二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

楽器つくりの思いとして。二胡の修理。

2020-03-30 13:55:24 | 二胡の救急箱に書かなかったこと
例えば、私だったとしたら。

もし皮を張ったその張力で、胴の後ろに亀裂が入ったとしてら。

一度、皮をはがして、再度胴の木を解体して、きれいに胴を組み立て直し、

再度、皮を張るでしょう。

しかし、その工程というのは、中国の工場ではありえないでしょうね。

何しろ一人で全ての工程をやるわけではないからです。

また、一度、膠で組み上げたものをきれいに削り直しというのも、むずかしいことです。

こんどは、機械工程に載せきれないからです。

ですからでしょう。胴の後ろに糸を巻いて、納品してしまうということになるのではないかと、おもいます。

それこそ下手に部分的に直すよりはましかもしれませんが、

これは生産管理の問題でもあり、物を作り出す、

特に楽器というものへの思い入れの問題だと思います。

しかし、二胡は単に組み上げられた木の塊ではありません。

それは、音になり音楽になるのです。

ですから、たまたま、生産工程の上で、多少の難があったとしても音さえよければと、考える人もいるのかもしれません。

しかし、一度亀裂が入ればそれはさらに進むのは間違いないことではあるのです。

それが分かっていて、と、おもってしまうのは、日本の職人だからでしょうか。

日本人の二胡愛好家にとって、中国の二胡に対するあこがれというのもあるでしょう。

また、中国人の演奏家に対する尊敬と憧れというのも当然あると思います。

分からないからこそ、魅力があり、分からないからこそ、惹きつけられるというのもあるでしょう。

子供のころから洋楽器と洋楽で育った私たちには、その音色は何とも言えず魅力的なものだと思うのです。

そこには、単に、楽器の一つということではなく、

不思議なものへのあこがれというのもあるのかもしれません。

しかし、単に一つの楽器としてみた時に、

その生産工程には、いろいろ問題もあるあるというのは、事実です。

ですから、皆さんの其の憧れに、便乗した、とんでもない高額の楽器販売や。

間違っていたとしても、いや本人が知らなかったとしても、それを声高に主張してしまえば、良いと考える

楽器販売者もいるのは、これは致し方ないのかもしれませんし、

その声高な主張に乗せられてしまうのも致し方ないとは思います。

何しろわからない不思議な魅力的な楽器という気持ちが、日本人の二胡愛好家の中にあるのですから。

もちろん私も、その魅力的な音色に惹きつけられて、二胡を始めた部分もあります。

自分の中に、何か少し、人と違ったことをやりたいという気持ちは誰にでもあるでしょう。

そのようにして二胡に引き付けられた方もいると思いますし。

単に、初めて聞いたその不思議な音色に惹きつけら得た方もいると、おもいます。

あるいは古く長い中国の歴史に思いをはせて、という方もいるでしょう。

しかし、二胡は木と蛇皮で作られた、一楽器なのです。

ましてや、機械工程で制作され、組みあげられた、楽器です。

ある意味すべての木で作られた、楽器というのは、それ自体が不思議なものです。

300年以上前のオールドのヴァイオリンに、

これだけの科学知識とデータをそろえてもいまだに、敵う楽器はないと、言われるような世界です・

木の持つ不思議、その不思議を一つの形にすることによって、音になり音楽になる、

ではせめてその形作りだけでも、誠実にやろうかなと思うのは、音への、音楽への、ものつくりの思いの一つではないかと考えます。

確かに私は、皆さんのあこがれる本場で修業した訳でもなく、

とんでもなく演奏が上手なわけでもありません。

しかし、長年にわたり、携わってきた木工の知識と、k木に関する知識と技術の上に則った楽器制作の考えというのはあります。

そして、作ってきたとはいえ、これは皆さんと同じように、、多少はその音色に秘密を、垣間見たとはいえ、

まだまだ、その魅力の全貌を理解していないのは、同じ木で作られた楽器を作る上で 

全世界にいる何万人というヴァイオリン制作者などと同じ,です。

だからこそ、せめてその制作は誠実でありたいと思っていますし。

また、確かに本場物の魅力というのは、その生産工程の完全さはなくとも、、日本に渡って来た二胡たちを、

いかに健全に鳴らしていくかが、私のできることであり、

いかに、直して直して、長い間皆さんに、その音色を楽しんでもらうようにしていくのが、

仕事だと考えています。

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