Bill Laswellといえば、その節操のないともいえる様々なジャンルに渡る膨大な仕事については、人それぞれ、色んな考えや思いがあるだろう。個人的にも、Laswellが関わった作品には、そりゃないよ的な作品も結構あったりするわけであるが、少なくともMichigan州でR&BやFunk BandをやっていたLaswellが、70年代後半にNew York Cityにやって来て活動を開始した初期の仕事は非常に面白いものがあり、特にMaterialは大好きな作品もあるのだ。全ての始まりはGiorgio GomelskyがGongやHenry CowやMagmaといった欧州のバンドを米国で売り出すためにNew Yorkにやって来てManhattanにZu Clubを設立しBill Laswellと出会ったことであった。Gomelskyは当時20代前半のLaswellにバンドを組むように奨め、鍵盤奏者Michael Beinhorn、Engineer Martin Bisi、Drummer Fred Maherとバンドが結成される。彼らはZu Clubの地下で練習し、 "Zu Band"として知られるようになる。そしてGomelskyは、Beatnikの聖地New York Cityにやって来たSoft Machine~GongのDaevid Allenと彼らを邂逅させるのであった。New York Gongの誕生であり、ギタリストのCliff Cultreri、ドラムスのBill Baconが加わり、80年にアルバム『About Time』がリリースされる。 Allenとバンドは友好的に袂を分かつがアルバム収録曲の“Materialism”からMatrialと名を改め、Experimental Punk-Jazz-Funk-Noise-Eelectro Bandとしての彼らの活動が始まった。GomelskyのZÙ RecordsからEP『Temporary Music 1』が79年にリリースされている。Fred Frith、Olu Dara、Sonny Sharrock、Billy Bang、Henry Threadgillらを巻き込み1stアルバム『Memory Serves』を81年にリリース、その後、数々のメンバー・チェンジを経ながらもMaterial名義でリリースされた作品は非常に刺激的であった。
『Baselines』はBill Laswellが83年にリリースした1stソロ・アルバム。この年、Mateialが関わったHerbie Hancockの『Future Shock』 がリリースされているのが興味深い。本作ではLaswell、Beinhorn、BisiのMaterial陣とRonald Shannon Jackson、Phillip Wilson、Martin BisiのドラムスにRalph CarneyのSax、George LewisのTrombone、Fred Frithのギターを軸に制作されている。
アルバム1発目は“Activate”。JacksonのEnergy溢れまくるドラムスにのってLaswellのSlapもまじえたFunkyなベースが蠢く。George LewisとRalph CarneyのHorn隊も良し。
“Work Song”もLaswellのFunkyなベースがご機嫌なナンバー。Phillip Wilsonがドラムスを担当している。Daniel PonceのCongaも良し。
“Hindsight”はDavid MossのSteel DrumsとLaswellのFretless BassがチョイJaco Pastoriusを思わせるところもあるAbstractなFunkナンバー。
Fred FrithとLaswell、Beinhorn、Jacksonの共作“Uprising”は1分チョイの曲だが、ExperimentalでJacksonのドラミングが素晴らしい。
Frithがギターを弾く“Barricade”もJacksonのドラミングが激カッコイイAvant-Gard Funk。Laswellのベースもカッコイイ。
“Upright Man”はAbstractでCoolなFunk。最高っす。
“Moving Target”はLaswellのベースが多重録音されてやりたい放題。
Frithのギターが最高な“Lowlands”はBluesyなRiffやJacksonの暴れ回るドラムス、LewisのTromboneソロによるハチャメチャ感が良い。
アルバム最後をシメるのはLaswell、JacksonとFrith、David Mossの共作となる“Conservation”。LaswellのHarmonics奏法で始まるAvant-Gardeなナンバー。
(Hit-C Fiore)