戦後の日本で、日本人に欧米型の食生活をさせるためのアメリカによる戦略はものの見事に成功を収めた。



こうした歴史的背景のなかで、「食と健康」の間違った常識がつくられた結果、食生活に関して、「肉を食べれば強いからだになれる」「アメリカ型の食生活が理想だ」「一つひとつの食品の栄養素を考えて食事をすることが科学的で正しい」との錯覚を植えつけられてしまいました。

しかし、現実には、タンパク質や食物繊維などという食べ物は、存在しません。食べ物から“栄養素”だけを取り出し分析し、「この栄養素は健康にいい、これは悪い」と言っているだけに過ぎない現在の栄養学は、現実とはかけ離れたものになっています。

この現実とかけ離れた「栄養学」は、さらに食生活を非常にわかりにくいものにし、「牛乳を飲むと骨が丈夫になる」「青魚を食べると頭が良くなる」「ヨーグルトには老化防止効果がある」といった、誤った「一品健康食」が次々と登場する元凶にもなっています。

 このように、現代人の食生活は、誤った健康情報や常識に縛られ、混濁し、不自由なものになっています。このような“観念”の呪縛から逃れるためには、まず“身体”が何を求めているか?に耳を傾け、“みんな”の食の期待は何か?を見つめなおす必要があるように思います。

ホノルル大学客員教授 久間 英一郎

中高年の方の食養相談に乗っていて、「牛乳」に対する錯覚(牛乳は、飲めば飲むほど健康によい)がひどく、これは健康上、憂々しきことですので今回はこの問題について書きます。

この錯覚はどこから来たのか。戦後のアメリカの占領政策(日本にパン食を定着させてアメリカの小麦を売りたい)に端を発しています。パン食に味噌汁は合いませんので必然的にパンには牛乳ということになります。また、「牛乳は完全食品だから健康によい」と学校給食に取り入れられたり、保健所・医師がこぞって勧めるに到ってからは、日本人は、「牛乳=カルシウム(完全食品)=骨(健康)」という公式がマインドコントロールされてしまったのです。

結論からいってこれは正しくない。宮崎大学教授、島田彰夫氏はいう。「牛乳は栄養価の高い?完全食品?とよくいわれますが、それは間違いですね。子牛にとっては完全食品でも、離乳期を過ぎた大人の日本人には一切の乳製品は不要です。」

確かに、牛乳は子牛(生まれた時約50kg)がわずか2~3年で成牛(400~1000kg)になるのに必要な完全栄養食品です。この牛にとって完全食品を人が摂るとどうなるか。一言でいうと、「早熟」と「早老」をもたらす。体は早く大きくなるが様々な病気にかかりやすくなるのです。

具体的にいうと、牛乳に含まれる乳糖は、ラクターゼという分解酵素によって分解されるのですが、このラクターゼが日本人を含むアジア人、アフリカ人などの場合、離乳期以降は分泌されなくなるのです。「分解酵素がないのに牛乳を飲み続けるとどうなるか。乳類に含まれているカルシウムが吸収できないだけでなく、他の食品から摂取したカルシウムを体外へ排せつしてしまうというデータがすでに1960年代に報告されています。」(島田教授)

つまり、骨を強くしようとして飲んだ牛乳が逆効果になるというのです。これには牛乳に多く含まれているリン(母乳の6倍)が深くかかわっているといいます。リンは食品の酸性度を示す指標になっているくらいですから、アルカリの指標となっているカルシウムを奪い骨を弱めることは容易に理解できるところです。

日本綜合医学会永世会長の沼田勇博士は別の視点から牛乳と骨の関係について説明します。「牛乳はビタミンCを弱める。ビタミンCは骨を健康に保つコラーゲンの合成に不可欠。従って牛乳は骨を弱めるのです。」実際、世界一牛乳を飲んでいるノルウェーの骨折率は日本の5倍といわれています。

次に牛乳に含まれる脂肪の質が問題です。牛乳の脂肪は、ほとんどが飽和脂肪酸(コレステロールを増やす)であり、これが動脈硬化、心臓病、脳卒中等の原因になりやすくなります。他にも牛乳は、白内障、糖尿病、鉄欠乏性貧血、視力低下、虫歯(歯並び)、自閉症などと深い関係があることが発表されています。国際自然医学会会長、森下敬一博士は、「牛乳は腸(血)を汚しガンをつくる」といっています。


食育講演をやらせていただく時、毎回一番驚かれるのが牛乳の話題です。 牛乳は体にいいと思っている人はまだまだたくさんいますね。 私は、娘に小学校・中学校とも学校給食の牛乳を飲ませていなく、娘も友達に牛乳の不必要さを話しているようです。