ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

アメフト、ボクシングにつながる

2018-08-17 07:51:27 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「普通のこと」8月10日
 谷川貴史記者が、『中学の部活動』という表題でコラムを書かれていました。その中で谷川氏はご自身の次女が部活を楽しむ様子を描く一方で、『猛暑が続く夏休みも練習日が多く、1日5時間にも及ぶ』実態に疑問を感じ、『人間関係を育み、競技に親しむだけなら週3日で十分』という名古屋大内田良准教授の言葉を引用なさっています。
 私はこのブログで再三部活動について触れてきましたが、そこで繰り返し述べてきたことと同じ意見です。『教育という美名のもとで過剰な活動はないか』という指摘にも同感です。ただ、谷川氏が見過ごしている(?)点があるのです。
 谷川氏は、次女の部活について次のように書かれています。『上級生になってボールを打つ時間が増えたのは親としてもうれしい。逆に1年生の時は部活時間の多くを球拾いに費やし、立ちっぱなしで腕より足を痛めた』と。テニス部に入った生徒は、テニスがしたくて入部を決めたはずです。もちろん、いきなり試合はできないでしょうが、素振りをして正しいフォームを身につけたり、敏捷性や持久力を高めるためにトレーニングをしたり、サーブやボレーなど個々の技術を磨いたりといった練習をすることをイメージして、入部してくるのではないでしょうか。内田氏が言う「競技に親しむ」というのはそうした行為を指すのであり、ひたすら上級生が打ったボールを拾って走り回ることではないなずです。
 球拾いについては、上級者のプレーを見て学ぶとか、体力を鍛えるとか、同学年の連帯感を育てるとかいった意味づけがなされることもありますが、詭弁に過ぎません。私自身、中高と卓球部に所属し、球拾いをした経験もさせた経験もありますが、ようするに慣習に過ぎません。恥ずかしい話ですが、本音を言えば、上級生としての特権意識のようなものもありましたし、わざと体育館の隅にボールを飛ばして下級生を走り回らせるようなことをして「遊んだ」こともありました。下級生が絶対に文句を言わないことを見越して。
 谷川氏の次女が通う中学校も、そのテニス部も、おそらくごく普通の学校であり、部活なのでしょう。そうした普通の環境の中で、先輩後輩の上下関係が固定化され、先輩には逆らえない文化を学び、顧問の教員に対して「おかしい」と言ってはいけないという価値観を叩き込まれる部活文化の行き着く先が、監督の理不尽な指示の盲従せざるを得なかった日大アメフト部の問題であり、監督の暴言に反論することができず精神を病んでしまうチアリーディング部での事件であり、スポーツ精神に反する愚行に注意することもできずにボスに絶対服従の日本アマチュアボクシング連盟の醜態なのではないでしょうか。
 谷川氏は、娘さんがやりがいを感じ生き生きとすごす姿を喜んでいらっしゃいますが、「多くの時間を球拾い」という在り方に疑問を感じ、問題提起してほしかったと思ってしまいます。球拾いに耐えられず、部活を辞めていく生徒、彼らは「根性なし」とされ、自分は一つのことをやり遂げることができなかった「ダメ人間」という劣等感を抱え、テニスという競技に親しむこともできず、むしろテニス嫌い、運動嫌いになってしまうかもしれないとすれば、そんな部活に意味はあるのか、という問題提起を。球拾いに耐え抜いた者は、上級生となって、上下関係を絶対のものとする感覚を身につけ、上には弱くしたには強いという歪んだ価値観をもってしまう可能性が高いという問題提起を、です。
 全国紙の記者なのですから。

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