イイ顔してる、このオヤジ、Frankie Lee Sims。縁日や祭りの屋台で焼きそば売ってそうな顔が良い。気性は荒くて、チョイと喧嘩っ早いのが玉に瑕だが、細けえことは気にしなさんなと太っ腹で気風の良さが滲み出る義理人情に厚い頑固親父だ。Texas Blues界の無骨なおやっさん、Louisiana州はNew Orleans生まれでTexas育ちのFrankie Lee SimsのざらついたBluesは沁みる。こうみえても由緒正しいTexas Bluesの血筋である。Lightnin' Hopkinsのイトコで、Texas Alxanderの甥とも言われている。10代で音楽に関心を持ち、地元のBlues Musician Little Hat Jonesにギターを学ぶとSimsは家を出てBluesの道を歩き出すのであった。30年代後半にはTexasのPalestineで教師を務めながら、週末になると音楽活動をしていたらしい。第二次世界大戦後には、TexasのDallasに移り住み、音楽活動を再開する。T-Bone WalkerやSmokey Hoggらと演奏し、三十路を越えた48年にBlue Bonnet RecordsからSiingleをリリースする。そして53年にSpecialtyに録音した“Lucy Mae Blues”のヒットでようやく成功を手にした。Simsは50年代半ばにSpecialityに録音を残したが、当時リリースされることはなかった。57年にはAce Recordsに移籍、自分のバンドを持ち録音を残している。Hopkinsの録音にも参加したりするが次第にシーンから姿を消して70年に残念ながらこの世を去ってしまうのだった。本作は、そんなSimsのSpecialty時代のRawでイナタいBluesが味わえる作品集。決して上手いとは言えない、というか下手くそで拙いといった方が正しいSimsのギターではあるが、その独特のモタリ感のあるゴツゴツとしたRiffの味わいは格別だ。この縒れた、揺らぎを感じるざらついたギターとぶっきらぼうで吐き捨てるように歌うSimsのVocalの野卑でWildな味わいは格別である。このDown-Home Texas Bluesのイナタさはクセになるのだ。
『Lucy Mae Blues』は70年にSpecialtyからリリースされたFrankie Lee Simsの50年代の作品集。
“Lucy Mae Blues”は朴訥としたSimsの歌いっぷりと拙くゴツゴツとしたイナタいギターがイイ味出している。
“Married Woman”もRiffがイイ感じで思わず踊り出したくなるノリのよいBlues。バックの演奏も太鼓と言いたくなるようなPrimitiveな感じが良い。
“Jelly Roll Baker”はアルバムで一番のお気に入り。イントロの鄙びたHarpとギターのRiffから惹きこまれる。酔っぱらったようなモタリ感が心地良いギターのRiffも最高。拙いギター・ソロも一度ハマると抜け出せない。
“I'm So Glad”もイントロのもたり気味のギターRiffが最高。
“Boogie Cross The Country”はHarpが渋いRockin’なBlues。
Simsの抑えたVocalが機嫌なBoogie“Frankie's Blues”も反復されるゴツゴツしたギターのRiffが味わい深い。
“Don't Take It Out On Me”も決して上手くないギターだが、引き摺るようなRiffが中々カッコ良く中毒性が高いBlues。ギター・ソロも正直ショボイのだが、それが味である。
淡々とした歌いっぷりとギターのRiffがCoolな“I Done Talked And I Done Talked”。ヤクザなギター・ソロも最高。
“Cryin' Won't Help You”はSimsがTraditionalなBluesの歌い回しで中々聴かせてくれる。
“Raggedy And Dirty”はSimsの個性が発揮されたタイトル通りのゴツゴツとした肌触りの薄汚れたRawなBlues。これまた最高。
“Lucy Mae Blues - Part 2”も繰り返されるRiffと田舎丸出しの訛ったSimsのVocalがご機嫌なLow Down Blues。
アルバム最後をシメるのは軽快な“Long Gone”。Work SongがルーツのUp Tempのこの陽性のBluesも実にイイ味を出している。
(Hit-C Fiore)