含まれた液体だけを飲む療法をしていました。最高８週間までしか実施できないクローン病のための特別な療法でした。
入院中に寛解に入り、退院後、２年間、薬は、何も使いませんでした。大きな決断だったと察します。

☆　２５歳の男性。初発症は、２２人の中ではいちばん早く、１２歳の時。手術入院をきっかけに治験に参加。

☆　食事療法を続けていたのに、再燃してしまった人がひとりいました。
３０歳の男性でした。初発症で、病気になってから６か月目で入院。食事療法を学び退院。再燃したのは１年９か月目でした。
食事療法をする前は、西洋食が多かったことから、和食が多いこの食事療法は、大きな挑戦でした。
再燃した後も、食事療法を続け、２年間の観察期間を終了しています。

 

【コメント】
誰にとっても、白米から玄米への変更、肉と魚はごくわずかで、チーズやバターのない食生活への転換は、一大決心です。寛解を維持するという大きな目標があったとはいえ、好きなものを食べたいだけ食べられないというストレスとの葛藤は、相当なものだったと想像します。
それだけでなく、家族との食事、友達や職場の人との外食など、乗り越えなければならない壁がたくさんあったのでは。

自分で料理した、家族が料理した。そこにもたくさんのドラマがあったと想像されます。

そんな人たちの生の声、体験談があったら、後に続く人たちの勇気につながっただろうと思いました。

 

【参考文献】
１）クローン病、潰瘍性大腸炎に効果的なセミベジェタリアン食に関する論文が 「World Journal of Gastroenterology」に掲載
～ セミベジェタリアン食が再燃防止に極めて有効 ～
 社会医療法人明和会 中通総合病院 消化器内科　千葉 満郎医師ら
２）生活スタイルに関連して起きるクローン病。準ベジタリアン食事療法で再燃は防げる　２０１０年
Lifestyle-related disease in Crohn's disease: relapse prevention by a semi-vegetarian diet.
 World J Gastroenterol. 2010 May 28