5)クローン病の長期寛解者に学ぶ: 食べたい物が食べられない苦しみ | 潰瘍性大腸炎 & クローン病&過敏性腸症候群の改善・完治・根治

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★3人目 28歳の男性

● 症状 
クローン病と診断されてまだ2か月ほどでした。大腸型でした。

● 入院時
体内の体内の出血度を表すCRP値は、2.5mg/dlで中度強。
クローン病の症状度を表すCDAIは、88で経度でした。
体内の

●入院中
1週間の断食後、インフレキシマブを使用。
退院時のCRP値は、0.5mg/dlで、内視鏡検査では、寛解間近と診断されました。
CDAIも、59と改善。

● 退院後
メサラジンを服用しながら食事療法を行っていました。ですが、3か月たたないうちに、食事療法は中止に。そのあとしばらく寛解を維持していましたが、最終的には、再燃。

● 再燃時  191日目
CRP値は、中度の5.7mg/dlでした。
CDAIは、中度に近い軽度で192。入院前よりも悪化していました。たぶん中度の出血と軽度の腹痛があり、トイレ通いが頻繁になってしまった。
体内の栄養度を表すアルブミン値は、入院時は3.0g/dl退院時は4.4g/dlと基準値へ回復、再燃時は、3.9g/dlと基準値ぎりぎりでした。
貧血度を表すヘモグロビン値は、入退院時は、10.8g/dlでしたが、再燃時は、7.0g/dlと、かなり悪化していました。

【コメント】
入院時の炎症度は軽度で、退院時は、さらに改善していました。
入退院時のヘモグロビン値は低く、鉄分を服用していたと推測されます。
再燃してしまったときのヘモグロビン値は、7.0でひどく低かった。かなり出血してしまったと推測されます。

医療観察期間は、2年間。その前に終了してしまったのは、再燃のため、治療が必要になったから。メサラジンだけでは、もう対応できないほどに悪化していた。

他の患者さんの検査値を参考にすると、初発症でもあったことから、食事療法を続けていれば、2年後、寛解していた可能性は、とても髙かった。
それだけに、3か月もたたないうちに食事療法を止めてしまったのは、本当に残念です。

退院後、6か月ちょっとの時に再燃し、症状は、入院時よりもひどくなっていました。なぜか? 
入院前は、ずっと洋食系の食事をしてきていました。入院中に、肉や油物は、炎症を悪化させると説明を受けていたはずですが、初めてクローン病になり、何も知らない状態だったことから、真剣に受け止めることはなかった。もしかすると、退院時の検査値が良くなっていたのは、薬のおかげで、食事療法はまったく関係がないと思っていたかもしれません。

ですが、実際のところ、寛解維持は、食事のありかたに大きく依存していた。
その割合は、食事が60%から100%で、薬が0%から40%ぐらいだったかも。* 筆者の推測。

◇ 食べたいものが食べられない葛藤
男性が、食事療法を続けられなかった理由として、母親が肉を料理して食べさせてしまったと報告されています。なぜそうなったのか? 
男性は、入院するまで洋食が多めの食事でした。20代の食欲旺盛な年齢で、他の同年齢の男性たちと同様に、毎日、肉料理を楽しんで食べていたと予想します。それが、いきなり、1か月に1度、それも、ほんのわずかしか食べられなくなってしまった。
好きな物が長期に渡り食べられないということは、想像以上に辛く厳しく、大きなストレスです。
男性が、母親に作って欲しいと懇願したのか? 男性がひどいストレスに陥り、その怒りや苦しみ、悲しみが、母親や他の家族に向けられ、家庭が危機に陥り、耐えられなくなった母親が、肉を料理してしまったのか?
担当医師は、男性に、再燃後、食事療法をするようにアドバイスしました。が、男性が食事療法に戻ることはありませんでした。それほどに、葛藤は激しかったと想像されます。

【論点】
・男性が、入院中、および、退院後に、クローン病の長期体験者の話を複数から何度も聞く機会があったら、状況は変わっていたか?
・肉もどき(菜食主義用の野菜だけを使った肉に似せたハンバーグやソーセージ)を食べていたら、食事療法は継続できたのか?

●植物性のハンバーグやソーセージ
カナダでは、穀物や豆の粉を混ぜ合わせ、スパイスを使って作ったハンバーガーやソーセージがあります。どうやって加工したのかわかりませんが、不思議にも、ちょっと炒めすぎかなと思うような、美味しい肉のように噛み応えがあり、これ肉?と思うような味付けです。
食品添加物をたくさん使っている商品と、使っていない健康的な食品があります。いずれも、高いのがネック! 
高価でも、食事療法の最初の滑り出しの期間だけ使って、あとは、徐々に減らしていけば、経済的にも可能と思われます。
日本では、小麦粉のグルテンを使った鶏の空揚げを食べたことがあります。鶏肉とまったく同じ味付け、噛み応えで、料理してくれた人が説明してくれるまで、その場にいた人たち全員、気がつきませんでした。オーガニックの店で買ったと言っていました。ただし、小麦粉を食べると、おなかがゆるくなる人は不可です。

【検査】
検査についての詳しい説明は、ブログ右側にあるリストの中の「検査」をクリックしてご覧ください。

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検査値

★ CRP(C-アクティブ・プロテイン)    単位(mg/dℓ)    
    

0  まったく炎症がない状態です。
0.1  正常値の範囲。
0.2  正常値の範囲。
0.3  基準値内ですが、実際、症状を見た場合、重症のときもあります。


0.4~0.9 軽い炎症など 
1.0~2.0 中程度   
2.0~15.0 中程度以上 
15.0~20.0 重体   

★ クローン病の重症度を表すCDAI    
軽症    150-200        
中等症    220-450    
重症    450以上    膿瘍など    


★ アルブミン値
3.8-5.3g/dℓ


★ ヘモグロビン 基準値
男  13.8-17.5g/dℓ
女  12.0-15.1g/dℓ

★ BMI
痩せすぎ       標準        太りすぎ     超肥満
18.4以下   18.5-24.9  25.0-29.9  30.0以上


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【背景】
秋田市の仲通総合病院には、2003年から2008年にかけて、クローン病の患者22人が入院しました。退院後、患者らは、2年に渡り、医療観察を受けています。
今回のシリーズでは、病院が発表した報告書をもとに、クローン病の寛解を長期に、あるいは、永遠に継続させる方法を模索していきます。
病院のスタッフの皆様、患者の皆様には、情報を提供していただき、こころから感謝しています。

注:
インフレキシマブは、レミケード®、その他、国内ではまだ認可されていないアメリカの薬が使われていました。
メサラジンは、ペンタサ®です。アサコールは、まだ認可されていませんでした。
注: 筆者は、医療関係者ではありません。記事は、参考程度にお読みください。


【参考文献】
1)クローン病、潰瘍性大腸炎に効果的なセミベジェタリアン食に関する論文が 「World Journal of Gastroenterology」で掲載
~ セミベジェタリアン食が再燃防止に極めて有効 ~
 社会医療法人明和会 中通総合病院 消化器内科 千葉 満郎医師ら
2)生活スタイルに関連して起きるクローン病。準ベジタリアン食事療法で再燃は防げる 2010年
Lifestyle-related disease in Crohn's disease: relapse prevention by a semi-vegetarian diet.
 World J Gastroenterol. 2010 May 28