著:小野不由美
感想の前に十二国記の舞台が緻密な件
十二国記の舞台は、私たちの住む世界と地図上にはない異世界の『十二国』。
『十二国』では、各国に天意を受けた霊獣麒麟が王気を頼りに王を見つけ、「誓約」を交わし、選ばれし王が国を治め、麒麟がそれを輔佐し国を回していきます。
その王が〈道〉を誤れば、その命は失われる上に国は乱れ、次の王が立つまで荒れ続けてしまうのですが、この作品の設定はそんな大きな設定だけではなく、
各国の気候、慣習、政治体制などの異なりや、そこで生きる市井の民の生活する術、仕組み、生き様など、本当に事細かな設定があって実在してるかのように感じるリアリティが、ものすごいんです。
それが何十年とブレずに存在する土台の上で、政変に翻弄される王はもとより、善意の塊である麒麟の思い、理想に燃える官史、懸命に生きる民などが、それはもう丹念に綴られているので、繰り広げられるいろいろは、本当に壮大で、胸熱です。
新作「白銀の墟 玄の月」 は、そんな十二国のなかでも過酷な寒さを強いられる戴国(たいこく)が舞台。
その厳しい国の王と麒麟とそれを取り巻く物語になっています。
<十二国記PV1>
あらすじ と POINT
長く前王の非道に苦しめられた戴国に、やっと立った王・驍宗(ぎょうそう)は、その半年後、争乱に巻き込まれたまま、「還らぬ王」となってしまいます。
自らが玉座に据えた王の無事を信じる泰麒(たいき)と、王の不在で荒廃した国を憂える李斎(りさい)は、国のため、王のため奔走することに。
果たして、驍宗は────。
今、戴国を舞台に遠大な旅が始まる。
<十二国記PV2>
<POINT!>
今作の舞台、戴国の麒麟「泰麒」の物語は、
- 「風の海 迷宮の岸」:幼い泰麒のこと
- 「魔性の子」:反乱後の泰麒のこと
- 「黄昏の岸 暁の天」:泰麒を探す李斎のこと
上記3作につながっているので、読むとさらに楽しめると思います。
戴国が舞台のお話は ↓ この短編集にも描かれています。
感想
十二国記シリーズは、私の青春期に発売されて以来、夢中になって読んでいた作品のひとつでした。現在の完全版も全作読了しましたが、何度読んでも面白い。
そんな作品の続編、しかも全作を通じて語られる麒麟の中では終始、不憫さの目立つ泰麒の国、戴国のその先を描いた物語と聞いて、楽しみすぎて久しぶりに発売予告の日から発売日まで指折り数えて待っていました。
率直に言って、2ヶ月にわたり発売された全4巻、
素晴らしかったです。
相変わらず国の名前も人の名前も、使われる漢字は難しく慣れるまでには時間を要しましたが、それが苦になることはなく、「泰麒の覚悟と決意」「驍宗の行方」「李斎の頑張り」「簒奪者の想い」「荒れた国で王を待ちながらも翻弄される民」…
色々なものが錯綜して、繋がって、形を作っていく様に夢中になりました。
終わってしまうのを寂しく感じて、ゆっくり読もうと思うのに先が気になって一気読みしてしまう始末。若干の寂しさを残した読後(個人的に終わって欲しくないと思う感情から)でしたが、妙な達成感があったりして
やっぱり十二国記シリーズにハズレはないなと感じた全4巻でした。
2020年には、短編集が出るようなので余韻に浸りつつ、待ちたいと思います。