19世紀フランスの風景画家、シャルル=フランソワ・ドービニー(1817~1878)の国内初の本格的な展覧会。

少し前になってしまいますが、内覧会に行って参りました。

 

屋外に魅了されたドービニーは、1843年以降、バルビゾンに何度も滞在しました。

 

自慢のアトリエ船「ボタン号」でセーヌ河やオワーズ川など各地の河川を航行。水辺の情景を多数描きました。下の写真:右は二代目のアトリエ船「ボッタン号」。

儚さや一瞬の動きを、素早い筆触で再現しようとした最初の画家の1人です。

 

 

写真右:シャルル=フランソワ・ドービニー
《ボッタン号》1869年頃
油彩、カンヴァス
フランス、個人蔵

 

直接の面識はなかったものの、流通した版画で知ったゴッホからも尊敬されていました。

ひろしま美術館には、ゴッホ作≪ドービニーの庭≫が所蔵されています。

(ドービニーがアトリエを構えたオーヴェールで過ごした晩年の作)

 

飾り気のない素朴な絵は、実は卓越した手法に裏打ちされています。30代後半からはサロンにも出展、高い技術が好評でした。

出展作のうち、大作はサロン向け、小品は習作とのこと。

白と黒のコントラストが抒情的でした。

 

並べた単色で表現した明るい空に水平線が大きく広がる作品たちには、すでに印象派の兆しが見られます。

 

 

 

バルビゾンの画家として数えられるのが普通ですが、印象派の芽もすでに見られ、バルビゾン派から印象派への移行期の画家といえます。ちょうど印象派が活躍し始めた時期に死去しました。

ディーゼルを持って外で描く「現場主義」、自然に対する姿勢が共通するドービニーの活躍は、おおいに印象派の面々を刺激、後押ししたことでしょう。

 


 

息子カールは風景画、長女セシルは静物画を制作。カールの作品は2点出品されています。


現在はご子孫が記念館を管理・運営なさっているとのこと、今回の展覧会にも15点ほどの作品が出品。

 

なお、同時代の仲間たちの作品として、日本でも知名度のあるコローやルソー、それにやや明るい作風のデュプレも第1展示室に展示されています。

 

ちなみに、この美術館の魅力の1つが、この開放的な眺望。

高層ビル42階にある美術館は、日本でここだけです。

新宿西口・高層ビル街の一角にありますので、(この写真では方向が違って写っていませんが)スカイツリーまで見渡すことができます。

手前にある変わった建物はデザイン学校です。

 

しかし、来年2020年5月には、現在本社敷地内に建設中の6階建てのビルに移転してしまいます。

 

以後は、もうこんな光景は見られないのが残念ですね。

特に夕暮れ時は壮観でしたので残念です。

 

2019年9月30日から2020年2月14日までは休館ですので、今の場所で展覧会が楽しめる期間は、実質あと半年をきっています。

気になった皆さんは、是非今のうちに訪れてみてくださいね。

 

 

引用:公益財団法人損保ジャパン日本興亜美術財団プレスリリース

https://www.sjnk-museum.org/wp/wp-content/uploads/2018/10/pr_shinkan_20181012.pdf

 

 

※内覧会のため、館内風景としての写真撮影に限って主催者から許可されています。

 

 

【展覧会情報】

シャルル=フランソワ・ドービニー展

2019年4月20日(土)~6月30日(日)

東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階

最寄駅:JR新宿