Cœur De Verre/Popol Vuh | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 76年に公開されたWerner Herzog監督の映画Herz aus GlasHeart of Glass)』(フランス語のタイトルは『Cœur De Verre』)のOriginal Soundtrack盤ということでジャケットにも惹かれて手にした本盤。実は自分にとってPopol Vuhとの初めての出会いでもあった。サントラ盤とはいっても、実際は映画にはA面1曲目の“Engel Der Gegenwart”とB面1曲目の“Hüter Der Schwelle”の2曲しか使用されなかったらしい。そういう意味ではPopol Vuhのオリジナル・アルバムといってもいいかもしれない。『ガラスの心』というタイトルで日本盤もEggからリリースされている。Popol Vuhは中心人物のFlorian Frickeがバンド結成前の若き日に映画が大好きで、自らも幾つかのAmature映画を撮っていたりするほどだった。映画監督HerzogとFrickeは60年代に出会っており、2人はそこから親交を持ち、生涯にわたる友情を深めた。FrickeはHerzogの最初の長編映画『Lebenszeichen』にピアニスト役で出演したりしている。そんなこともあってPopol Vuhは本作以外にもHerzogの映画『Aguirre, Der Zorn Gottesアギーレ/神の怒り)』、『Nosferatu』、『Fitzcarraldo』、『Cobra Verde』などの音楽を担当し、Frickeは再び『Jeder Für Sich und Gott Ggegen Alle』に盲目のピアノ奏者としてCameo出演している。さて、本作が録音された時期のVuhといえば、FrickeとNiagaraAmon Düül IIGilaでDrumsやPercussionを担当していたMulti-Instrumentalistでもあり『Seligpreisung』からVuhに参加しギターとDrumsを演奏してきたDaniel Fichelscherの双頭体制になっていた時期である。ギタリストConny Veitが脱退し、『Hosianna Mantra』で存在感を発揮したSinger Djong Yunも、本作には参加していない。 Amon Düül IIに参加しVuhの75年作『Das Hohelied Salomos』や『Yoga』でSitarを弾いていたGromer KhanFlute奏者Mathias von Tippelskirchが加わっている。Frickeのピアノは全く目立たずギター全体を支配しSitarが効果を上げているのが興味深い。

 

 『Cœur De Verre』はPopol Vuhが音楽を担当したWerner Herzog監督の映画『Herz aus GlasHeart of Glass)』のサントラ盤で77年Eggからリリースされているフランス盤。ProducerはFrickeとAmon Düül II出身でVuhにも加わるRenate Knaup

アルバム1曲目は“Hüter Der Schwelle”。深遠で原始宗教を思わせる曲調でギターが咆哮し、重々しい雰囲気で始まる。

Blätter Aus Dem Buch Der Kühnheit”はMiddle Easternな旋律Exoticに響き反復される心地良さに酔いしれてしまう。彼らにしては珍しく繊細さよりも力強ささえ感じられるところも面白い。この曲もまた宗教的な感じすら漂わせているのも特徴だ。

Das Lied Von Den Hohen Bergen”もAl Gromer Khanが弾くSitarの響きやTablaが実に異国情緒を感じさせるRagaなナンバー。深遠でMeditational、極楽気分である。

厳かに始まる“Hüter Der Schwelle”は呪術的ともいえる響きの中でDaniel Fichelscherのギターが唸りを上げる闇の中を一筋の光を求めて懸命に、ただひたすら進んでいくような、そこにある種、宗教的な色彩を帯びたように感じられる部分もないではないが、あくまでもPureな、それでいて力強さが感じられる信念が貫かれている。

神秘的なギターのArpeggioで始まる“Der Ruf”。Fichelscherのギターがここでも闇の中を駆けぬけていく。ある種、自由奔放な魂の彷徨ともいえるかもしれない。

Singet, Denn Der Gesang Vertreibt Die Wölfe”もFichelscherのギターが多重録音され、Psychedelicな酩酊感が拡がっていく。この祝祭感さえ帯びたMeditationalな心地良さはたまらない。

アルバム最後を飾るのは“Gemeinschaft”。深遠宗教的ではあるが、どこまでも愚直なまでにPureな美しさが感じられる。

(Hit-C Fiore)